FIELD PLUS No.22
26/36

24FIELDPLUS 2019 07 no.22また、日常的に緑茶や紅茶を飲む習慣もある。漬物茶を茶うけに緑茶を飲みながら、あるいは喫茶店で紅茶を飲みながらおしゃべりに興じる人々の姿が、ミャンマーではよくみられる。 これらの茶の多くは、中国雲南省と隣接するミャンマー東北部シャン州で生産されている。あまり知られていないが、ミャンマーは、中国とインドという二大茶産地にはさまれており、国際連合食糧農業機関の統計によれば世界でも第8位(2017年)の茶生産国である。ただし、茶産地の多くは少数民族が暮らす山間地域にあり、長らく外国人の入域制限があったため、これまで文化人類学的な長期調査はほとんど行われてこなかった。そのため、わたしは大学院に入ったらぜひ茶産地でフィールドワークをしてみたいと思っていた。幸運にも日本でビルマ語を教えて下さってミャンマーの茶産地へ ミャンマーには、チャを漬物にして食べる習慣がある。ミャンマー多数派民族ビルマ人の好みを表した「肉は豚、果物はマンゴー、葉物は茶」という言葉があるが、漬物茶「ラペッ」は、冠婚葬祭や来客時のもてなし、日常の食卓に欠かせないものである。現在、都市部では、民族を問わず茶を食す習慣が広がっている。*写真はすべて筆者撮影。調査を行ったP村。尾根筋に沿って住居が並んでいる。帳簿調査とフィールドワークのあいだミャンマーの茶産地で労働力を集めるしくみミャンマーの茶産地では、農家が、チャ摘み労働者に対して米や現金を前貸しするなど、さまざまな便宜をはかっている。しかし、貸す側であるはずの農家が、労働者に対して負い目を感じている様子をみせることがある。この一見不思議なチャ摘みをめぐる人びとの関係について、農家の帳簿を手がかりに探ってみよう。生駒美樹 いこま みき / AA研ジュニア・フェロー、AA研共同研究員ミャンマー中国ラオスタイナムサンマンダレーヤンゴンシャン州フィールド ノート

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る