言語学入門書案内

以下は言語学関係の講義に関連する文献です。

言語類型論関係

コムリー. 1992. 『言語普遍性と言語類型論』[松本克己,山本秀樹訳], ひつじ書房.
角田太作. 1991. 『世界の言語と日本語』, くろしお出版.
ベイカー. 2003. 『言語のレシピ --- 多様性にひそむ普遍性をもとめて』[郡司 隆男 訳]岩波書店.
生成文法の観点からの類型論への格好の入門書です。東南アジア大陸部の諸言語については,その主題卓立性が無視されている (p.230) のがちょっと悲しい。なお,タイ語は一般にオーストロ・アジア語族には含められず (p.79) タイ・カダイあるいはオーストロタイ諸語に含められます。「ベトナム語」は東アジアには存在せず (p.105),東南アジアの「ヴェトナム語」 (p.179) と同じ言語を指します。なお,こういった細かい事実関係の誤りは,同書の価値をいささかも損ねるものではありません。(「東京と大阪は違う」という私の話を聞いたアメリカ人の友人は,「こんなに狭い国に東とか西とかあるのか?」と尋ねました。)
宮岡伯人.2002.『語とはなにか --- エスキモー語から日本語をみる』. 三省堂.
日本語の用言複合体をどう分析すべきか?形態論と統語論の境界はどこにあるのか?日本語研究者にはぜひ読んでもらいたいものです。
宮岡伯人(編)1992. 『北の言語:類型と歴史』. 三省堂.

一般言語学関係

バンヴェニスト 1983.『一般言語学の諸問題』[河村正夫他訳]. みすず書房.
改めて読み直しましたが,どの論文もすばらしいと思います。
加賀野井秀一 2004. 『知の教科書 ソシュール』講談社.
ソシュールに始まる一般言語学と,その知的波及効果である構造主義とが,軽い読み物として紹介されています。
宮岡伯人 2002.『語とはなにか --- エスキモー語から日本語をみる』 三省堂.
エスキモー語やフィールド言語学に関心がない人であっても,言語理論,類型論,日本語研究などを専攻する人は必読の書だと思います。日本語学,日本の言語学に欠けているものは何かを,鋭く指摘しています。
風間喜代三他 『言語学改訂版』 東大出版会.
言語学一般に関する基本的な解説書です。
サピア著 『言語』 岩波文庫.
いまなお古びない洞察に富む名著です。
『ソシュール小事典』 大修館書店.
ド・ソシュールの『一般言語学講義』を読むために参考になります。
亀井孝,河野六郎,千野栄一編著,『言語学大辞典』 三省堂.
一般言語学,記述言語学の集大成ともいうべき本です。第6巻「術語編」は必携(高いでしょうが)。
『言語の科学』 岩波書店.
最近の言語に関する研究の集大成的な案内書です。
町田健,『言語学が好きになる本』 アルク.
好きになるといいんですが,バランスのとれた入門書です。
町田健,『生成文法がわかる本』 アルク.
わかるといいんですが,基本的な考え方を知るために。
柴谷方良他,『言語の構造(意味・統語編,音声・音韻編)』 くろしお出版。
生成文法(初期)の考え方を学ぶために今も使えます。

言語発達・障害について

飯高京子, 若葉陽子, 長崎勤(編). 1988.『ことばの発達の障害とその指導』,『講座 言語障害児の診断と指導』第2巻,学苑社.
岩立志津夫,小椋たみ子編著. 2002. 『言語発達とその支援』,シリーズ『臨床発達心理学』4, ミネルヴァ書房.
岡本夏木. 1985. 『ことばと発達』, 岩波新書 289.
発達心理学の立場からのもの。乳幼児期から小学校低学年期にかけて,生活の中で現実経験とよりそいながら使用されていく「一次的ことば」と,学校生活場面,特に授業という組織化された意図的教育にさらされて得られる「二次的ことば」を区別する。
大石敬子(編). 2001. 『ことばの障害の評価と指導』,大修館書店.
I ことばの発達の評価:
II ことばの発達障害の指導法:第5章(大井学)「語用論的アプローチ」,特異性言語障害,自閉症,アスペルガー障害を含む言語障害へのアプローチ。
III 支援の実際:
小林春美、佐々木正人(編). 1997. 『子どもたちの言語獲得』,大修館書店.
桐谷滋(編). 1999.『ことばの獲得』『ことばと心の発達』,第2巻,ミネルヴァ書房.
紺野加奈江. 2001. 『失語症言語治療の基礎 診断法から治療理論まで』,診断と治療社.
中島誠,岡本夏木,村井潤一. 1999.『ことばと認知の発達』,シリーズ『人間の発達』7, 東京大学出版会.
波多野和夫他. 2002.『言語聴覚士のための失語症学』, 医歯薬出版.
オブラー&ジュァロー. 2002.『言語と脳 --- 神経言語学入門』, 新曜社.

学習一般について

レナード ムロディナウ,『ファインマンさん最後の授業』 メディアファクトリー 2004年.
科学研究とは,研究を志すとはどういうことなのか,若い人にお勧め。(「そもそも研究業績を上げることが目的だったのではなく,ことばの美しさ,不思議さに魅せられていたはずだったのに」という,初心を忘れた中年にも。)それにしてもファインマンさんは,なんて魅力的な人だったんだろう。
森 靖雄 1995.『大学生の学習テクニック』 大月書店,2060円 (ISBN4-272-41082-2 C0033)