FIELD PLUS No.21
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25FIELDPLUS 2019 01 no.21世話になった。ここでは地域住民が農地にガーデンをつくり、周辺200世帯から集めた生ごみや草葉類を畑に直接投入して土壌改良しつつ、たくさんの野菜やハーブを育てている。老若男女、誰でも都合のよいときに参加することができ、収穫物は作業した人々で等しく分け合う。さらに地域の各施設との連携により、ハンディキャップを有する人や子どもも参加しており、非常にオープンな明るいコミュニティが築かれている。コミュニティガーデンはボランティアベースの活動で、人の確保や役割分担の難しさから継続しづらいと言われているが、せせらぎ農園では2008年から10年間活動が途切れることなく営まれている。その秘密を解き明かすため、ガーデンの活動がどう分担され、どう継続されているのかを調べることとした。具体的には、季節ごとに1ヵ月ずつ、何の作業をどのくらいの時間行ったか来園者に記録してもらった。その結果、主に定年退職した男性や、子育てが一段落した女性が中心的な作業を定常的に担っており、それより若い世代は都合のつくときに来園し特に季節的に必要になる作業を補完しているという構図が明らかになった。少子高齢化社会を前提とした、資源循環の地域モデルといえる。 ドイツでは、コミュニティガーデンのなかでも特に移民や難民がドイツ人と交流の接点をもち、自分の居場所を確保できる場にすることを目的とした「多文化共生ガーデン」の役割や運営方法について、聞き取り調査をした。ベルリンの旧東側のリヒテンベルク地区にある多文化共生ガーデンでは、かつて同地区に移り住んだ社会主義国(キューバやベトナムなど)出身の住民が多く参加しているという。一方、ハノーファーの多文化共生ガーデンでは中東系(イランなど)の参加者が多く見られ、ミュンヘンの環境教育センターにあるガーデンでは西アジア系(アフガニスタンなど)の参加者がいるのを確認した。植えるものもその国の文化を反映しており、たとえばイランのガーデナーは食卓に欠かせないというマメを育てていた。こうした事例はドイツ人が発起人となり、自治体や財団から助成金をもらいながら運営していることが多いが、経済的状況や移民の流入状況から、都市ごとの事情は異なっているはずである。効果的な運営方法とはどんなものであるか、さらに本当に移民・難民の社会包摂に効果があるのかということについて、より多くの事例を通じて調べていく予定である。 ニュージーランドのクライストチャーチ市では、2010・11年のカンタベリー地震後にコミュニティガーデンが震災復興にいかに寄与したかを調べた。液状化の激しかった地区にあるニューブライトン・コミュニティガーデンズを訪問し、来園記録や、来園者へのインタビューからガーデンが果たした役割を考察した。調査前は、発災直後の避難先や食料供給の場として機能したのではないかと予想していた。しかドイツ・ベルリン市のリヒテンベルク地区にある多文化共生ガーデンの見取り図。畑部分は区画貸しされているが、共用スペースとして芝生や森があり、そこではかまどで一緒に料理したり、テーブルでご飯を食べたりできる。東京都日野市のせせらぎ農園。とれた野菜は作業に少しでも参加した人なら、みな平等に持って帰ることができる。お金を払う必要はなく、新鮮な野菜を楽しむことができる。ドイツ・ミュンヘン市の環境教育センターにある多文化共生ガーデンで実施された、主にアフガニスタンからの難民と一緒に野菜を育て、施設内のキッチンで料理をするプロジェクト。BUNTとは色とりどりという意味で、人々や食の多様性を象徴するプロジェクト名となっている。

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