FIELD PLUS No.24
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27FIELDPLUS 2020 07 no.24◆シベ書道家、格吐肯氏 格吐肯(ゲトゥケン)氏は中国の少数民族の一つ、シベ(錫伯)族の書道家である。1944年中国・新疆ウイグル自治区にあるシベ族の自治地域、チャプチャルシベ自治県に生まれた。氏の作品は、第三回から第六回の中国全国書法篆刻作品展をはじめ、国内外の重要な展覧会に出品され、さらに国定の収蔵品として、北京にある国家民族文化宮にも収蔵されている。およそシベ族で氏のことを知らない者はいないばかりでなく、作品は米国、ドイツ、日本や香港、台湾など国内外の多くのコレクターにより収蔵されていることからも、格吐肯氏が国際的に著名な書道家であることが窺い知れる。今回、縁あって日本で初めてとなる作品展をAA研で開催することができた。ここでは企画展の回顧として氏の作品と、氏の創作の背景を紹介する。◆シベ族とその言語・文字 格吐肯氏の書道について紹介する前に、まずシベ族について紹介しておこう。シベ族は中国の少数民族の一つで、主に遼寧省をはじめとする中国の東北地方と新疆ウイグル自治区に居住している。中国の清朝(1636-1912)を建てた満洲族と近い関係にあり、シベ語と満洲語は共に満洲・ツングース諸語に属する。本来東北地方に居住していたが、清朝の中期(1764年)に国境警備のために一部が現在の新疆ウイグル自治区に移住した。現在新疆ウイグル自治区に居住するのは彼らの子孫である。シベ族は中国におよそ19万人居住し 企画展「シベ書道の世界 ──格吐肯書法展」回顧「三語書法」が映し出すもの昨年(2019年)11月、AA研では企画展「シベ書道の世界──格吐肯書法展」が開催された。ここでは展示された格吐肯氏の作品とその創作の背景を「三語書法」というスタイルのものを中心に見ながら、氏の作品が映し出す少数民族の文化のあり方について考えたい。児倉徳和 こぐら のりかず / AA研格吐肯氏(左)と筆者(右)。書道展の開幕式での一コマ。(御園生みのり氏撮影)特別企画星泉AA研所長(左)と格吐肯氏(右)。写真中の作品「恵風和暢」は格吐肯氏によりAA研に寄贈された。*写真は、特記以外はすべて筆者撮影。

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