32FIELDPLUS 2016 01 no.15伊谷樹一(いたに じゅいち)1961年生/京都大学/アフリカ地域研究、熱帯農学主要業績:『アフリカ地域研究と農村開発』(京都大学学術出版会、2011年)●ひとこと:多様な生命を育んできたミオンボ林はいつの間にか荒涼とした草原に姿を変えていました。現代社会のなかでミオンボ林と人が共存できる道がないか、最後の悪あがきをしています。今井啓雄(いまい ひろお)1967年生/京都大学霊長類研究所/分子生物学主要業績:「ポストゲノム霊長類学」(京都大学霊長類研究所編『新・霊長類学のすすめ』丸善出版、162-177頁、2012年)●ひとこと:分子生物学者もフィールドへ行けるようになりましたし、行くべきです。一方でフィールドワーカーも最新の分子生物学を使えるので、ぜひ使うべきです。奥野克巳(おくの かつみ)1962年生/立教大学、AA研共同研究員/文化人類学主要業績:『人と動物の人類学(シリーズ 来たるべき人類学 5)』(共編著、春風社、2012年)●ひとこと:ポストモダン人類学以降、いかに民族誌は書かれるべきか。その手がかりを得るために、2010年から毎年50冊のノルマを決めて、文学作品を読んでいます。5年が過ぎ、この間300冊を超えましたが、まだなかなか纏まった民族誌を書き上げることができていません。久保明教(くぼ あきのり)1978年生/一橋大学、AA研共同研究員/科学技術の人類学主要業績:『ロボットの人類学――二○世紀日本の機械と人間』(世界思想社、2015年)●ひとこと:アクターネットワーク論の限界を超え、言葉とモノの狭間を精査する方法論の構築を目指して理論的研究を進めると同時に、その適用事例として日米のAI研究、インドIT、家庭料理の歴史を調査分析している最中です。塩原朝子(しおはら あさこ)1970年生/AA研/言語学、インドネシアの言語主要業績:『多言語社会インドネシア――変わりゆく国語、地方語、外国語の諸相』(共編著、めこん、2009年)●ひとこと:本文で触れた、インドネシアの少数言語の音声データをウェブページ(http://id-lang-rc.aa-ken.jp/)で公開しています。ご興味のある方はぜひご覧になってください。菅 豊(すが ゆたか)1963年生/東京大学/民俗学主要業績:『「新しい野の学問」の時代へ――知識生産と社会実践をつなぐために』(岩波書店、2013年)●ひとこと:もう十数年、小千谷で角突きに参加している。その過程では、単に地域文化を描くだけではなく、地域の人びとと一緒に文化を創るということを目指している。髙松洋一(たかまつ よういち)1964年生/AA研/オスマン朝史、古文書学主要業績:「勅令の『裏側』を読む――大宰相府伝来の勅令正文に関する一考察」(近藤信彰編『近世イスラーム国家史研究の現在』アジア・アフリカ言語文化研究所、299-328頁、2015年)●ひとこと:シュリーマンのヒサルルック発掘に関するオスマン政府の公文書が、近年トルコで多数公開されました。発掘品を持ち去ったので彼の評判は悪いのですが、当時の文書に何が書いてあるのか、いつか読みたいと思っています。寺井洋平(てらい ようへい)1970年生/総合研究大学院大学/種分化と適応の機構の研究主要業績:Terai, Y., Okada, N. “Speciation by sensory drive in cichlid shes” (In Miho Inoue-Murayama, Shoji Kawamura, Alexander Weiss (eds.), From genes to animal behavior: social structures, personalities, communication by color, Springer Japan, 311-328, 2011)●ひとこと:実際に生物を扱って研究していると生物から学ぶことが多いことに驚かされる。これからも生物の進化の機構を生きた生物から読み解いていきたい。床呂郁哉(ところ いくや)1965年生/AA研/人類学主要業績:『ものの人類学』(河合香吏と共編著、京都大学学術出版会、2011年)●ひとこと:ヒトとヒト以外(非人間)の「もの」(生物、自然物、人工物)の関係を改めて考えなおすことに関心を持っています。中村恭子(なかむら きょうこ)1981年生/AA研特任研究員、日本画家主要業績:「珠(たま)を放つ」(『現代思想』第41巻第8号、154–166頁、2013年)●ひとこと:土佐の郷土料理である「皿鉢料理」のなかで、大皿にいろいろな食べ物を盛り合わせる「組みもの」に関心を持っています。調査のために高知県に旅に出る予定です。中村美知夫(なかむら みちお)1971年生/京都大学野生動物研究センター、AA研共同研究員/人類学主要業績:『「サル学」の系譜――人とチンパンジーの50年』(中央公論新社、2015年)●ひとこと:タンザニアで野生チンパンジーの長期調査をしています。「人間と動物」という単純な二項対立を乗り越えて、人間も含む動物の社会を理解していくことが目的です。藤井真一(ふじい しんいち)1981年生/大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程/人類学、メラネシア地域研究主要業績:「ペル・ウル(pelu ulu)――紛争渦中で平和共存を実現する方法」(『未来共生学』第2号、229-254頁、2015年)●ひとこと:2009年の臨地調査が初めての海外渡航でした。現地で面白そうなことに出くわしたらとにかく首を突っ込んで、聞き取りや観察だけでなく身体もせっせと動かして、彼らの暮らしぶりを捕まえようと努めています。目黒紀夫(めぐろ としお)1982年生/AA研研究機関研究員/環境社会学、アフリカ地域研究主要業績:『さまよえる「共存」とマサイ――ケニアの野生動物保全の現場から』(新泉社、2014年)●ひとこと:もともとの関心はアフリカの野生動物政策に地域社会がどのように対峙しているのかということだったのですが、最近の興味はマサイの人たちが外の世界と交流するなかでいかに生活を組み立てているのかということです。吉田ゆか子(よしだ ゆかこ)日本学術振興会特別研究員(国立民族学博物館)、AA研共同研究員/文化人類学、インドネシア地域研究、芸能の人類学主要業績:「仮の面と仮の胴――バリ島仮面舞踊劇にみる人とモノのアッサンブラージュ」(『文化人類学』第76巻第1号、11-32頁、2011年)●ひとこと:バリ島現地の仮面舞踊劇を学びながら、調査研究を続けています。仮面を装着することにも、それを外して普段の顔に戻ることにも、独特の楽しさや心地よさがあります。 吉松久美子(よしまつ くみこ)1954年生/作家、文化人類学者/人類学主要業績:『フロンティアの終焉――移動するカレン族の民族誌』(東京外国語大学出版会、近刊)●ひとこと:長年のカレン研究も近著でひと段落つきましたので、これからは東南アジアにおける回族の交易についてまとめたいと考えています。PROFILE巻頭特集「ひとと『もの』の 関係性を探る――人間と非人間の境界の揺らぎと越境をめぐって」補遺記事をご覧になって興味を持たれた方に、おすすめの図書を紹介します。『ものの人類学』床呂郁哉・河合香吏編、京都大学学術出版会、2011年「旅するフィールドワーク――真珠をめぐる複数のフィールドの調査から見えてくるもの」床呂郁哉(西井凉子編『人はみなフィールドワーカーである――人文学のフィールドワークのすすめ』東京外国語大学出版会、108-127頁、2014年)
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