19FIELDPLUS 2020 01 no.23うが、日々のケアはほとんどしないということのようだ。 そう言われてみると、このような美容文化の日本との違いにすでに出くわしていたことを思い出した。一度、調査に協力してくれた女性に、奮発して美顔器をプレゼントしたことがあったが、残念ながら、ほとんど使用してくれなかった。スキンケアは自分でするものではなく、サロンでしてもらうものと考えているなら、残念だが納得がいく。 化粧品店も彼女らのニーズを反映した品揃えとなっている。たとえば日本では、メイク落とし、洗顔ののち、化粧水、乳液、クリームをつけるという順でスキンケアができるような品揃えとなっているのに対して、サウジアラビアの店舗では化粧水や乳液にあたるものは見当たらない。日本ではスキンケア製品を多く取り揃える世界的な化粧品ブランドも、サウジアラビアではメイクアップ製品や香水を中心に陳列してある。店員たちも国によって陳列する製品が異なることは認識していて、スキンケア製品は売れにくいと教えてくれた(後日の調査で、アラブ圏以外でも化粧水や乳液は主流製品ではないことが判明したが、それは別の機会に稿を譲りたい)。若い女性の間で広まる クリニックでの脱毛 「美容サロン」といってもサービスはさまざまだが、一体どんなサービスが受けられるのだろうか。ホテルの美容サロンや、路面に店舗を構えるサロンなど、手当たり次第にメニューと料金表を入手したところ、フェイシャル・トリートメントやビタミンC導入など、日本でもありそうなメニューが並んでいる。これでどうやって調査をすればいいのか悩んでいる時に、ある20代前半女性が、言いにくそうに教えてくれたのが脱毛だった。聞けば、彼女の妹も母も同じ美容系医療クリニックに通い、10回以上全身脱毛の施術を受けたという。これは筆者も試してみなければと、すぐにこのクリニックを紹介してもらい、同じコースを受けることにした。筆者が受けたのは、レーザー脱毛。まずはロシア系レバノン人といわれる女性医師に「毛深さ」を診断してもらい、それが終わるとフィリピン人の女性施術師が丁寧にレーザーを当ててくれた。脱毛後の痛みを軽減できるという最新の機械を使った場合の1回の施術料金は2,000リヤル(2019年9月25日のレートで約57,000円)。日本の脱毛サロンでの施術は、電車などの広告によれば数百円から受けられるようなので、リヤドの相場は決して安くはない。だが、外国人労働者によるサービスが充実しているサウジアラビアだけあって、このフィリピン人施術師の脱毛も満足感は得られた。 イスラームでは、初潮を迎えた女性には、40日に1度は陰部の脱毛処理を推奨する教えもあるという。サウジアラビアのある大学病院で実施されたサウジ人女性を対象としたアンケート調査では、77パーセントの女性がカミソリなどを使って自ら陰部のムダ毛処理をしているという。同調査によると医療クリニックに通うのは15.5パーセントとまだ少数派のようであるが、教育を受けた若い女性の間では、クリニックでの脱毛を選択する傾向があることも明らかになっている。男性もサロン通い 「美容といえば女性」という考えは、日本でもすでに古くなっているが、サウジでもそのようだ。私が施術を受けたクリニックでも客の2割程度は男性だった。クリニックでは、歯列矯正や歯のホワイトニングなどの審美歯科診療も行っている。脱毛に加えて、美しい歯を手に入れるために、男性もクリニック通いをしているようだ。 脱毛や審美歯科診療が流行っていることを知って以降、サウジ人に会うと、脱毛処理をしているか、歯並びはキレイなのか、白い歯をしているかが気になるようになった。たしかに若いサウジ人男女の多くが、この3つを兼ね備えている。今、気になっているのは、まだ私が気づいていないサウジ人好みの美容は何なのか、だ。これからも美容体験をしながら探していきたい。 スーク(市場)の化粧品店は、1本500円程度のリップなどプチプラのメイクアップ製品であふれている(2016年1月、リヤド)。ドバイのスークで紅茶のティーバッグの横にひっそり置かれていた、歯のホワイトニング剤(2017年2月)。ドラッグストアで売られている陰毛処理用ムース。400円程度(2015年1月、リヤド)。ドラッグストアでは、洗顔料は多く売られているが、化粧水、乳液はほとんど見られない(2015年12月、リヤド)。
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