母音波形から見た風邪嗄声と喉頭癌嗄声の視覚的特徴
宮本健作(大阪大学人間科学部教授)、芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科修士2年)
日本心理学会第57回大会 (早稲田大学、1993年9月)
概要:九官鳥の喉頭を局所痲酔し、健常機能を一過性に抑制して誘発した実験的嗄声を
参考に、ヒトの風邪嗄声と治療を要する病的嗄声を比較し、両者の特徴的な相違点を検討した。
(1)一過性嗄声では、母音波形の周期性が短期間に再現し、健常音声が回復した。
(2)持続性嗄声では周期性が消失し、嗄声が数週間持続した。これらの結果から、喉頭
がんの2次予防ならびに早期発見指標となる可能性を示唆した。
ピッチ変動特徴からみた健常音声と病的音声の聴取印象
芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科博士1年)、宮本健作(大阪大学人間科学部教授)
日本生理心理学会第12回学術大会 (大阪大学、1994年5月12日)
概要:言語音声聴取時の印象評価において、「聴きとりやすさ」印象の得点が高かった
音声は、発声開始後、短時間でピッチが安定し、定常部の変動が少なかった。一方、こ
の印象得点が低い音声はピッチの変動が激しく、安定するまでに比較的時間を要した。
加えて、ピッチが途切れる無声部分が多く見られた。このようなピッチの時間的変動特
徴は音声の「聴きとりやすさ」印象に関連していると考える。併せて「聴きとりやすさ」
印象の高得点群には健常音声、低得点群には病的嗄声が多く分類されたことから、健常
音声と病的音声の比較検討を試みた。
−健常音声と嗄声の比較−
言語音声の聴取印象を形成する母音の基本的特徴
芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科修士2年)
大阪大学人間科学部修士論文(人科第257号)(1993年1月18日提出)
概要:音声の聴取印象評価語として28語を質問紙調査により選定し、聴取実験を行った結果から、
「高さ」「力」「聴きとりやすさ」「感情」の4因子を抽出し、音声分析結果と対応を試みた。因
子ごとに高得点群、低得点群の8グループに分類し、健常音声ならびに病的音声グループでの特徴
差を検討した結果、時間的な駆動音源振幅の変動およびピッチ変動に明瞭な差が観察された。統計
的検定結果も、ピッチに示される「高さ」要因、ピッチ変動に示される「聴きとりやすさ」要因、
駆動音源振幅の示す「力」要因が影響していることを支持するものとなった。
以上より、波形特徴、ピッチやパワーなどの音響的特徴を観察することで、具体的な特徴を備えた
魅力のある音声を合成する手がかりならびに、音声障害の早期発見や治療に役立てる可能性も示唆
した。
九官鳥の模倣音声と乳幼児喃語における母音波形の特徴
宮本健作(大阪大学人間科学部教授)、芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科博士1年)
日本心理学会第58回大会 (日本大学、1994年10月2日)
概要:九官鳥における「喃語様音声」と乳児の「喃語」ならびに新生児の「産声」の比較した
結果、(1)九官鳥の音声模倣学習とヒトの言語習得の発達初期過程の間には類似性が認められ、
生物学的基盤が存在する。(2)新生児の音声は4カ月〜6カ月齢で明瞭な変化が認められ、
言語習得の出発点といえる、ことを報告した。
ピッチ変動から見た言語音声の聴取印象
芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科博士1年)、宮本健作(大阪大学人間科学部教授)
日本心理学会第58回大会 (日本大学、1994年10月2日)
概要:言語音声聴取時の聴取印象に関して、「高さ」「力」「聴きとりやすさ」「感情」の
4因子が得られたことから、音声分析による特徴との対応を試みた。同時に「聴きとりやすさ」
印象に関しては、ピッチの変動特徴が、健康な音声と病的な音声の間で明らかに異なったこと
から、病的音声を発見する手がかりとして検討した。
ピッチの変動特性を指標とした言語音声の検討
芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科博士1年)
第18回大阪大学BME研究会講演論文集(pp19-22)(大阪大学、1995年2月3日)
概要:話しことば音声を聴取した際の印象評価語として、形容詞28語、さらに因子として
「高さ」「力」「聴きとりやすさ」「感情」の4つを提案した。特に「聴きとりやすさ」因子は
話しことばに特有の因子として、注目した。音響分析的検討から、聴きとりやすさ印象はピッチ
の時間的変動との関連が示唆された。この点を病的音声に適用し、音声障害の早期発見、回復の
検討指標としての可能性を提案した。
ピッチ変動を指標とした一過性嗄声と持続性嗄声の検討
芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科博士2年)
日本生理心理学会第13回学術大会 (佐賀医科大学、1995年5月19日)
概要:病的音声の中でも一過性嗄声(風邪や声の使い過ぎによるかすれ声)と持続性嗄声
(喉頭がんのように重篤で治療を要するかすれ声)の間の差異を調べることを目的として
ピッチ変動特徴を検討した。その結果、一過性嗄声と持続性嗄声では変動の大きさに差が
見られた。さらに、嗄声の治療経過ごとに変動を観察すると、徐々に変動が少なくなり、
安定した部分である定常部の増加が見られた。このことからピッチ変動特徴は声帯の治療
状態を反映した指標となる可能性が示唆された。
病的音声における回復指標としてのピッチ変動特徴
芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科博士2年)
日本心理学会第59回大会 (琉球大学、1995年10月11日)
概要:本研究は、病的音声の聴取印象がどのような音響的特徴によって影響を受けている
のかを調べることを目的とし、病的音声を一過性嗄声と持続性嗄声に分けて両者を比較、
検討した。その結果、一過性嗄声のピッチ変動特徴は比較的不安定であるが、定常部が
観察される一方、持続性嗄声ではピッチ変動が激しく、定常部が非常に少ない傾向が見ら
れた。定常部は、声帯振動の周期性を反映したものであることから、ピッチ変動を視覚的に
観察することで、声帯の治療指標となる可能性を示唆した。
言語音声評価語の属性の検討
芝崎朱美(大阪大学人間科学研究科博士3年)
日本心理学会第60回大会(立教大学、1996年9月12日)
概要:音を評価する聴取実験には、形容詞を評価語として使用することが多いが、
聴取者がそれらの形容詞を、実験者の意図と同じようにとらえているのかを調査するために
質問紙調査を行った。それぞれの形容詞ごとに、(1)物理的特性(2)個性的特徴
(3)感情的特性を7段階で呈示し、評定させた。その結果、(1)(2)については従来
の音楽心理学の結果を支持するものとなったが、(3)については、(1)(2)との相関
が高いものや、実験者の意図とは異なる判断も見られる結果となった。