FIELD PLUS No.23
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32FIELDPLUS 2020 01 no.23赤木崇敏(あかぎ たかとし)1976年生/東京女子大学/歴史学、前近代中央アジア史主要業績:「曹氏帰義軍節度使系譜攷──2つの家系から見た10~11世紀の敦煌史」(土肥義和・氣賀澤保規編『敦煌・吐魯番文書の世界とその時代』汲古書院、237-261頁+2pls.、2017年)●ひとこと:10年前から、毎年12月に敦煌オアシスで世界遺産・敦煌莫高窟などの調査をしています。1000年の時を経て色褪せてしまった文字を読んだり壁画をスケッチしたり……極寒の中の調査はつらいものですが毎年発見があります。新井和広(あらい かずひろ)1968年生/慶應義塾大学、AA研共同研究員/ハドラマウトの歴史主要業績:「海を渡る聖者の『記憶』――ハドラマウトとインドネシアにおけるハウル(聖者記念祭)を通じて」(堀内正樹・西尾哲夫編『〈断〉と〈続〉の中東――非境界的世界を游ぐ』悠書館、183-212頁、2015年)●ひとこと:個人的な事情から海外に出るのが難しくなっているので、日本にいながら現地情報を得る方法を模索しています。地域研究者としては正念場を迎えています。加藤 博(かとう ひろし)1948年生/一橋大学名誉教授/アラブ社会経済史主要業績:「歴史研究における情報の空間化――エジプト社会経済史研究を事例に」(『歴史と地理 世界史の研究』第704号、1-16頁、2017年)●ひとこと:人びとの社会生活は多様な要素とそれらの複雑な結びつきからなりたっている。こうした個々の社会がもつ特徴を殺すことなく、どうすれば人間社会は多様で複線的に発展し得るかを、中東アラブ世界を舞台に考えていきたい。熊倉和歌子(くまくら わかこ)1980年生/AA研/中近世エジプト史主要業績:『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』(東京大学出版会、2019年) ●ひとこと:オンライン地図は便利だけど、ネット環境のない旅先では使えないと困っている人へ。最近では、事前に携帯電話などにダウンロードしておけば、ネット環境がなくとも見られるオフライン地図アプリがあり、フィールドワークに最適ですよ。児玉香菜子(こだま かなこ)1975年生/千葉大学/文化人類学主要業績:「定住モンゴル牧畜民の現在――過放牧論の解体」(藤田昇・加藤聡史・草野栄一・幸田良介編『モンゴル 草原生態系ネットワークの崩壊と再生』京都大学学術出版会、353-393頁、2013年)●ひとこと:出産、育児でしばらく遠ざかっていたフィールドにまた通いだしました。子どもたちを連れていっても大変、おいていっても大変。みなさん、どうしているのでしょうか。清水貴夫(しみず たかお)1974年生/京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センター設立準備室研究コーディネーター、総合地球環境学研究所研究員/文化人類学、アフリカ地域研究主要業績:『ブルキナファソを喰う!――アフリカ人類学者の西アフリカ「食」のガイド・ブック』(あいり出版、2019年)●ひとこと:ここしばらく治安が悪く、ゆっくりとフィールドに入れません。ブルキナファソの「母」の味が恋しい今日この頃です。高島 淳(たかしま じゅん)1955年生/AA研/宗教学関連業績:『カンナダ語・日本語辞典』(高島淳編、内田紀彦/バンドー・ビマジ・ラージャプローヒト著、三省堂、2016年)●ひとこと:これまでのAA研の電子出版では書籍と類似したPDF形式しか作ってこなかったが、スマホ用の辞書などではEPUB形式の方が便利なので、今後はAA研でもEPUB形式による出版も検討している。地田徹朗(ちだ てつろう)1977年生/名古屋外国語大学/中央アジア地域研究主要業績:「アラル海災害の顕在化と小アラル海漁業への初期対応策」(大塚健司編『アジアの生態危機と持続可能性――フィールドからのサステイナビリティ論』日本貿易振興機構アジア経済研究所、191-236頁、2015年)●ひとこと:好奇心のままに小アラル海地域でのフィールドワークを重ねてきました。最近は、スターリン時代のカザフの集団化についても研究中。現在にいたるアラル海地域の環境史を包括的に研究してゆきたいと考えています。辻上奈美江(つじがみ なみえ)1975年生/上智大学/中東地域の比較ジェンダー論主要業績:『イスラーム世界のジェンダー秩序――「アラブの春」以降の女性たちの闘い』(明石書店、2014年)●ひとこと:湾岸アラブ諸国の女性の消費、企業とネットワークに関心があります。女性たちは美容分野における消費意欲が高く、美への探究心の強さに驚かされます。長屋尚典(ながや なおのり)1980年生/東京大学、AA研共同研究員/言語学主要業績:N. Nagaya and H. K. Hwang “Focus and prosody in Tagalog”(In Sonja Riesberg, Asako Shiohara & Atsuko Utsumi(eds.), Perspectives on information structure in Austronesian languages, Language Science Press, 375-388, 2018)●ひとこと:ふだんはタガログ語話者の自然な会話を録画・録音させてもらって、そこに見られる規則性やパターンを分析しています。最近はここで紹介したような「はやりことば」の文法の研究がしたいと思っています。平田晶子(ひらた あきこ)1983年生/AA研ジュニア・フェロー、東京外国語大学非常勤講師/文化人類学主要業績:「ケーンの吹奏をめぐる『男らしさ』の創成――ラオスのラム歌謡と性別役割分業の一考察」(『文化人類学』第82巻第3号、290-310頁、2017年)●ひとこと:タイとラオスを中心に東南アジアの芸能や宗教儀礼を研究しています。特に、タイ・カダイ語族ラオの伝統音楽モーラム、オーストロアジア語族カーソーのラム歌謡について考察しています。伝統的な技芸の所有の問題について知財の観点から考えたり、テクノロジー導入による芸能者たちの生活様式の変化に注目しながら探求中です。松岡 薫(まつおか かおる)1982年生/AA研ジュニア・フェロー/民俗学、民俗芸能研究主要業績:「俄の〈芸〉が生まれるとき――熊本県阿蘇郡高森町の風鎮祭を事例として」(『民俗芸能研究』第53号、22-42頁、2012年)●ひとこと:祭りに限らず、結婚式、忘年会、宴会などの人が集まる場での「余興文化」について、いずれは学問として研究したいという野望を持っています。にわか研究はその序章であり、これからもっと研究の幅を広げていきたいと思っています。三沢伸生(みさわ のぶお)1961年生/東洋大学/イスラーム世界史主要業績:『オスマン帝国と日本――トルコ共和国首相府オスマン文書館所蔵文書に基づく両国間関係』(長谷部圭彦、シナン・レヴェントと共編著、東洋大学アジア文化研究所、2018年)●ひとこと:学生時代と専門が大きく変わり、今では文書館での史資料の分析よりも日本や海外のあちこちで現地の研究者や協力者と一緒に、埋没してしまった史資料を探し出す作業に多くの時間を割くようになりました。吉田ゆか子(よしだ ゆかこ)1976年生/AA研/文化人類学主要業績:『バリ島仮面舞踊劇の人類学――人とモノの織りなす芸能』(風響社、2016年)●ひとこと:ここ数年はバリに加えてジャカルタでも調査しています。限りある調査時間を二か所に割り振るので、どちらにいても時間不足を感じるのが難ですが、新しい調査地で、人や場所と一から関係を築く楽しさも感じています。村武典(よしむらたけのり)1975年生/大東文化大学/中世アラブ・イスラーム史主要業績:「バフリー・マムルーク朝後期のナイル治水事業──ジスル・マンジャク建設の経緯を中心に」(『史滴』第32号、147-162頁、2010年)●ひとこと:1997年にはじめてエジプトを訪れたときには、その後毎年訪れるようになるとは想像もしませんでした。「ナイルの水を飲んだ者は再びナイルに戻る」という諺のとおりでした。最近は調査旅行におもむくと、どこでもまず水施設に目が向いてしまいます。Profile巻頭特集「地理情報から読み解く中東の歴史と地域」補遺記事をご覧になって興味を持たれた方に、おすすめのウェブサイトと図書を紹介します。◎Multi-layered Basemap System for Middle Eastern Citiesは、中東地域の古地図をGoogleマップに重ねたり、デュアルディスプレイで見ることができるAA研のサイトです。http://asp.netmap.jp/mebasemap/index.html◎David Rumsey Map Collection, Cartography Associatesは、古地図収集家のデビッド・ラムゼイ氏のコレクションをさまざまなビューアーで楽しめるサイトです。世界各地の古地図を検索する際にも役立ちます。https://www.davidrumsey.com/◎次の2冊は日本を対象にしたものですが、本を片手に実際にフィールドをまわってみることができるという点でもおすすめです。『土地に刻まれた歴史』古島敏雄著、岩波書店、1967年。『中世の村を歩く』石井進著、朝日新聞社、2000年。◎技術書としては、次の入門書が図版を使って初心者にもわかりやすい説明で、良書です。『フィールドワーカーのためのGPS・GIS入門:フィールドにGPSを持って行こう、GISで地図を作ろう』古澤拓郎・大西健夫・近藤康久編著、Fieldnet監修、古今書院、2011年。図書は現在いずれも絶版になっていますが、大学図書館等に所蔵があります。

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