はじめに
「タロ taro」という語は Colocasia, Alocasia, Xanthosoma, Cyrtosperma の4つの属を含む Araceae 科の植物を指す総称として用いられる(Wang 1983)。ここで報告するタロのフィジー・カンダブ島ワイレブ村における現地(種)名、分類、利用法は、1998年3月に行った二週間の現地調査によるものである。

フィジーのタロイモ栽培の概要

 フィジー本島である Viti Levu 島と二番目に大きな島 Vanua Levu は火山性であり、中央部はかなり急な山地になっている。これらの山地と南東貿易風との組み合わせにより、フィジーにおいては一般に、これらの島の中央部を結んだ線の北西側は乾燥地域、南東側は降雨量の多い地域となっている(地図参照)。タロ栽培は降雨量の多い地域でさかんであるが、コロニビア農業試験場の Cuquma 氏によると、とくにコロ島、タベウニ島、そしてカンダブ島がタロ栽培のさかんな地域となっており、前二者でフィジーにおける商業用のタロ生産の80%をしめるとのことである。

--> 地図
--> 主要都市の降雨量と気温


調査地ワイレブ村について

 ワイレブ村はフィジー本島(ビチレブ島)の南に位置するカンダブ島のほぼ中央部にあり、海辺に面したなだらかな斜面にそった約30戸の家からなる。年間を通じて高温多湿で、特に3月から4月にかけてはどしゃぶりの日がつづくことが多い。滞在中(3月上旬の二週間)もほとんど毎日、激しい雨が降り続いた。

--> 地図
--> 年間降雨量と平均気温


ワイレブ村のタロイモ栽培の概要
ワイレブ村では、農作物は通常の畑(drawe)または水田(laua)で育てられる。通常の畑ではタロを含む農作物一般が耕作されるのに対し、水田では Colocasia タロのみを栽培する。


畑におけるタロ栽培
写真資料 (全景1/全景2)

 通常の畑は、男性各人それぞれが所有しており、村(居住地)から歩いて約15分から1時間のところに分布している。例えば、今回調査に協力していただいた Leqeti 家では、父親の Kitione の畑が村から歩いて15分程度のところ、長男の Rupeni の畑は30分程度、末男の畑は1時間程度の場所にあるとのことだった。これら畑のうち、村から比較的近い畑へは同じ家族の女性も頻繁に行くが、その主な目的は料理素材の収穫であり、開墾や植え付けを行う男性の仕事とは異なっている。
Rupeni Leqeti によると、畑への植え付けの時季はとくに決まってはおらず、収穫の都度、その葉柄下部に根茎の上部を一部残して切った葉柄基部(部位名称のページ参照)を植え付けるとのことである。

水田での栽培
写真資料(全景1〜3/水門/植え付け用苗)

 タロのうち suli (Colocasia esculenta)と呼ばれるものは、水田でも栽培される。 水田は村の所有地であり、季節のはじめの整備は村の男性成員全員で行う。そのなかの区画はそれぞれ家族単位で割り当てられている。村にはタロの水田がいくつかあるということで、写真資料は村から徒歩約20分のところにあるもの。
 なお、水田で栽培される品種については Rupeni に質問したところ「どの種類でも植えられる」ということであった。実際に植えられている品種についてはさらに調査が必要である。



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