22FIELDPLUS 2020 07 no.24方言の紙芝居やしりとり、レシピ、劇、歌、カルタなど様々な作品が生まれました。このプロジェクトの良かった点は、参加したご家族が、イベントの後も自主的な活動を続け、地域の言語継承活動の「核」になっていることです。特に初年度に参加した下平川校区のご家族は「ひーぬむん」というユニットを組み、様々な舞台で発表したり、オリジナルソングまで作っています!取り組み2 絵本出版プロジェクト 子どもに読み聞かせることを通じて、大人も言葉を学べる絵本を出版しています。2019年に出版した方言オノマトペの絵本『シマノトペ』は、繰り返しのリズムで、島のユニークなオノマトペを楽しみながら、親族語彙が一通り覚えられる作りにしました。昨年は、琉球諸語絵本の出版を目指して、クラウドファンディングに挑戦しました。400万円以上の寄付が集まり、今夏、与那国島、多良間島、竹富島、沖永良部島の4島の絵本が出版予定です。 沖永良部島では、和泊・知名両町が島ことばの継承に向けて国立国語研究所との協力協定を結ぶなど、言語再活性化の動きが盛り上がってきています。この盛り上がりを、地域言語と文化の継承、そして地域の活性化に繋げていけるよう、これからも尽力していきたいと思っています。 くれました。幼稚園では、島ことば絵本を使って紙芝居や手遊びを考案してくれました。こうした活動の支えになるよう、私自身も文法記述を元にした島ことば教材・絵本の制作、方言教室、辞書データベースの公開などを続けています(「しまむに宝箱」https://www.erabumuni.com/)。「親の世代」にアタック こうした言語継承活動のキーになるのは、何と言っても「親の世代」です。沖永良部島では、普段方言を話すのは60代以上ですが、言語実験をすると大体40代くらいまでは話者と同じくらい方言を理解出来ます。理解出来るということは、基本的な語彙や文法を知っているということです。この人たちは、練習さえすれば、比較的簡単に話せるようになる可能性があります。私達は彼らを、期待を込めて「潜在話者」と呼んでいます。そして、この潜在話者の世代は、子育てをしている世代にもあたります。潜在話者の世代が自身の中に眠っている言語を活性化すれば、下の世代まで言語が継承される可能性があるのです。 私が共同研究をしている「言語復興の港」というチーム(代表:山田真寛・国立国語研究所准教授)では、親の世代の方言を再活性化する取り組みをしています。親の世代はとても忙しく、日常生活の中で言葉のためだけの時間を確保することは困難です。しかし、子供のことに対しては非常に熱心に取り組みます。この点に着目し、子供を通じて親世代に働きかける活動をしています。取り組み1 しまむに(島ことば)プロジェクト 夏休みの宿題として親子三代で取り組める課題を出し、島外(国立国語研究所など)で発表してもらいます。そして、その経験を島の人たちの前でも報告してもらいます。これまで、「ひーぬむん」の皆さんの舞台。(南海日日新聞、2019年2月28日掲載)琉球諸語絵本の絵本出版プロジェクト。(https://readyfor.jp/projects/minato)方言絵本『シマノトペ』を使って@和泊幼稚園。(提供:田中美保子)しまむに教室の様子。(提供:中山俊秀)しまむにプロジェクトの発表会@国立国語研究所。(撮影:山本 史)
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