32FIELDPLUS 2015 07 no.14伊藤詞子(いとう のりこ)1971年生/京都大学野生動物研究センター研究員、AA研共同研究員/霊長類学主要業績:「共存の様態と行為選択の二重の環――チンパンジーの集団と制度的なるものの生成」(河合香吏編著『制度――人類社会の進化』京都大学学術出版会、143-166頁、2013年)●ひとこと:人間同士でもままならないのに、言葉を持たない動物がいったいどうやってコミュニケートするのかが知りたくて研究を始めました。うまくいかなかったり、怒られたりしても、またトライしてみたらいいんですね。岩尾一史(いわお かずし)1975年生/神戸市外国語大学客員研究員、AA研共同研究員/東洋史、古代チベット史主要業績:Old Tibetan Inscriptions(Old Tibetan doc-uments online monograph series 2, Kazushi Iwao et al.(eds.), Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa, Tokyo University of Foreign Studies, 2009)●ひとこと:高校生の頃に友達が借してくれたある漫画をきっかけにして、チベット研究の道を志しました。古代チベットの国家制度を主に研究してきましたが、最近はチベット人の歴史認識の変遷にも興味があります。大村敬一(おおむら けいいち)1966年生/大阪大学、AA研共同研究員/文化人類学主要業績:『カナダ・イヌイトの民族誌――日常的実践のダイナミクス』(大阪大学出版会、2013年)●ひとこと:カナダ・イヌイトの民族誌的な調査を通して、「人類はどこから来て、何者であり、どこに行こうとしているのか」という人類の過去と現在と未来について考え、人類の可能性と限界を探ろうとしています。大山修一(おおやま しゅういち)1971年生/京都大学/地域研究(アフリカ、南米)、地理学、生態学、人類学など主要業績:『西アフリカ・サヘルの砂漠化に挑む――ごみ活用による緑化と飢餓克服、紛争予防』(昭和堂、2015年)●ひとこと:テロや内戦、領土問題、感染症の脅威、自然災害の発生など、世界情勢が流動的で、フィールドワークのやりにくさを感じる反面、世界の相互理解をすすめるために、フィールドワークの重要性を感じています。小野智香子(おの ちかこ)1970年生/千葉大学特任研究員、AA研共同研究員/言語学、イテリメン語主要業績:「イテリメン語の世界」(中川裕監修『ニューエクスプレス・スペシャル 日本語の隣人たち』白水社、66-85頁、2009年)●ひとこと:いまある言語はどのようにして形づくられてきたのか、またどのように変わっていくのか、言語接触と言語変化に関心があります。カムチャツカから北東ユーラシア地域における諸言語のありようを探っていきたいです。河合香吏(かわい かおり)1961年生/AA研/人類学主要業績:『集団――人類社会の進化』(編著、京都大学学術出版会、2009年)●ひとこと:私自身のフィールドは東アフリカの牧畜社会ですが、ヒトとヒト以外の霊長類の社会からその社会性(sociality)の進化について考えてゆくことを目指し、霊長類学者と人類学者との共同研究を続けています。呉人徳司(くれびと とくす)1965年生/AA研/言語学(チュクチ語、モンゴル諸語)主要業績:『探検言語学――ことばの森に分け入る』(呉人惠と共著、北海道大学出版会、2014年)●ひとこと:日本に来てから、主にシベリアの北東端で話されているチュクチ語の仕組みを解明したくて23年間奮闘しているが、未だに分からないことだらけで、悩みが尽きない。竹ノ下祐二(たけのした ゆうじ)1970年生/中部学院大学、AA研共同研究員/霊長類学、人類学、子ども学主要業績:“From vision to narrative: A trial of informa-tion-based gorilla tourism in the Moukalaba-Doudou National Park, Gabon”(TROPICS, 23(4), 185-193, 2015)●ひとこと:最近は、大型類人猿とヒトの子育ての比較研究を通じて、人間社会における協同育児と教育の進化について考えています。田邊優貴子(たなべ ゆきこ)1978年生/国立極地研究所/植物生理生態学、陸水学主要業績:『すてきな地球の果て』(ポプラ社、2013年)●ひとこと:生物や自然科学を研究する上で、その生物たちが生きる自然環境を実際に自分の目で見ながら進めていかなければ、その中に潜む面白い現象を捉えることはできないと思っています。それに加えて、仮説を検証するための実験や測定といったラボワークと論文などでのアウトプット。全ての組み合わせによって真理に迫っていきたいと思っています。寺嶋秀明(てらしま ひであき)1951年生/神戸学院大学、AA研共同研究員/生態人類学、文化人類学、民族学主要業績:『共生の森(熱帯林の世界6)』(東京大学出版会、1997年)●ひとこと:中途半端のままの課題を片付けてそろそろ店じまいをしなければならない年齢ですが、とりあえず現在進行中の自然・文化・学習の相互関係を精密化してみたい。そしてできればもう一度、イトゥリの森に行ってみたい。中村香子(なかむら きょうこ)1965年生/京都大学アフリカ地域研究資料センター研究員/人類学、アフリカ地域研究主要業績:Adornments of the Samburu in Northern Kenya: A Comprehensive List(The Center for African Area Studies, Kyoto University, 2005)●ひとこと:サンブルの装身具の調査は思った以上に奥深く、ビーズという切り口から、若者の恋愛、観光業への参与、女性のライフコース……と自然に興味がひろがっていきました。彼らと年を重ねつつ、最近は「年をとること」について学ぶことが多いです。野林厚志(のばやし あつし)1967年生/国立民族学博物館/人類学主要業績:『イノシシ狩猟の民族考古学――台湾原住民の生業文化』(御茶の水書房、2008年)●ひとこと:最近は台湾の工芸生産とエスニシティとの関係に焦点をあてた調査をしています。動物資源の利用の課題も並行させていて、生態適応と文化適応の境界で人間が何をしでかすかを肉食行為や料理の発明をキーワードに考えています。藤野陽平(ふじの ようへい)1978年生/AA研研究機関研究員/宗教人類学主要業績:『台湾における民衆キリスト教の人類学 ――社会的文脈と癒しの実践』(風響社、2013年)●ひとこと:高齢者を対象に取材をしていますが、みなさんがお元気なうちに原稿を見せられないことも多々あります。時の過ぎるスピードの速さと自分の筆の遅さに焦燥感ばかり募りますが、少しずつでも書き続けていこうと思っています。 山崎幸治(やまさき こうじ)1975年生/北海道大学アイヌ・先住民研究センター/文化人類学主要業績:『世界のなかのアイヌ・アート』(伊藤敦規と共編著、北海道大学アイヌ・先住民研究センター、2012年)●ひとこと:国内外の博物館には、多くのアイヌ民族に関する資料が存在しています。それらに現在のアイヌ民族がアクセスすることで何が起こるのか? 自分はどう関われるのか? 広い視野をもって、考えていきたいと思っています。PROFILE巻頭特集「ともに生きる――霊長類学と人類学からのアプローチ」補遺記事をご覧になって興味を持たれた方に、おすすめの図書を紹介します。『制度――人類社会の進化』河合香吏編著、京都大学学術出版会、2013年。『集団――人類社会の進化』河合香吏編著、京都大学学術出版会、2009年。『生きる場の人類学――土地と自然の認識・実践・表象過程』河合香吏編著、京都大学学術出版会、2007年。『人間性の起源と進化』西田正規・北村光二・山極寿一編著、昭和堂、2003年。
元のページ ../index.html#32