3FIELDPLUS 2015 01 no.13cell-phone暮らしを映し出すメディア 今世紀のアフリカには携帯電話が急速に普及している。2000年の時点では、1,500万件ほどであった契約数は、2010年では5億4,000万件近くにまで膨れ上がった。本特集で概観するように、携帯電話利用者を見かけることは、都市部だけでなく、もっとも辺境の乾燥地域に位置する社会でさえ難しくなくなった。すなわち南アフリカ共和国の故マンデラ元大統領が語ったように、「携帯電話はもはや富の象徴ではなく、生活の一部になっている」。 さらに現在では、すでにインフラ(社会基盤)となった情報通信システムを背景にした携帯電話自体の高機能化とともに、音声通話だけではなくメールやインターネットといった文字・画像情報のやりとりや、手軽に携帯電話に電子マネーをチャージして送金できるモバイルマネーサービスといった新たなサービスが展開している。こうした新たな情報通信技術の普及が社会に与える影響に関する古典的な議論では、空間を越えたコミュニケーションを可能にする側面が注目される傾向にあった。こうした見方は、「新たな技術の受容のされ方はいかなる社会でも一様である」という誤解をもたらす。だが実際には先進国の間でも、携帯電話の受容のされ方は異なる。また同じ国であっても、たとえば日本のように携帯電話という同じモノが若者にはLINEなどのSNSサービスを利用する「小型PC」、中年以上の人びとには「電話」というように、世代ごとに異なったモノとして受容される傾向にある。ましてや、先進国が経験してきた固定電話の普及という過程を飛び越えて携帯電話が普及しつつあるアフリカ諸国においては、この新たな情報通信技術が受容される背景が全く異なる。 このように携帯電話やそれを介した新たな情報通信サービスという私たちにとっても馴染み深いモノは、同時代のアフリカに生きる人びとの目にいかに映り、どのように使われているのだろうか? メディアを通じて、アフリカの「今」を見てみよう。この特集は東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同利用・共同研究課題「現代アフリカにおける〈国家的なもの〉に関する研究:ニューメディア・グローバリゼーション・民主主義」 の成果の一部です。責任編集 内藤直樹
元のページ ../index.html#5