カレン系言語の分類に関する諸問題

新谷忠彦


 カレン系言語はこれまで科学的データが乏しく、その実体はあまりよく分かっていな かった。その分類に関しても、これまで何人かの人が試みてはいるものの、きわめて断 片的で少ないデータに基づくもので、空想の域を出ていない。

 本報告者は1974年以来、シャン文化圏研究の一環として、ミャオ・ヤオ諸語やワ系言 語などとともに、カレン系言語に注目し、長期間にわたる断続的な調査を続けて来た。 その結果、現在までに16のカレン系言語について、一定の科学的データを集めることに 成功した。これらの言語の大部分は、これまでほとんどデータのなかった言語で、当該 分野で世界の頂点に立つことになった。また、集められたデータの解析から、これまで 懸案となっていたいくつもの問題に解決の糸口が見えてくると共に、一般言語学理論に も多くのインパクトを与える可能性が出てきた。