色とりどりのアバーヤ。アバーヤの専門店、アナールカリーバーザールにて撮影。様々なデザインのヒジャーブ。ヒジャーブとアバーヤの専門店、Hijabeaze(ヒジャービーズ)にて撮影。ラーホール経営科学大学の学生たち、2020年3月撮影。前列右の女性と後列右から2番目の女性がシャルワール・カミーズを着用しており、それ以外の女性はパンツ・シャツを着用している。後列左の男性が着用しているのが、男性用のシャルワール・カミーズである。パキスタンラーホールイスラマバードカラーチーパンジャーブ州30FIELDPLUS 2020 07 no.24Field+FASHION場に応じたオシャレを楽しむ賀川恵理香 かがわ えりか / 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科グローバル地域研究専攻博士一貫課程パキスタンにおける女子大生 パキスタンにおいて、公共の場においては男女ともに肌を露出させることはタブーであるとされる。特に女性の場合、髪の毛を隠し、手首から足首まで全身が覆われていることが宗教的な規範として求められる。しかし、彼女たちの装いの背景に存在するのは宗教的な規範だけではない。以下では、パキスタン・パンジャーブ州の州都、ラーホールの大学に通う女子大生たちの装いに着目したい。 高等教育への進学率が男性9.55%、女性8.32%(2018年時点、ユネスコ統計)であるパキスタンでは、女子大生は社会における少数派である。彼女たちは日常的に様々な場を移動するが、現地では若い女性が1人で町中を歩く光景は珍しい。さらに、彼女たちの多くは20歳前後の未婚女性であり、社会の性管理の対象となりやすい。よって、彼女たちは社会における服装規範に特に敏感な存在であるといえる。 女子大生の服装いろいろ 女子大生の服装は、シャルワール・カミーズ、アバーヤ、パンツ・シャツの3種に大きく分けられる。シャルワール・カミーズとは、パキスタンの民族衣装であり、男女ともに着用する。シャルワール・カミーズは、左右にスリットが入った長そでのひざ丈シャツ(カミーズ)と、くるぶしまでを覆う幅広のズボン(シャルワール)によって構成されており、女性用の場合はドゥパッターと呼ばれる、長さ2.4m、幅1.2mほどのスカーフもセットとして用いられる。女子大生のシャルワール・カミーズの着こなし方法は多岐にわたり、シャルワールの代わりに細身の長ズボンや10分丈のスパッツを履くこともある。 次に、アバーヤとは、全身を覆う緩やかな外衣で、ヒジャーブと呼ばれるヘッド・スカーフとともに着用される。アバーヤは暗色が主流であるものの、最近ではカラフルな商品もみられる。ヒジャーブにみられる多様なデザインは、ひとつのトレンドとして存在している。なお、シャルワール・カミーズを着用する女性に比べて、アバーヤムスリム女性の装いにおいては、ヴェール着用など宗教的な服装規範に焦点が当てられがちである。しかし、パキスタン都市部に暮らす女子大生の装いの背景には、宗教規範以外にも様々な要素が存在している。*写真はすべて筆者撮影。
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