3Field+ 2013 07 no.10責任編集 石川博樹 赤道直下に広がる年中高温多湿な熱帯雨林、雨季と乾季の二つの季節があり、草原の中に樹木が点在するサバンナ、ほとんど雨が降らない乾燥した砂漠、標高が高いために冷涼な高原……。 変化に富んだ自然環境が広がるアフリカ大陸は、人類発祥の地であるとともに多くの栽培植物の発祥の地でもある。西アフリカのサバンナではトウジンビエなどの雑穀が、エチオピアの高原ではテフをはじめとする植物が栽培化された。 またこの大陸には、他の大陸から数多くの栽培植物がもたらされた。東南アジアからもたらされたヤムイモ、タロイモ、リョウリバナナ(プランテーン)、南米からもたらされたキャッサバやトウモロコシは、現在人々の暮らしに欠かせないものになっている。 アフリカ大陸の人々は、豊かな自然の恩恵を享受し、あるいは厳しい環境がもたらす苦難に耐えながら、これらの栽培植物を取捨選択し、工夫をこらして多様な食文化を築き上げてきた。 この特集では、エチオピアの高原で人々と発酵食品の深遠な関係に魅了され、その謎を探究してきた研究者、サハラ砂漠のオアシスでナツメヤシを栽培する人々の変わらぬ知恵を学び、変わりゆく生活を見守る研究者、熱帯雨林やサバンナでキャッサバの毒抜き法を調査し、それらが物語る人々の驚嘆すべき創意工夫を解き明かしてきた研究者、西アフリカの歴史を研究しながら、そこに住む人々が創り上げてきた豊饒な食文化にも精通する研究者に寄稿していただいた。 アフリカ各地で長年にわたってフィールドワークを続けてきた研究者たちが解き明かす、アフリカの食に秘められた、人と植物が織り成す歴史と文化をお楽しみください。この特集は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同利用・共同研究課題「歴史的観点から見たサハラ以南アフリカの農業と文化(代表:石川博樹)」(http://www.aa.tufs.ac.jp/~agriculture2010/)の企画として組まれました。illustrations : Takako Ankei
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