サンスクリット語とパーリ語ってどういう言葉ですか?

インドで古典語として使われている言葉がサンスクリット語です。普通の人の話す日常語はヒンディー語とかタミル語とか沢山ありますが、古くからの宗教作品(聖典)や学問的な作品のためには、サンスクリット語を使うのが近代以前は普通のことでした。そのためにサンスクリット語を日常的に使う人はごく一部の伝統的な学者でしかないのにインド共和国の公用語としての地位が与えられています。

サンスクリット語はインド・ヨーロッパ諸語に属し、ギリシャ語やラテン語とも近い言葉です。紀元前12世紀頃のヴェーダという聖典の言葉もサンスクリット語の古い形ですし、紀元前4世紀頃からあまり形を変えずに近代まで使われてきました。ヒンドゥー教の聖典のほかに大乗仏教の聖典もサンスクリット語で書かれています。サンスクリット語は、デーヴァナーガリー文字、グランタ文字、テルグ文字、カンナダ文字などの多くの文字で書かれます。

パーリ語は、上座部仏教(初期仏典に基盤を置く仏教[日本や中国の仏教は大乗仏典に基盤を置くので大乗仏教と呼ばれます])の古典語です。釈迦がなくなってのち、その教えをまとめるために用いられた言葉で、紀元前3世紀頃の北インドの言葉が聖典用語として定着されたものです。サンスクリット語の系譜をひく言葉ですが、音声や文法はサンスクリット語に比べて平易なものとなっています。スリランカからタイに至る上座部仏教諸国で仏教経典(南伝大蔵経)の言葉として仏教僧たちによって用いられてきました。パーリ語は、主に、シンハラ文字、ビルマ文字、クメール文字、タイ文字によって書かれます。
(回答:高島淳)

---「アジア文字曼荼羅~インド系文字の旅」(2002年6月28日~2002年8月2日、会期終了)ウェブサイト・みんなの広場Q&Aより引用(サイトはまだご覧になっていただけます)