28FIELDPLUS 2021 01 no.25海老原志穂(えびはら しほ)1979年生/日本学術振興会特別研究員(AA研)、AA研共同研究員/言語学主要業績:『アムド・チベット語文法』(ひつじ書房、2019年)●ひとこと:肉や乳製品、麦粉を使った食事が多いチベット牧畜民が、夏に、草原や森の野草やキノコを採取して食利用していることに着目し、「チベット牧畜文化ポータル」にコラムを連載しています(https://nomadic.aa-ken.jp/)。大石高典(おおいし たかのり)1978年生/東京外国語大学/生態人類学主要業績:『民族境界の歴史生態学──カメルーンに生きる農耕民と狩猟採集民』(京都大学学術出版会、2016年)●ひとこと:これまでのフィールドワークでは、一見困難な状況の中であがくうちに活路が開ける経験をしてきました。新型ウイルスの影響の中でなかなかアフリカには行けないですが、なにか新たな研究方法をものに出来たらなと思っています。加納和雄(かのう かずお)1974年生/駒澤大学、AA研共同研究員/インド・チベット仏教学主要業績:Buddha-nature and Emptiness: rNgog Blo-ldan-shes-rab and a Transmission of the Ratnagotravibhāga from India to Tibet(Vienna Series for Tibetan and Buddhist Studies, No.91, 2016) ●ひとこと:南アジアとヒマラヤ地域の文化交流史に興味があります。仏教にまつわる文物のほか、食文化、最近では中世南インド料理の調理再現に携わっています。熊倉和歌子(くまくら わかこ)1980年生/AA研/中近世エジプト史主要業績:『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』(東京大学出版会、2019年)●ひとこと:未知なるものに遭遇したときに、人間はどのようにしてそれを理解し、対処しようとするのかという問題は興味深い。さらに、その後にどのような変化が待ち受けているのか。コロナ後の私たちの生活がどのように変化していくのかについても注目している。佐藤惠子(さとう けいこ)1976年生/AA研非常勤研究員/地域研究、国際保健主要業績:「スリランカ民主社会主義共和国の新型コロナウイルス感染症の現状と対策について」(科研・基盤研究(A)「現代南アジアにおけるムスリム社会の多極化の傾向」プロジェクト活動報告。https://fakir2020.webnode.jp/)●ひとこと:スリランカ・モンゴルでの国際協力の現場から帰国後、デング熱の研究を始めました。スリランカを軸にデング熱や新型コロナウイルス等の感染症と人の行動について考えていきたいと思います。篠田知暁(しのだ ともあき)1980年生/AA研特任研究員(JaCMES勤務)/歴史学主要業績:“The 1538 peace treaty and conict over the control of the frontier in Northern Morocco”(Mediterranean Historical Review, 34(2), 145–164, 2019)●ひとこと:15世紀以降のスペインとポルトガルによる北アフリカ進出は現地の政治や社会にどのような影響を与えたのかという問題について、アラビア語とポルトガル語を中心にしたヨーロッパの文献双方を用いて研究しています。島田将喜(しまだ まさき)1973年生/帝京科学大学/霊長類学、遊び論主要業績:「Lesson 3 動物と人間──霊長類は文化について何を教えてくれるのか?」(梅屋 潔・シンジルト共編『新版 文化人類学のレッスン──フィールドからの出発』学陽書房、51-77頁、2016年)●ひとこと:コロナ禍のために、国内外でのフィールドワークがまったくできなくなってしまって、半年以上経ちました。こんなに長い間「フィールドワーク断ち」をした自分は、20年ほどの研究生活で初めての経験です。最初は戸惑いましたが、今こそ、フィールドノートに埋もらせたまま、世に出してこなかった膨大なデータを整理して学術的な成果を挙げるチャンスと前向きに考えられるようになりました。錢 琨(せん こん QIAN, Kun)1983年生/九州大学/心理学主要業績:Qian, K. & Yahara, T. “Mentality and behavior in COVID-19 emergency status in Japan: Influence of personality, morality and ideology”(PLoS One, 15(7): e0235883, 2020)●ひとこと:フィールドに出かけて心理学研究をやろうという志で、タイやフィンランドなどで調査を行ってきましたが、今年度はどこにも行けなくなりました。こういった状況で、心理学からはどのように社会的価値を生み出すのかを考えています。コロナ禍による日常行動への影響や、感染されなくても、誰にでも生じうる心的ストレスなど、コロナ関連の心理学研究に舵を切りました。高橋康介(たかはし こうすけ)1978年生/中京大学/認知心理学主要業績:「新しくて古い心理学のかたち」(『心理学評論』第62巻第3号、304-310頁、2019年)●ひとこと:実験心理学者としてフィールドに滞在する中で、学術的なことだけでなく、本当に多くのことを学びました。この経験は、自分のアイデンティティを齢40にしてなお揺るがし変革させつつあります。千田俊太郎(ちだ しゅんたらう)1974年生/京都大学/記述言語学(ドム語、朝鮮語等)主要業績:「ドム語の「一」を表はす形式とその用法について──同一性、唯一性、非現實性、個々別々性、不定性、特定性」(『言語記述論集』第12号、175-203頁、2020年)●ひとこと:ドムの村では自給自足の暮らしが營まれる。分業がない。皆が農夫であり、大工であり、歌手であり、戰士であり、哲學者である。時に商賣を始めてはすっからかんになる。彼らの生きる力を今後も學んでゆきたい。*千田先生は普段、旧字・旧仮名で執筆されていますが、記事本文は先生のご了解をいただき新字に統一いたしました。田 暁潔(でん しょうち)1981年生/筑波大学/生態人類学、子ども学主要業績:“Ethnobiological knowledge acquisition during daily chores: the firewood collection of pastoral Maasai girls in southern Kenya”(Journal of Ethnobiology and Ethnomedicine, 13: 2, 2017)●ひとこと:子どもと共に日々を過ごし、行動できるフィールドワークは、大人の私にとって喜びと驚きが溢れる貴重な経験です。そのようなフィールドワークの魅力を大事にし、人・文化・自然の関係をさらに見つめていきたいです。長岡 慶(ながおか けい)1986年生/日本学術振興会特別研究員CPD(関西大学)、AA研共同研究員/医療人類学、地域研究(南アジア)主要業績:「神霊ルーをめぐるローカリティの再編──インド北東部モンパ社会の事例から」(岩尾一史・池田巧編『チベット・ヒマラヤ文明の歴史的展開』京都大学人文科学研究所、203-227頁、2018年)●ひとこと:チベット医学の薬草と人々が織りなす多様な世界について研究しています。現在はヒマーラヤの薬草のサプライチェーンに関心があり、商人や医療者、村人、NGOの国境を越えたつながりを探求したいと考えています。西田 愛(にしだ あい)1977年生/京都大学白眉センター(人文科学研究所)、AA研共同研究員/古代チベット史、チベット文化史主要業績:“Old Tibetan Scapulimancy”(Revue d’Etudes Tibétaines, 37, 262-277, 2016)●ひとこと:これまで占いに関連する古チベット語文献の研究を行ってきましたが、今年度より西チベットのチベット語碑文の研究にも取り組み始めました。平子達也(ひらこ たつや)1985年生/南山大学/言語学主要業績:「日本語アクセントの史的研究と比較方法」(長田俊樹編『日本語「起源」論の歴史と展望──日本語の起源はどのように論じられてきたか』三省堂、155-175頁、2020年)●ひとこと:新型コロナウィルスの影響で、フィールドワークが出来ない中、自分自身の今後の研究人生と、当該分野の今後のことについて考えることが多い、この頃です。平田昌弘(ひらた まさひろ)1967年生/帯広畜産大学、AA研共同研究員/牧畜論、乳文化論、牧野生態学主要業績:Milk Culture in Eurasia―Constructing a Hypothesis of Monogenesis-Bipolarization(Springer Nature, 2020)●ひとこと:アフロ・ユーラシア大陸の様々な地域での乳文化や牧畜について調査研究しています。最近では、乳文化がどのように日本食文化に浸透・定着したか、放牧酪農を中心とした日本での中山間地域の活性化の課題にも取り組んでいます。丸山洋司(まるやま ひろし)1979年生/東京芸術大学非常勤講師/音楽学主要業績:「ミャンマーにおける西洋楽器の受容──伝統音楽におけるピアノの使用に関する一考察」(『東洋音楽研究』第81号、121-136頁、2016年)●ひとこと:学生時代はインドで古典声楽やシタールの実技を学び、現在は南アジアや東南アジアの音楽に関する研究に取り組んでいます。即興的でスリリングな演奏様式、アジア諸地域の音楽の歴史的なつながり、奥深い音の世界に興味がつきません。湊 邦生(みなと くにお)1975年生/高知大学/地域研究(モンゴル)、社会学主要業績:『遊牧の経済学──モンゴル国遊牧地域に見るもうひとつの「農村部門」』(晃洋書房、2017年)●ひとこと:日本のモンゴル研究は、モンゴルとの国交がない時代から、さまざまな資料を駆使して行われてきました。COVID-19によりモンゴル国との往来が閉ざされる中、今こそかつての蓄積と経験を活かす時だと思っています。Profile
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