FIELD PLUS No.13
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王政期エジプトの新聞データベース:「失われた」資料もデータベース化することでよみがえる。22FIELDPLUS 2015 01 no.13資料の価値と可能性を広げる 情報資源利用研究センターでの研究特別企画 情報資源利用研究センター(IRC)は、AA研の中で、コンピュータを用いて資料やデータの分析を支援する研究を行っている組織です。その活動の中心は、AA研で展開されているアジア・アフリカの言語、文化、歴史に関する幅広い共同研究に不可欠な文字資料、画像・映像資料をコンピュータで処理・検索ができるデータベースに作りあげることです。 たとえば、石に刻まれた碑文や古地図・貴重史料など、直接見に行くことが難しい資料のデータベースはその意義がわかりやすいでしょう。インターネット上で公開されればだれでもその資料を研究に活かすことができます。また、コンピュータ上のデータにすることで、紙の資料を手作業で調べ見比べるのとは別次元の研究が可能になることもあります。IRCプロジェクトで開発されてきた電子辞書を組み合わせれば多くの言語の単語を横断的に検索して一覧することもできます。そんな中に、一つ一つの言語を調べているだけでは見えてこない、言語から言語への語の伝播の様子が浮き彫りになってくるかもしれません。特集記事の中で紹介されている、地名データベースを使って民族の移動や歴史の流れを探ってみる、多くの民話のデータの分析から民話のモティーフや構造を明らかにする、といった、これまでにない、もしくはこれまでは難しかった研究の可能性が開けることもあります。 また、研究資料をコンピュータで活用できる新たな「研究資源」として作りかえる研究に加えて、コンピュータの力を言語や文化などの研究によりよく活かすための研究も活発に進めています。コンピュータで世界の多様な文字を上手く扱うためのノウハウや技術の開発、暗号のような年代表記法の解読を支援するツールの開発などは、その好例です。 データベースの整備やツールの開発は研究の基盤作りとも言え、その重要性は明らかです。しかしながら、こうした研究はたいへん多くのリソース(時間、手間、ノウハウ、資金)を必要とするため、個人の研究者ではなかなか取り組みにくい活動でもあります。IRCは、この、必要とされるけれども個別には進めにくい研究基盤作りに組織的に取り組んでいます。 この特集では、こうしたIRCの取り組みのいくつかをご紹介します。それぞれ、どんな研究の可能性を開くのか。想像をふくらませてみてください。古チベット語文献データベース:コンピュータデータに加工された文献は多様な形で検索ができるので今までにない角度から言葉の使い方を明らかにできる。中山俊秀なかやま としひで / AA研(情報資源利用研究センター長)マダガスカル社会に関する画像データベース:百聞は一見にしかず──画像資料は現地の空気感をも伝える。

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