FIELD PLUS No.22
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32FIELDPLUS 2019 07 no.22安達真弓(あだち まゆみ)1981年生/人間文化研究機構/言語学、社会言語学主要業績:『ベトナム語における指示詞と指示詞に由来する文末詞・感動詞』(東京大学大学院人文社会系研究科提出博士論文、2016年)●ひとこと:本国で話されているベトナム語の記述言語学の研究と、日本で話されているベトナム語の社会言語学の研究を並行して行っています。その2つが、いつかどこかで上手くまとまるといいなと考えています。生駒美樹(いこま みき)1981年生/AA研ジュニア・フェロー、AA研共同研究員/文化人類学主要業績:「茶をめぐる生産者の選択と関係――ミャンマー北東部シャン州ナムサン郡を事例として」(『東南アジア研究』第52巻1号、82-115頁、2014年)●ひとこと:ミャンマーを調査地に、茶の生産、流通、消費をめぐる人びとの経済関係について、文化人類学的視座から研究しています。特に、負債がむすぶ人びとの関係について興味を持っています。石川博樹(いしかわ ひろき)1973年生/AA研/歴史学主要業績:『ソロモン朝エチオピア王国の興亡――オロモ進出後の王国史の再検討』(山川出版社、2009年)●ひとこと:今号の巻頭特集は、エチオピアのジンマ王国に由来するイスラーム祈祷集をAA研が入手したことを契機に開始した学際的共同研究の成果の一部です。今後もアフリカ史研究の可能性を探っていきたいと考えています。石原美奈子(いしはら みなこ)1967年生/南山大学/文化人類学主要業績:『せめぎあう宗教と国家――エチオピア 神々の相克と共生』(編著、風響社、2014年)●ひとこと:エチオピアには数多くのムスリムの聖者たちが生きてきましたが、その多くが歴史記述の対象とされてきませんでした。死後も崇敬され続けるムスリム聖者たちが生前どのような人生を歩み、どのような功績を残してきたのか、そうした聖者たちの足跡を人類学者として辿る旅路は、まだまだ続きます。井上 航(いのうえ こう)1973年生/国立民族学博物館外来研究員/民族音楽学、人類学主要業績:「精霊とゴングと拘束なき雑多な集まり ――北東カンボジアにおける供犠・憑依」(『東洋音楽研究』第79号、25-47頁、2014年)●ひとこと:身体的な気分と音の関係に関心があり、なかば素手で始めた研究ですが、壁ばかりでした。けっして懲りてはいませんが、最近は言葉が面白くクルン語のオノマトペやリズミカルな複合語の調査を始めました。太田信宏(おおた のぶひろ)1969年生/AA研/インド史主要業績:『前近代南アジア社会におけるまとまりとつながり』(編著、AA研、2017年)●ひとこと:南アジアでは、サンスクリット語、ヒンディー語、ウルドゥー語以外の言語でも沢山の文学作品が書かれてきています。カンナダ語の文学作品を使った歴史研究の方法と可能性を考えています。熊倉和歌子(くまくら わかこ)1980年生/AA研/歴史学主要業績:『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』(東京大学出版会、2019年)●ひとこと:文書館での作業に飽きると、フィールドに出て、その地形を見ながら、土地に刻まれた歴史について考えています。エジプトでも日本でも、いつも下を向いて歩いています。児倉徳和(こぐら のりかず)1978年生/AA研/記述言語学(シベ語)主要業績:『シベ語のモダリティの研究』(勉誠出版、2018年)●ひとこと:最近は現地のシベの人々と協力して、話されるシベ語を動画で記録し、動画コーパスを作ることを目指しています。シベの人々がシベ語を話しながらどのように生活しているかが分かるようなものにするため、工夫をしながらの作業です。小森真樹(こもり まさき)1982年生/武蔵大学/ミュージアム研究、アメリカ研究主要業績:「芸術化する医学博物館――フィラデルフィア医師協会ムター博物館における改革」(『展示学』第54号、62-71頁、2017年)●ひとこと:フィラデルフィアの医学博物館の歴史を調べています。今年2月には、過去に暮らしていた同市に帰国後初めての調査に訪れました。住んだのは3年間と僅かな期間でも、彼の地はすでに自分の「ホーム」になっていたのだと気がつきました。櫻間瑞希(さくらま みずき)1993年生/筑波大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程/社会言語学主要業績:「タタール・ディアスポラの言語使用状況――タシケントのタタール人の事例から」(『スラヴィアーナ』第8号、19-36頁、2016年)●ひとこと:世界中に散らばるディアスポラの民でもあるタタール人の現代のことばを追って、今後は中央アジア以外の国や地域にも足を伸ばしてみたいと思っています。老後も続けられそうなライフワークを見つけてしまいました。澤田英夫(さわだ ひでお)1963年生/AA研/言語学、文字学主要業績:“The phonology of Lhangsu, an undescribed Northern-Burmish language” (In Tooru Hayasi et al.(eds.), Diversity and Dynamics of Eurasian Languages: The 20th Commemorative Volume Dedicated to Prof. Dr. Masahiro Shōgaito (Contribution to the Studies of Eurasian Languages series Vol.20), The Consortium for the Studies of Eurasian Languages, 381-404, 2018)●ひとこと:最初にカチン州を訪れた頃は標準ロンウォー語だけを研究していたが、今ではその方言や近隣諸言語も対象とするようになった。「この地域のビルマ系言語」らしさと、言語間の差異の両方を見据えて記述を続けたい。西井凉子(にしい りょうこ)1959年生/AA研/人類学主要業績:『情動のエスノグラフィ――南タイの村で感じる*つながる*生きる』(京都大学学術出版会、2013年)●ひとこと:タイの村の友人のチェーオが作ってくれるしょうががきいたブアローイやココナッツミルクのまろやかなトゥアデーンが食べたくなりました。チェーオ、またよろしく!松波康男(まつなみ やすお)1979年生/東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター特任研究員/社会人類学、地域研究(東アフリカ)主要業績:「『南スーダンにおける紛争解決合意(ARCSS)』署名を巡るIGAD加盟国の関与」(『アフリカレポート』第57巻、1-12頁、2019年)●ひとこと:エチオピアの参詣儀礼について調査するなかで、人々と車座になり、彼らの苦悩を聞いたり、私自身の抱える困難を聞いてもらう経験が何度もありました。他者から祈られるという経験の意味や、そこで生み出される人々の繋がりについて、考えていきたいと思っています。吉田早悠里(よしだ さゆり)1982年生/南山大学/文化人類学主要業績:『誰が差別をつくるのか――エチオピアに生きるカファとマンジョの関係誌』(春風社、2014年)●ひとこと:現在を生きる聖者が暮らす集落が私のフィールドです。聖者との接見、対話を許され、聖者の聖性を自らの身をもって感じることができるという類まれな経験は、私の人生においてかけがえのないものになっています。* 本誌10-11頁は、科研費・挑戦的萌芽研究「自己/他者表象としての新たな民族誌の開拓:代言者/「巫女」としての実践から」(代表:吉田早悠里、課題番号16K13303)の成果の一部である。Profile巻頭特集「祈りでつながるイスラーム」補遺記事をご覧になって興味を持たれた方に、おすすめの図書を紹介します。『せめぎあう宗教と国家――エチオピア 神々の相克と共生』石原美奈子編著、風響社、2014年。『誰が差別をつくるのか――エチオピアに生きるカファとマンジョの関係誌』吉田早悠里、春風社、2014年。

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