20FIELDPLUS 2020 07 no.24島由美先生にお願いしたところ、先生が三さんしん線(奄美・沖縄の楽器)の師匠を通じて、沖永良部島を紹介して下さったのでした。 こうしたご縁で沖永良部島に辿り着きましたが、初めは何も知りませんでした。図書館でトイレ掃除やパソコン教師をしながら、隣の公民館で出会うおじいちゃん・おばあちゃんの集落を訪ね、見様見真似の言語学調査が始まりました。危機言語と文法記述 当時私が気になっていたのは、方言のオノマトペ(擬音語・擬態語)でした。「わじわじ(怒る)」「びらびら(柔らかい)」、沖永良部には面白いオノマトペが沢山あるのですが、そのオノマトペにも集落によって微妙な方言差があることを知り、調査をしては方言地図に書き加えて行きました。しかし、当時の私はろくに言語学を勉強しておらず、方言の知識も語彙レベル。自分でも「もう少し勉強したいな…」と思っていた頃、東京で「琉球諸語研究会」の先輩と出会い、記述言語学という学問を教えて頂きました。記述言語学では、1つの言語の音の仕組みから語の形成、文の構造まで、言語全体を包括的にアホ・バカ分布地図からフィールドワークへ 私がフィールドワークをしているのは、鹿児島県奄美群島の沖永良部島です。「花の島」と形容されるこの島は、1年中、陽の光が注ぎ、道々に野花が咲く、とても美しい島です。 私が沖永良部島に出会ったきっかけは、大学の授業で『探偵!ナイトスクープ』というテレビ番組を見たことでした。番組の中で「バカとアホの(方言的な)境界線はどこか」という大調査をしており、実は日本にはよろずの「バカ」の方言があることが紹介されていました。それを地図に表した「アホ・バカ分布図」の隅っこに「プリムン」という怪しい語形を見つけました。これは沖縄県の宮古島の言葉なのですが、私はこの響きに衝撃を受けました。「こんな日本語じゃないみたいな言葉が、日本の中にあるのか?!」 奄美・沖縄は1つの言語圏(琉球諸語)を成し ており、琉球諸語と日本語は奈良時代以前に分岐したと言われています。「琉球のどこかの島に行ってみたい」と指導教員の中沖永良部島徳之島喜界島奄美大島硫黄鳥島与論島沖縄島与那国島多良間島宮古島竹富島伊平屋島伊是名島伊江島「うがみやぶら~(こんにちは)」「みへでぃろど~(ありがとう)」、奄美群島沖永良部島の言葉は、今なにもしなければ444444444無くなってしまう危機言語の1つと言われています。言語の姿を記録し、継承に取り組む活動を紹介します。私のフィールドワーク日本の「危機言語」、島ことばの記録と再活性化の取り組み横山晶子 よこやま あきこ / 日本学術振興会特別研究員(AA研)、AA研共同研究員
元のページ ../index.html#22