長い下降調 a:a [ ̄\:_] 長い上昇調 a:a[_:/ ̄]、a:a[_/: ̄]
短い下降調 aa [ ̄\_] 短い上昇調 aa[_/ ̄]
アクセントは i,e,a,o,u の5個の母音,及び子音間の r にかかり、いずれも長短の別を有するが、母音の弱化などの質の変化は小さく、弁別的ではない。位置は基本的に自由であるが、通事的変化等の結果として、下降調は第1音節のみ、上昇調は最終音節を除く音節に現れるという制限がある。
このアクセントの音韻解釈については、これまでに多くの研究者によりアプローチがなされているが、ピッチが関与することから、我国においても注目されてきた、特に、故服部四郎氏とパヴレ・イヴィッチ氏の交流は、ピッチの関与を重視する見解の発展にとって重要であったといえる。報告者も、短母音を1拍とすると同拍内で高低の移動は起こらず、各拍について「高」「抵」いずれかのピッチが規定できることから、ピッチの種類とその位置によって音韻解釈を施すことができる、という考え方に基本的に賛成である。
本報告ではこうした事情を説明した上で、4アクセント・システムの比較的明確なことで知られるノヴィ・サド方言のネイティヴ・スピーカーに協力を要請し、ミニマル・ペア等の聞き取りを参加者と共に試み、さらに今後の研究の方向,可能性等について検討した。