方じかたFIELDPLUS 2018 07 no.20青井隼人(あおい はやと)1987年生/AA研特任研究員、国立国語研究所特任助教/言語音声学、音韻論、琉球語学主要業績:「南琉球宮古多良間方言の三型アクセント——その特徴と型の中和」(『音声研究』第20巻第3号、66-80頁、2016年)●ひとこと:昨年から新しく伊江島の言語調査を始めました。同じ沖縄県の言語であっても、これまで通っていた多良間島のことばとは、音声面でも文法面でも大きく異なっています。耳が慣れるまでにはもうしばらくかかりそうです。池田昭光(いけだ あきみつ)1977年生/AA研研究機関研究員/人類学主要業績:『流れをよそおう——レバノンにおける相互行為の人類学』(春風社、2018年)●ひとこと:昨年度、授業で劇映画やドキュメンタリー映画を取りあげつつ、「映像から人類学や中東を学ぶ」試みをしました。研究書からは得られない視点が見つかるものだと、普段映画を観ない自分としては新鮮でした。石井香世子(いしい かよこ)1975年生/立教大学、AA研共同研究員/社会学、東南アジア社会論主要業績:Marriage Migration in Asia: Emerging Minorities at the Frontiers of Nation-States(Kyoto CSEAS Series on Asian Studies 16)(編著、京都大学学術出版会、2016年)●ひとこと:20年前、はるかに遠かったフィールドから、今では毎年のように誰かが日本に来て、毎日SNS情報を共有しています。私のフィールドはタイ北部国境山岳地帯? それとも東京? 区別が意味をなさなくなったことの意味を、問うています。岩本佳子(いわもと けいこ)1984年生/AA研ジュニア・フェロー/オスマン朝史、西南アジア史、東洋史、遊牧民研究主要業績:「ルメリのユリュクから征服者の子孫たちへ――オスマン朝における準軍人身分の「遊牧民」の成立と展開」(『東洋史研究』第71巻第3号、130-156頁、2012年)●ひとこと:大帝国や王朝をうちたてなかった「庶民」である遊牧民の、経済活動や生活を、政府とのやり取りの面から解明することを表の研究目標としています。裏の目標は史料に出てきた場所を実際に訪れてみること。そして苦手な乳製品の克服。ヨーグルトだけは食べられるんですけどね。荻巣崇世(おぎす たかよ)1984年生/名古屋大学大学院国際開発研究科学術研究員、AA研共同研究員/比較教育学、教師教育学主要業績:「教育実践を統べる学びの論理——カンボジアの児童中心の教授法改革への示唆」(『比較教育学研究』第52号、3-25頁、2016年)●ひとこと:教育の場におけるグローバリゼーションの影響を研究しています。現在は、無国籍による不利益を抱えながら、カンボジアのベトナム系住民たちがどのように学校と関わっていこうとしているのかを探求しています。小山内優子(おさない ゆうこ)1985年生/AA研研究機関研究員/中期朝鮮語、朝鮮語史主要業績:「中期朝鮮語における2つの補文節について」(『国立国語研究所論集』第7号、187-198頁、2014年)●ひとこと:以前、満洲旗人の満洲語学習書に関する講演を聞き、大変興奮したのですが、そこで自分が「語学」よりも「語学書」が好きなことに気づきました。思えば初めて訪れた韓国の書店で買ったのもフランス語の語学書でした。倉部慶太(くらべ けいた)1986年生/AA研/言語学、チベット・ビルマ諸語主要業績:“Jinghpaw” (In Graham Thurgood and Randy J. LaPolla (eds.), The Sino-Tibetan Languages (2nd Edition), Routledge, 993-1010, 2017)●ひとこと:カチンの口承文芸蒐集・公開に取り組む私たちのデジタルアーカイブ化はまだ始まったばかりです。今後もコレクションを継続的に充実させ、より多くの方々に利用していただけるよう考えていきたいと思います。後藤真実(ごとう まなみ)1988年生/エクセター大学アラブ・イスラーム研究所博士課程(英国)/湾岸地域研究主要業績: “Their untold stories: The role of the‘outside’ researcher” (Gendered Voices, 3, 35-36, 2018)●ひとこと:ペルシャ語と南部イランの知識が、再訪した湾岸アラブ諸国との比較研究に役立ちました。今後は湾岸地域と関係の深い東アフリカ地域にも調査の範囲を広げたいです。7月のフェイスマスクの個展に向けても頑張ります!酒井千絵(さかい ちえ)1972年生/関西大学、AA研共同研究員/国際社会学主要業績:「上海の多文化家族——中国人配偶者と上海で暮らす日本人女性を中心に」(『関西大学社会学部紀要』第45巻第1号、47-72頁、2013年)●ひとこと:上海を3年ぶりに訪れ、スマホでの支払いやタクシーの利用、ビジネスマンから観光客まで世界各地から人が集まる活気を体感した。日本での報道だけを見ていてはわからない中国の姿がそこにはある。中国在住の日本人から、日本の若者にももっと中国に関心を持って欲しいと何度も聞いたが、私も同じ思いである。座馬耕一郎(ざんま こういちろう)1972年生/長野県看護大学/霊長類学主要業績:『チンパンジーは365日ベッドを作る——眠りの人類進化論』(ポプラ社、2016年)●ひとこと:チンパンジーを観察していると、言語に言い表せない感覚をもつときがある。そんな言語が作り出した垣根のようなものに穴をあけ、これまでの学問の枠組みを問い直しながら、私たちが何者なのか考えたいと思っている。菅原 純(すがわら じゅん)1966年生/蘭州大学、元AA研フェロー/新疆史、現代ウイグル語主要業績:“Islamic Legal Order in the Northwestern Frontier: Property and Waqf Litigation of a Sufi Family in Kāshghar (1841–1936)” (In Zsombor Rajkai and Ildikó Bellér-Hann (eds.), Frontiers and Boundaries: Encounters on China’s Margins, Harrassowitz, 177-201, 2012)●ひとこと:昨年から中国の蘭州大学で勤務しています。こちらの学生や同僚との刺激的な対話の中から、手堅い仕事を作り上げていきたいと念じつつ、チャガタイ語写本史料の校訂や、各種地文書史料に依拠したカシュガル都市史の再構築に取り組んでいます。陳 天璽(チェン ティエンシ)1971年生/早稲田大学、無国籍ネットワーク代表理事、AA研共同研究員/人類学、移民研究主要業績:『無国籍』(新潮文庫、2011年)●ひとこと:「なに人ですか?」ときかれたとき、あなたならなんと答えますか? 何をもって自分のアイデンティティを表しますか? 生まれた場所ですか? 話す言葉ですか? それとも国籍ですか……? 越境する人と子どもたち、無国籍や複数国籍の人たちは、どこに居場所をもつのか、フィールドワークを通して考えています。古井龍介(ふるい りょうすけ)1975年生/東京大学東洋文化研究所/南アジア古代・中世初期史主要業績:“Subordinate rulers under the Pālas: Their diverse origins and shifting power relation with the king” (The Indian Economic and Social History Review, 54 (3), 339-359, 2017)●ひとこと:留学以来、中世初期ベンガル碑文の校訂や再校訂をやってきましたが、それらに基づく社会経済史的研究にも一段落つきましたので、そろそろ碑文集の編纂に取りかかろうと思っています。横田祥子(よこた さちこ)1976年生/滋賀県立大学、AA研共同研究員/社会人類学主要業績:「インドネシア華人女性の国際結婚を通じた世帯保持――西カリマンタン州シンカワン市の事例から」(『華僑華人研究』第13号、27-44頁、2016年)●ひとこと:結婚移民の移住先・台湾と、出身地・インドネシア西カリマンタン州で、家族と女性の暮らしを追いかけてきました。母の離婚・再婚、再移動に伴い、二つの国の間に置かれた子供たちのことを調べていきたいです。吉本裕子(よしもと ゆうこ)1968年生/横浜市立大学客員研究員、慶応義塾大学非常勤講師/文化人類学、博物館学主要業績:「博物館における協同作業の再検討――アイヌ文化を展示する大阪人権博物館の展示制作変容プロセスより」(『博物館学雑誌』第37巻第1号、97-108頁、2011年)●ひとこと:これまでアイヌの展示表象や協働をテーマに調査研究を行ってきた。近年は昭和のコタン(集落)の生活史に着目しつつ、展示・映像制作に取り組んでいる。古老に会ってじっくり話を聞くことを最も大切にしている。32PROFILE
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