32FIELDPLUS 2017 01 no.17海老原志穂(えびはら しほ)1979年生/AA研ジュニア・フェロー、AA研共同研究員/言語学主要業績:「チベット人はヤクをどのように認識しているのか?」(『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』第3号、12-18頁、2016年)●ひとこと:チベットの牧畜地域を訪れると、文化の衰退ばかりが目につきます。しかし、牧畜文化を現代にあった形で続けようとしている人たちがいることを、最近の調査で知りました。彼らの活動に今後注目していきたいです。大石高典(おおいし たかのり)1978年生/東京外国語大学/生態人類学、アフリカ地域研究主要業績:『民族境界の歴史生態学――カメルーンに生きる農耕民と狩猟採集民』(京都大学学術出版会、2016年)●ひとこと:使われなくなった土器を、住民が野生ヤムイモを掘りだす際に地中から見つけ出すことがあります。眺めていると、これは鍋の底、これは口の部分、と女性たちが次々に当てていくので驚いてしまいました。加藤 博(かとう ひろし)1948年生/一橋大学名誉教授、AA研フェロー/アラブ社会経済史主要業績:『現代アラブ社会――「アラブの春」とエジプト革命』(岩崎えり奈と共著、東洋経済新報社、2013年)●ひとこと:人びとの社会生活は多様な要素とそれらの複雑な結びつきからなりたっている。こうした個々の社会がもつ特徴を殺すことなく、どうすれば人類は多様で複線的に発展し得るかを、中東アラブ世界を舞台に考えていきたい。川村晃一(かわむら こういち)1970年生/日本貿易振興機構アジア経済研究所/比較政治学、インドネシア地域研究主要業績:『新興民主主義大国インドネシア――ユドヨノ政権の10年とジョコウィ大統領の誕生』(編著、アジア経済研究所、2015年)●ひとこと:インドネシアが民主化を達成した年にインドネシア研究を始めてから18年。いまだにインドネシア人のアクロバティックな政治手法に驚かされる。これからも、政治制度を軸に民主政治の動態を研究していきたい。姜 英淑(かん よんすく)1973年生/東海大学、AA研フェロー、AA研共同研究員/言語学主要業績:『韓国語慶尚道諸方言のアクセント研究』(勉誠出版、近刊)●ひとこと:フィールドワークを始めてから気が付けば10年以上も経っている。最初の頃に比べると慣れてはいるが、今も毎回の調査は気を張る仕事である。楽しみながらフィールド調査ができるようになりたいが、まだその余裕などない。品川大輔(しながわ だいすけ)1977年生/AA研/記述言語学、バントゥ諸語主要業績:"Vowel length and TMA micro-variation in Kilimanjaro Bantu"(『アジア・アフリカの言語と言語学』第9号、5-21頁、 2015年)●ひとこと:ここのところのアフリカ渡航では、キリマンジャロのフィールドに籠っての調査に加え、新しい世代のタンザニア人研究者との交流の機会が増えていて、そのことが新たなモチベーションになっています。土井清美(どい きよみ)1976年生/東京大学学術研究員/文化人類学主要業績:『途上と目的地――スペイン・サンティアゴ徒歩巡礼路:旅の民族誌』(春風社、2015年)●ひとこと:観光、巡礼、旅といった現象を多様な枠組みから研究しています。出かけるだけでなく籠ることも大事、と私淑する先生が言われていたことを最近思いだし、そのための時間と空間の確保に頑張っています。外川昌彦(とがわ まさひこ)1964年生/AA研/南アジア地域研究主要業績:『聖者たちの国へ――ベンガルの宗教文化誌』(NHKブックス、2008年)●ひとこと:30年近くバングラデシュに関わってきて、日本のメディアでこれほど大きく、バングラデシュの問題が取り上げられたことはありませんでした。この次は、テロ事件などではなくて、もっと違ったバングラデシュの姿を紹介できたらと思っています。ナムタルジャ(rnam thar rgyal)1986年生/滋賀県立大学大学院博士後期課程、AA研共同研究員/文化人類学主要業績:「草原を追われる遊牧民──中国青海省黄南チベット族自治州における生態移民、定住化プロジェクトについて」(棚瀬慈郎・島村一平編著『草原と鉱石――モンゴル・チベットにおける資源開発と環境問題』明石書店、260−274頁、2015年)●ひとこと:故郷をフィールドに、チベット牧畜社会の研究を行っています。共同研究でのフィールドワークは多面的でとても勉強になります。チベット牧畜民について、日本の研究者とも協力しながら研究を進めていきたいと思っています。奈良間 千之(ならま ちゆき)1972年生/新潟大学/自然地理学主要業績:Ikeda, N., Narama, C., Gyalson, S. "Knowledge sharing for disaster risk reduction: Insights from a glacier lake workshop in the Ladakh region, Indian Himalayas"(Mountain Research and Development, 36(1), 31-40, 2016)●ひとこと:アジア山岳地域や日本アルプスで研究活動を継続し,新潟大学が日本の山岳環境研究の拠点の一つになればよいなと考えています。野田 仁(のだ じん)1974年生/AA研/中央アジア地域研究主要業績:『露清帝国とカザフ=ハン国』(東京大学出版会、2011年)●ひとこと:中国新疆ウイグル自治区の少数民族に関心を持っています。旧ソ連領中央アジアと新疆という2つの領域間の移動や交流の歴史について研究を進めたいと考えています。別所裕介(べっしょ ゆうすけ)1972年生/京都大学白眉センター特定准教授、AA研共同研究員/宗教人類学主要業績:"Migration for Ecological Preservation? Tibetan Herders' Decision Making Process in the Eco-Migration Policy of Golok Tibetan Autonomous Prefecture(Qinghai Province, PRC)"(NOMADIC PEOPLES, 19(1), 189-208, 2015)●ひとこと:政府の移住政策が行き詰まる中、現地では「牧畜民自身が牧畜をどうしたいのか」という視点を欠落させたまま、近代酪農業への転換が声高に主張されている。今一度、牧畜という生き方の原点を見つめ直すべきだと感じる。 星 泉(ほし いずみ)1967年生/AA研/チベット語、チベット文学主要業績:『古典チベット語文法――『王統明鏡史』(14世紀) に基づいて』(AA研、2016年)●ひとこと:チベットの文学や映画の翻訳などを手がけるようになり、「わからなさ」に打ちのめされる機会が増えてきました。牧畜民の暮らしはその筆頭でしたが、共同研究のおかげで少し近づけた気がしています。 山崎寿美子(やまざき すみこ)1980年生/筑波大学非常勤研究員/カンボジア地域研究、人類学主要業績:「カンボジアの発酵食品パデークをめぐる差異化とつながり」(『歴史人類』第44号、61-80頁、2016年)●ひとこと:カンボジア北東部の周縁に生きるラオ人について研究しています。国家のマジョリティであるクメール人との接触や開発が進み、人びとの生活世界は急激に変化しています。そうしたなか、日常会話と食の嗜好に着目して、人びとの文化変容のありかたを調査しています。 吉村晶子(よしむら あきこ)千葉工業大学/景観工学主要業績:「風景論の展開――構造と反構造のダイナミズム」(田路貴浩・齋藤潮・山口敬太編『日本風景史――ヴィジョンをめぐる技法』昭和堂、379-423頁、2015年)●ひとこと:共有されてきた風景や空間の読み解き方を研究している。立地を選ぶことそのものの意味や、空間スケール自体がもつ意味など、はっきり目に見える「かたち」になる少し前の段階がとても興味深く、さらに追究したい。PROFILE巻頭特集「チベット牧畜民 の『今』を記録する」補遺特集に関連した本を何冊か紹介します。◎牧畜に関して知識を深めるために『牧夫の誕生――羊・山羊の家畜化の開始とその展開』谷泰著、岩波書店、2010年。『ユーラシア乳文化論』平田昌弘著、岩波書店、2013年。『人とミルクの1万年(岩波ジュニア新書)』平田昌弘著、岩波書店、2014年。◎チベットの人々を身近に感じるために『チベット 聖地の路地裏――八年のラサ滞在記』村上大輔著、法藏館、2016年。『チベット文学の新世代 雪を待つ』ラシャムジャ著、星泉訳、勉誠出版、2015年。『ハバ犬を育てる話(物語の島 アジア)』タクブンジャ著、海老原志穂・大川謙作・星泉・三浦順子訳、東京外国語大学出版会、2015年。◎チベットの牧畜について理解を深めるために『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』第3号、チベット文学研究会編、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2016年。※非売品です。ご関心のある方は、http://tibetanliterature.blogspot.jp にアクセスし、「雑誌SERNYA」というページから入手方法をご確認ください。
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