FIELD PLUS No.16
5/36

3FIELDPLUS 2016 07 no.16様性 イスラームと聞くとテロや戦争など暴力的なイメージが先行しがちですが、過激な言動に走る者はごく一部であり、大半のムスリム(イスラーム教徒)は会社に勤めて商品やサービスを生産し、稼いだお金を使って余暇を楽しんだりしています。このことはわれわれと何ら違うところはありません。 グローバリゼーションの時代を迎えた今日、ギャンブルやポルノ、アルコールや銀行利子などイスラームに反するとみなされる商品・サービスがムスリム社会に流入する一方、ムスリムとしてのアイデンティティーが強まり「ムスリムが、ムスリムとして、よりムスリムらしく生きる」という生き方を選択する人びとも増えています。 現代における消費は、必要最低限の衣食住を満たすのみならず、自身の価値観を体現するという意味も持つようになりました。個人所得が高い湾岸諸国や東南アジアのムスリムを中心に、ムスリムであることの自己実現の手段として消費が意識的に行われています。 企業側も、世界で16億人ともいわれるムスリムの消費マインドに敏感に反応しています。この結果、食品、ファッション、化粧品、運輸、金融、スマートフォンのアプリ、観光ツアー、土産物など様々な分野でイスラームに適っているとされる商品・サービスが次々と登場しています。 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えた日本でも、外国人ムスリム観光客対応の一環として空港やショッピングモールでの礼拝室の設置、ハラールのレストランや土産物の増加などに、企業や政府が力を入れています。外国人ムスリムを温かく迎え入れようとする日本の取り組みに対し、イスラーム諸国のメディアは、イスラモフォビア(イスラームへの嫌悪感)が台頭する欧米とは真逆だと驚きをもって報じています。 本特集は、中東や東南アジアそして日本におけるハラール食品・レストランやイスラーム金融、ムスリム観光客のための対応を行う企業や団体、地域に焦点を当てました。正しいムスリムとして正しい商品を消費したいムスリムと、ニーズを汲もうとする企業の新しい関係の構築にご注目下さい。この特集は東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同利用・共同研究課題「イスラームに基づく経済活動・行為」の成果の一部です。2016年4月にマレーシア・クアラルンプールで開催されたハラール食品の見本市。29カ国から500社以上が出展した。toyyiban責任編集 福島康博

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る