FIELDPLUS 2018 07 no.2013 今号のテーマは「あつめる」です。研究に必要な情報や資料をあつめることは、研究活動の重要な一部です。全てを予見することはできない現実のフィールドに出て試行錯誤するなかで、あつめるための勘所が磨かれ、あつめることの意義への省察が深められていきます。専門と地域も異なる3人の研究者が、「あつめる」をテーマに、フィールドでの調査研究の一端をお伝えします。 霊長類学を専門とする座馬耕一郎さんは、タンザニアのマハレ山塊国立公園内に暮らす現地の人々の間で、口承されてきた動植物に関する知識が失われつつあるなかで作成された動物図鑑を紹介します。この図鑑は、喪失の危機にある伝統的な知識をたんにあつめたものではなく、現地の子どもたちがそうした知識を自らあつめる一助になるものとして企画されたと言います。 チベット・ビルマ諸語の言語学を専門とする倉部慶太さんは、ミャンマーの山地に暮らすカチンの人々の口承文芸、その記録と保存のための活動を紹介します。失われつつある口承をあつめることは、学術的に意義があるだけでなく、当のカチンの人々が口承を次世代へと伝える手助けにもなる可能性をもっています。 南アジアの古代から中世初期の歴史を研究する古井龍介さんには、インド東部とバングラデシュからなるベンガル地方で発見される古い時代の碑文を調査し、写真撮影するまでの実践的なノーハウを披歴してもらいます。碑文をあつめるうえで、現地の関係者と信頼関係を構築することが重要であると言います。〈太田信宏 記〉歴史学
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