FIELD PLUS No.24
16/36

14FIELDPLUS 2020 07 no.24中国内モンゴル自治区モンゴル国ウランバートル新疆ウイグル自治区においては、鹿の姿を象徴した舞で競技会場に入場します。 モンゴル国と内モンゴル自治区のブフ競技のもう一つの大きな違いは、勝敗の決め方です。モンゴル国のブフの場合には、相手の足を取ることが認められ、相手の肘、膝、頭、背中、尻のいずれかを先に地面につければ勝ちとなります。しかし、日本の相撲とは異なり、手の平が地面についてし モンゴル相撲のことをモンゴル語で「ブフ」と言い、相撲をとることを「ブフ・バリルダホ」と言います。「バリルダホ」は「掴み合う」という意味です。またブフは、モンゴル相撲をとる人のことも指します。 卓越した強いブフになるには、まずなによりも体が大きく、力持ちであることが条件です。もちろん動作が機敏で、相手の動きに対して瞬時に対応できる運動神経の良さも求められます。地域によって異なるブフ モンゴル人は、主にモンゴル国と中国内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区などに分かれて暮らしていますが、各地域の伝統文化や風俗習慣はそれぞれ異なります。ブフに関して言えば、衣装、入場する際に見せるパフォーマンス、勝敗の決め方という三点で異なっています。ここでは、モンゴル国と内モンゴル自治区のブフを比べてみます。 まず、衣装を見てみましょう。モンゴル国のブフは、絹製のベスト(モンゴル語で「ゾドグ」)を着用し、下半身にはショートパンツ(モンゴル語で「ショーダグ」)にブーツを履き、入場する時には民族帽をかぶります。一方、内モンゴルのブフは、牛革製のタイトな半袖ベスト(内モンゴル語では「ジョドグ」)を着用しますが、そのベストには銀や鋼の留め具が埋め込まれていることが多いです。腰には赤、青、黄色などの絹製のカラフルな房を付けます。下半身にはだぶだぶの白いズボン(モンゴル語で「バンジル」)と模様を施した膝あて(モンゴル語で「トーホー」)に、ブーツを履きます。内モンゴルのこのような派手な衣装には、モンゴル国のブフよりもシャーマニズムの影響が色濃く反映されていると考えられています。 次にパフォーマンスを見てみましょう。モンゴル国のブフは入場する時、タカの姿を象徴した舞を披露します。一方、内モンゴルのブフはライオンの跳躍する姿、あるいは北のフルンボイル地方ライオンの舞のパフォーマンスを披露する内モンゴルのブフ。内モンゴルのブフ競技。モンゴル国のブフ競技。観戦者が輪を作って土俵の代わりになる。スポーツモンゴルのブフは、力と技で競い合うという点で、日本の相撲にも似ているところがあります。しかし、土俵にとらわれず、大自然の中で自由に身体をぶつけ合う点が異なります。モンゴルの男たちにとって子供の頃から楽しめる、たいへん人気のある格闘技です。呉人徳司 くれびと とくす / AA研モンゴル相撲(ブフ)*写真はすべて筆者撮影。

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る