フィールドプラス no.11
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巻頭特集「東南アジア大陸部山地民の世界」補遺青木恵理子(あおき えりこ)1953年生/龍谷大学/人類学主要業績:『生を織りなすポエティクス――インドネシア・フローレス島における詩的語りの人類学』(世界思想社、2005年)●ひとこと:1979年、フィールドワークの最初の年。当時フローレスのほとんどの人が罹っていたマラリアで死にかけた。めっけものの命でフローレスに通い続けて得られたことを礎に、詩性と哲学と思想のある活動を続けていきたい。安藤智恵子(あんどう ちえこ)1968年生/京都大学人類進化論研究室教務補佐員/霊長類学、生態学主要業績:Ando. et al.“Progress of habituation of western lowland gorillas and their reaction to observers in Moukalaba-Doudou National Park, Gabon”(African Study Monographs, Suppl.39, pp.55-69, 2008)●ひとこと:15年前にアフリカの自然と人に魅せられて以来、多くの時間をアフリカの地で過ごした。今後もゴリラたちと現地の人たちの幸せを願いつつ、彼らに関わっていきたい。片岡 樹(かたおか たつき)1967年生/京都大学、AA研共同研究員/文化人類学、東南アジア研究主要業績:『タイ山地一神教徒の民族誌――キリスト教徒ラフの国家・民族・文化』(風響社、2007年)●ひとこと:ある場所の端っこに身を置くことで、かえってその場所全体がよく見えてくるということがあります。これからも東南アジアの端っこから東南アジアについて考えていきたいと思っています。黒崎 卓(くろさき たかし)1964年生/一橋大学経済研究所/開発経済学、南アジア経済論主要業績:『貧困と脆弱性の経済分析』(勁草書房、2009年)●ひとこと:研究でもインド、パキスタン、バングラデシュの3国において家計調査・農村調査や社会実験を進めています。最近の現地調査では、郵便局をゆっくり訪ねる時間が取れないことが悩みの種です。黒澤直道(くろさわ なおみち)1970年生/國學院大學、AA研共同研究員/中国民族研究、ナシ学(ナシ族研究)主要業績:『ナシ族の古典文学――『ルバルザ』・情死のトンバ経典』(雄山閣、2011年)●ひとこと:ナシ族の研究は「ナシ学」とも呼ばれ、国際的な広がりをもって展開しています。ナシ族の言語や文学を学ぶことで、ナシ学や現地社会に少しでも貢献できればと思います。小島敬裕(こじま たかひろ)1969年生/京都大学地域研究統合情報センター研究員/文化人類学、上座仏教徒社会研究主要業績:『中国・ミャンマー国境地域の仏教実践――徳宏タイ族の上座仏教と地域社会』(風響社、2011年)●ひとこと:今までミャンマーと中国雲南省徳宏州を中心とする地域で、上座仏教と国家や地域社会の関係について研究してきました。特に国家の周縁部における実践のあり方から、従来の上座仏教徒社会モデルの相対化を目指しています。ダニエルス、クリスチャン(Daniels, Christian/漢語名は唐立)1953年生/AA研/歴史学主要業績:“Blocking the Path of Feral Pigs with Rotten Bamboo: The Role of Upland Peoples in the Crisis of a Tay Polity in Southwest Yunnan, 1792 to 1836”(Southeast Asian Studies, 2(1), 133-170, 2013)●ひとこと:中国雲南省から東南アジア大陸部まで続く広大な地域の歴史を研究している。最近、その地域に居住する強烈な差異を持つ諸民族が今までどのような政治体を組織して中国王朝、ミャンマー王朝や英仏植民地政府など外部勢力からの干渉に対応してきたかを探っている。都留泰作(つる だいさく)1968年生/京都精華大学/マンガ、文化人類学主要業績:「バカピグミーの歌と踊り――演技技法の分析に向けて」(木村大治他編『インタラクションの境界と接続――サル・人・会話研究から』昭和堂、227-229頁、2010年)●ひとこと:現在はマンガ制作・研究で文化人類学の知見を生かす努力を行っている。マンガ連作の新作を準備中。知的障害者に分かりやすい「LLマンガ」、近現代社会におけるマンガと科学技術の関係についての考究を行っている。富田晋介(とみた しんすけ)1973年生/ペンシルバニア州立大学客員研究員、AA研共同研究員/東南アジア地域研究主要業績:「国家介入の変遷と資源利用競合の発生――ラオス北部の土地利用史から」(山田紀彦編『ラオスにおける国民国家建設――理想と現実』アジア経済研究所、321-348頁、2011年)●ひとこと:少なくてもあと3年間は、東南アジア大陸山地部を舞台に繰り広げられてきた人と自然のドラマにどっぷり浸かっていたい。長沼さやか(ながぬま さやか)1976年生/静岡大学/文化人類学、中国地域研究主要業績:『広東の水上居民――珠江デルタ漢族のエスニシティとその変容』(風響社、2010年)●ひとこと:中国の人口の大部分をしめる漢族は、地域ごとに異なる言語や風俗習慣をもっている。それを一つの民族として繋ぐものとは何なのかについて、中国南部地域から考えてゆきたい。中村美奈子(なかむら みなこ)1966年生/お茶の水女子大学/民族舞踊学主要業績:「インドネシア・バリ島の舞踊の動作分析――文理融合型の民族舞踊研究の視点から」(遠藤保子・細川江利子・高野牧子・打越みゆき編著『舞踊学の現在――芸術・民族・教育からのアプローチ』文理閣、178-191頁、2011年)●ひとこと:インドネシア・バリ島の舞踊を主な対象として、舞踊実践に基づく舞踊の研究を行っています。大学では、バリ舞踊の実技授業も担当しています。また、最近は、舞踊譜Labanotationのコンピュータでの編集ツールや、グラフィックツールの開発を情報学の研究者らとの共同研究として行っています。バデノック、ネイサン(Badenoch, Nathan)1970年生/京都大学白眉センター特任准教授/東南アジア地域研究、人類言語学、環境ガバナンス主要業績:“Mountain People in the Muang: Creation and Governance of a Tai Polity in Northern Laos”(Southeast Asian Studies, 2(1), 29-67, 2013)●ひとこと:ラオスの山間部に住む少数民族の人々から現地語(現地の言葉)を教わりながら、人間の「多様性」について考えるのが現在の仕事です。藤波伸嘉(ふじなみ のぶよし)1978年生/AA研研究機関研究員/近代オスマン史主要業績:『オスマン帝国と立憲政――青年トルコ革命における政治、宗教、共同体』(名古屋大学出版会、2011年)●ひとこと:オスマン史を近現代世界史の中に然るべく位置付けること、それを通じて世界史全体の再構築を図ることを目標としながらも、現実には目先の原稿一つを書くのに悪戦苦闘の日々が続いています。 本田 洋(ほんだ ひろし)1963年生/東京大学/社会人類学、韓国朝鮮文化研究主要業績:「韓国の帰農――智異山麓山内地域の事例から」(『韓国朝鮮文化研究』第11号、21-55頁、2012年)●ひとこと:20年あまり、韓国の南原という地域でフィールドワークを続けてきましたが、ここ数年は都市から農村に移住して代案的な生き方を模索する人たちを調べています。家族やコミュニティについても再検討を進めています。真島一郎(まじま いちろう)1962年生/AA研/人類学主要業績:『二〇世紀〈アフリカ〉の個体形成――南北アメリカ・カリブ・アフリカからの問い』(編著、平凡社、2011年)●ひとこと:これまで政治哲学の枠内で論じられてきた『人間の条件』を、文字どおり人間の条件として、人類学的思考に沿って再考する作業に着手しました。そのさい山口昌男の思考は、重要な鍵のひとつとなるように感じています。松本奈穂子(まつもと なほこ)1967年生/東海大学/音楽学、舞踊学主要業績:「舞踊とアイデンティティの多面性・流動性」(前田弘毅編著『多様性と可能性のコーカサス――民族紛争を超えて』北海道大学出版会、185-218頁、2009年)●ひとこと:トルコは古来様々な文明や民族が交差してきた場所で、どのような切り口からでも興味深い背景が広がります。そんなトルコの音楽や舞踊の尽きせぬ魅力をさらに深く探りたいと考えています。峰岸真琴(みねぎし まこと)1956年生/AA研/東南アジア言語学・言語類型論主要業績:“Voluntariness and spontaneity in Thai”(Journal of the Southeast Asian Linguistics Society, 4(2), 77-91, 2012)●ひとこと:「ことばとは何か」という問題は、おそらく人類の歴史が始まる以前から問われ続けてきた問題なのだろう。山口昌男氏がいう、文字が人間を支配することも、逆に、文字を作り出すことで民族の一体感を創造することも、精神のあり方にことばと文字がどれだけ深く結びついているかを考える手がかりになるのだ。巻頭特集をご覧になって東南アジア大陸部山地民の歴史や個別の民族集団に興味をお持ちになった方に、おすすめの図書を紹介します。『ゾミア――脱国家の世界史』ジェームズ・C・スコット著、佐藤仁ほか訳、みすず書房、2013年。『ラフ族の昔話――ビルマ山地少数民族の神話・伝説』チャレ著、片岡樹編訳、雄山閣、2008年(AA研叢書:知られざるアジアの言語文化Ⅱ)。『スガンリの記憶――中国雲南省・ワ族の口頭伝承』山田敦士著、雄山閣、2009年(AA研叢書:知られざるアジアの言語文化Ⅲ)。『雲南大理白族の歴史ものがたり――南詔国の王権伝説と白族の観音説話』立石謙次著、雄山閣、2010年(AA研叢書:知られざるアジアの言語文化Ⅳ)。『ナシ族の古典文学――『ルバルザ』・情死のトンバ経典』黒澤直道著、雄山閣、2011年(AA研叢書:知られざるアジアの言語文化Ⅵ)。32 FIELDPLUS 2014 01 no.11PROFILE

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