フィールドプラス no.11
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〈苅谷康太・髙松洋一 記〉13FIELDPLUS 2014 01 no.11 今回のテーマは「踊る」。西アフリカ、西アジア、東南アジアをフィールドとする3人の研究者がそれぞれの地域の「踊る」に迫ります。 文化人類学者であり、同時に漫画家でもある都留泰作さんは、カメルーンの狩猟採集民バカ・ピグミーの儀礼を研究してきました。闇夜、村の広場に集まった人々は、深い森の奥からやってくる精霊を喜ばせるために合唱し、精霊は、それに応えて踊り出します。都留さんは、文化人類学の視点から、人間の合唱と精霊の踊りが絡み合うこの不可思議な世界の在り方を読み解きます。 音楽学と舞踊学を専門とする松本奈穂子さんは、トルコを中心とした地域の音楽と舞踊を研究しています。様々な民俗舞踊を何歳からでも習得できる社会システムが整備されているというトルコ。複数の手法を組み合わせてそうした民俗舞踊の数々を分析してきた松本さんのエッセイからは、「踊る」という一つの現象に迫る学問的な切り口の多様性が浮かび上がります。 民族舞踊学を専門とする中村美奈子さんは、インドネシア・バリ島の民族舞踊を研究していますが、同時に、バリ舞踊のダンサーでもあります。踊り続けたいがために踊ることを研究課題にしたという中村さん。今回のエッセイには、中村さんのこれまでの研究の道程とともに、研究者の思考と踊り手の感覚を持ち合わせるがゆえに感じる舞踊研究の難しさが綴られています。 それぞれフィールドや視点は異なりますが、踊りをいかに記録するか工夫をこらしている点では共通しています。世界各地の「踊る」を考察してきた3人の研究の軌跡から、「踊る」という現象の普遍性と多様性が垣間見られるはずです。 民族舞踊学

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