32FIELDPLUS 2014 07 no.12阿部優子(あべ ゆうこ)1974年生/AA研特任研究員/言語学、バントゥ諸語主要業績: A Bende Vocabulary.(Bantu Vocabulary Series vol. 13, Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa, Tokyo University of Foreign Studies, 2006)●ひとこと:ベンデ語はどこからやってきて、なぜ今の姿になったのかを考えています。ベンデの森とタンガニイカ湖には精霊が溢れているのですが、いつかベンデの精霊が降りてきて答えを教えてくれると信じています。飯塚正人(いいづか まさと)1960年生/AA研/イスラーム学、中東地域研究主要業績:『現代イスラーム思想の源流』(山川出版社、2008年)●ひとこと:もともと文献学者・イスラーム思想研究者で、フィールドワークといちばん遠いところにいたはずが、AA研にいた20年で見事?ムスリム研究者に変身させられてしまった。フィールドワークとイスラーム圏の魅力、恐るべし。内海敦子(うつみ あつこ)1970年生/明星大学、AA研共同研究員/言語学(オーストロネシア言語学、記述言語学)主要業績:「消滅に瀕したBantik語の姿――多言語状態と言語変化」(『言語研究』第134号、57-84頁、2008年)●ひとこと:北スラウェシ州の言語を記述し始めてもう少しで20年。資料が少ない言語を優先的に調査し、現在三つ目の言語に挑戦している。他の研究者と協力して、この地域の言語の地域的特徴と系統的特徴を明らかにしたい。梅村絢美(うめむら あやみ)1983年生/日本学術振興会特別研究員(京都大学)/ 人類学、南アジア研究、伝統医療研究主要業績:「発話がまねく禍、沈黙がもたらす効力―― スリランカ土着の伝統医療パーランパリカー・ヴェダカマの知の継承と医療実践」(『社会人類学年報』第37号、165-182頁、2011年)●ひとこと:スリランカでの長期調査から帰国し、出会った人々や出来事について文章に書こうとするとき、妙に遠のいたような感覚に陥ります。肌身で感じた経験を言葉にしたい欲求と難しさの間で格闘する日々が続きそうです。小川 了(おがわ りょう)1944年生/東京外国語大学名誉教授、元AA研/野菜作り、西アフリカの勉強主要業績:『ジャーニュとヴァンヴォ――第一次大戦時、西アフリカ植民地兵起用をめぐる二人のフランス人』(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2014年)●ひとこと:退職後、のんびりの日々。新しいことの発見には遠く及ばず、人様の後塵を拝しつつ、ゆっくり歩むことができれば……というところです。梶 茂樹(かじ しげき)1951年生/京都大学、元AA研/言語学、アフリカ地域研究主要業績:『アフリカをフィールドワークする――ことばを訪ねて』(大修館書店、1993年)●ひとこと:知らない言語、知らない言語と、求めていると、アフリカに行き着きました。そのうちに、ニューギニアや南米に行くかも(すでに南太平洋に進出)。菊澤律子(きくさわ りつこ)1967年生/国立民族学博物館、総合研究大学院大学、AA研共同研究員/言語学主要業績:「ことばから探る人の移動」(印東道子編 『人類の移動誌』臨川書店、264-277頁、2013年)●ひとこと:現代言語学にない新しい研究分野の開拓や、既存の枠組みでは視野に入ってこない言語事象を発見するのが好きです。今わかっていることよりも、これから知りたいことをたくさん語れる研究者でありたいと思います。北野浩章(きたの ひろあき)1963年生/愛知教育大学、AA研共同研究員/言語学主要業績:「フィリピン諸語の品詞――日本語との比較」(影山太郎・沈力編『日中理論言語学の新展望3語彙と品詞』くろしお出版、77-97頁、2012年)●ひとこと:雑務に追われてなかなか実現できないでいる、カパンパンガン語の文法をまとめる仕事に取りかかりたいと思っています。塩原朝子(しおはら あさこ)1970年生/AA研/言語学、インドネシアの言語(特にスンバワ語)主要業績:“How Universal is the Concept of Multi-lingualism?: Minority Language Speakers in Eastern Indonesia”(In Keith Foulcher et al.(eds.), Words in Motion: Language and Discourse in Post-New Order Indonesia, National University of Singapore Press/ ILCAA, 101-126, 2012)●ひとこと:今回の特集はぱらぱらっとめくるだけで島嶼部東南アジア各地の社会言語学的状況がわかるような小冊子、というイメージで企画しました。お役に立てば幸いです。髙野啓太(たかの けいた)1990年生/東京大学大学院人文社会系研究科言語学専門分野/記述言語学主要業績:「テトゥン・ディリ語のアスペクトマーカーona、tihaについて」(卒業論文/東京外国語大学外国語学部、2013年)●ひとこと:ポルトガル語圏での言語のフィールドワークに興味を持っています。まだ詳しく知られてない言語の記述・研究をすることで言語学に貢献したいと思っています。月田尚美(つきだ なおみ)1967年生/愛知県立大学、AA研共同研究員/言語学主要業績:「セデック語」(中川裕監修『日本語の隣人たち』(ニューエクスプレス・スペシャル)、白水社、10-29頁、2009年)●ひとこと:今、exible word classes の本を読んでいます。セデック語の品詞体系をうまく記述できるかもしれません。それから、セデック語のテキスト集の作業を進めたいです。永田雄三(ながた ゆうぞう)1939年生/東洋文庫研究員、元AA研/オスマン帝国史主要業績:『前近代トルコの地方名士――カラオスマンオウル家の研究』(刀水書房、2009年)●ひとこと:地球のど真ん中に位置する中東の歴史研究を通じて、イスラムに無知・無関心で、負のイメージを持つ日本人の知の体系を打ち壊して、真にグローバルな世界観を獲得するための仕事をこれからも続けたい。長津一史(ながつ かずふみ)1968年生/東洋大学/東南アジア研究、文化人類学主要業績:『開発の社会史――東南アジアにみるジェンダー・マイノリティ・境域の動態』(加藤剛と共編著、風響社、2010年)●ひとこと:東南アジアの海民を追っかけて20年近く、訪れた集落は50以上になります。かれらの生き様はいつも魅力的ですが、最近は特にその民族意識の柔軟さにひかれています。出自や出身地ではなく、いまの居場所と言葉を基準とする――こうした民族の語りには、学ぶことが多くあるように思います。 野瀬昌彦(のせ まさひこ)1971年生/滋賀大学、AA研共同研究員/言語学、フィン=ウゴル語、ニューギニアの言語主要業績:『日本語とX語の対照――言語を対照することでわかること』(編著、三恵社、2011年)●ひとこと:パプアニューギニアの村での生活が大変で、いつもつらいつらいと言いながら調査していますが、新しいデータが出てくると幸せです。日本では、現地でのつらさをすっかり忘れ、楽しかったことばかり思い出します。三宅良美(みやけ よしみ)1959年生/秋田大学、AA研共同研究員/言語学主要業績:“Political and cultural aspects of Japanese war compensation in Indonesia”(『言語文化』第23号、161-177頁、2006年)●ひとこと:インドネシアは訪れる毎に発見があります。言語と社会・政治との関係を研究することで人間の言語の普遍性を探ることができるのではないかと信じています。家島彦一(やじま ひこいち)1939年生/東京外国語大学名誉教授、元AA研/イスラーム史、インド洋海域史主要業績:『海域から見た歴史――インド洋と地中海を結ぶ交流史』(名古屋大学出版会、2006年)●ひとこと:海域や人の移動をめぐる研究を続けています。それに関連して、私自身による『イブン・バットゥータの新研究』とイブン・ジュバイル『メッカ巡礼記』(訳注、全3巻)を出版しようと準備を進めていますが、あと5年ほどかかりそうです。山越康裕(やまこし やすひろ)1976年生/AA研/言語学主要業績:『詳しくわかるモンゴル語文法』(白水社、2012年)●ひとこと:フィールドの食事が口に合うということも、フィールドワークの重要なポイントの一つだと考えています。苦手なミルク粥を除いた全ての美味しい食事が調査の活力となっています。PROFILE巻頭特集「島嶼部東南アジア その多言語状況の現在」補遺「多言語社会」の実情をより詳しく知りたい方には、『多言語社会インドネシア――変わりゆく国語、地方語、外国語の諸相』(森山幹弘・塩原朝子編著、めこん、2009年)、シリーズ『世界の言語政策』(河原俊昭編著、くろしお出版、2002年)、同第2集(山本忠行・河原俊昭編著、同、2007年)、同第3集(山本忠行・河原俊昭編、同、2010年)がオススメです。言語調査に関するフィールドワークについて書かれた本には、『北のことばフィールド・ノート――18の言語と文化』(津曲敏郎編著、北海道大学出版会、2003年)があります。
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