FIELD PLUS No.10
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10Field+ 2013 07 no.10街を歩けばチョップバー フィールドで調査をするといっても、1日のうち調査に費やせるのはせいぜい8時間程度だ。となると、残りの16時間は何か他のことをしていることになる。しかし、この16時間を侮ってはいけない。現地の生活・文化を五感で学ぶことができる貴重な時間だからだ。フィールドでの衣食住全ての経験が、直接・間接に自らの学びに活きてくるのである。 私は西アフリカのガーナで学ばせて頂いフィールドワークの恩恵の一つは、その土地の豊かな食文化に接することができる点だ。今回は、筆者が長らくお世話になってきた西アフリカのガーナの食文化について、代表的な料理「フフ」を中心に紹介しよう。て10年以上経つが、これは大きな幸運だったと感じている。音楽、お酒、さらに親切な人々と、これだけでも楽しい滞在には充分だが、これらに加えて、ガーナには種類が豊富で美味しい料理があるのだ。アフリカの料理は一般に主食とシチュー(ソース)で構成されるが、ガーナの場合、主食に用いられる食材だけでも、ヤム、キャッサバ、ココヤムなどのイモ類、そしてプランテーン(料理用バナナ)に加え、メイズ(トウモロコシ)、ソルガム(モロコシ)、コメなどの穀物もある。さらにおかずも、種々の野菜を使ったシチューやソースに、鶏やホロホロ鳥、ヒツジ、ヤギ、ウシ、そして様々な魚などを加えて食べることができる。 今日は調べ物が終わったら何を食べようか。ガーナに滞在中、いつも考えていることである。史料調査のために、平日は朝から図書館や文書館にいることがほとんどだが、時計が11時を過ぎるころになると、開け放たれた窓の外から、「トン、トン」と杵をつく音が聞こえてくる。近くの食堂が昼の料理を作り始めたのだ。庶民向けのこうした食堂は、ガーナでは「チョップバー」と呼ばれる(「チョップ」は「食べる」を意味する)。首都のアクラでも地方でも、街をあるくと必ずチョップバーの看板に行き当たる。たいてい、チョップバーは表通りから少し奥まったところにあるため、慣れない間は入るのにすこしためらうかもしれない。しかし、思い切って入っていって、大きな身体のマダム(女性のご主人)に「マメ・フフオ・1セディ(フフを1セディ分下さい)」などと言えば、美味しいフフにありつくことができる。ガーナのお餅:フフ ガーナには主食用作物の種類が豊富にあると述べたが、コメよりもイモ類やプランガーナのお餅に歴史が映る西アフリカ・ガーナの代表的料理「フフ」 溝辺泰雄みぞべ やすお / 明治大学、AA研共同研究員(1) 市場にてキャッサバとプランテーンを買う。プランテーンは青く熟れていないものを使う。(4) キャッサバはしばらく水に浸しておく。(7) 茹でたプランテーンとキャッサバを杵で潰す。(2)スープに入れる魚も購入。サバや鯛、マグロなど日本と同じような魚が多い。(5) その間に、スープを作る。魚やトマトペーストなどを煮てスープのベースを作る。(8) その後、二人でペアになってお餅と同じようについていく。(3)下ごしらえ:まずプランテーンとキャッサバの皮を剥く。(6) 皮を剥いたキャッサバとプランテーンを20~30分ほど鍋で茹で、お湯を切ってしばらく置く。(9) フフのできあがり。アグジムケープ コーストアクラガーナ(10) スープに入れて右手で食べる。フフを作る

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