FIELD PLUS No.16
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4FIELDPLUS 2016 07 no.16イスラームの教義に則った商品・サービスへの関心が高まっている。主な商品・サービスと市場規模とともに、シャリーアを遵守することの意味と、ムスリム/非ムスリムそれぞれの反応を探ってみた。られる。そのため、ムスリム向けの商品・サービスはイスラームの誕生と同時に生まれたといえる。それではなぜ、現代において関心が高まってきているのであろうか。 これには、グローバリゼーションと科学技術の発展とが深くかかわっている。一つ目は貿易や商取引の活発化である。これによって、非イスラーム諸国で生産された物がイスラーム諸国へと輸出されるようになった。しかし、中にはイスラームに反する要素を含んだ商品もあり、ムスリムが知らずに購入してシャリーアに違反してしまう可能性がある。これを避けるため、シャリーアに照らし合わせて合法(ハラール)であるかを専門家が峻別するハラール認証制度が誕生した。二つ目は、移民や難民、あるいは出稼ぎや観光旅行などで、ムスリムの非イスラーム諸国への移動が容易となったことである。移動先にはモスクなどの礼拝場所やハラール・レストランが少なく、出身国と同じ信仰生活を保つのは難しい。そのためイスラームに基づく商品・古くて新しい問題 近年、イスラームに基づく商品・サービスに注目が集まっている。7世紀に預言者ムハンマドがアラビア半島でイスラームの宣教活動を始めて以来、その信徒であるムスリム(イスラーム教徒)はシャリーア(イスラーム法)に則って生活することが求めサービスは、イスラーム諸国のみならず非イスラーム諸国でも需要がある。そして三つ目が科学技術の発展である。ハラール食品を例に挙げると、食品化学が高度に発達した結果、ブタ由来の添加物や調味料などが広く普及し、料理を一目見ただけでは区別がつかなくなっている一方で、これらが含まれているか調べる検査キットも登場した。また、どの食品や添加物にアルコールやブタ由来成分が使用されているか、インターネット等で簡単に検索することができるようになった。 このようにイスラームに基づく商品・サービスは、イスラームが誕生したのと同時に発生した古い問題であり、同時にグローバリゼーションや科学の発展から影響を受けた現代的な問題であるといえる。多様な商品・サービスとマーケット イスラームに基づく商品・サービスは、その多様性と市場規模が年々拡大している。アメリカの情報会社であるトムソン・ロイター社とディナール・スタンダード社の共同レポート『State of the Global Islamic Economy Report 2015/16』によると、2014年の市場規模は3兆6,220億米ドル(約398.3兆円)で、今後も年平均8.24%で拡大して2020年には5兆8,250億米ドル(約640.5兆円)に到達すムスリムの日常生活を支える商品・サービス福島康博ふくしま やすひろ / AA研フェロー、立教大学アジア地域研究所特任研究員マレー人の新郎新婦。伝統(イスラーム)と西洋近代を折衷したデザイン。マレーシア・クランタン州。ウシ由来のゼラチンで作られたカプセル錠剤。マレーシア・クアラルンプール。大学の食堂。食器はハラール料理用とそうでないものに分けて返却する。シンガポール。スーパーマーケットの食品売り場に設置されたハラール肉専用冷凍庫。フィリピン・マニラ。クランタン州マニラクアラルンプールマレーシアフィリピンシンガポール

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