インドの言語研究

P.O. Bodding's Santal Dictionary


解説:
P.O. Bodding(1868-1936) は、インドのビハール州南部で活動した宣教師で、サンタル族の言語と文化の調査をも行いました.
サンタル語はインドのビハール州、オリッサ州、西ベンガル州などにまたがって用いられています.自称1000万人近くの人口を持ち,インド最大の少数民族の言語です.
彼の Santal Dictionary はサンタル人の言語文化研究の記念碑的な業績です.
2007年11月現在、この辞典のデータのテキスト入力と2回の校正が終了しました.
サンタル語はインド東部の州を跨いで分布しているため、各州の主要言語の文字であるデーヴァナーガリー,オリヤー,ベンガル文字で書かれています.キリスト教宣教師の考案したローマ字表記も行われています.
さらにこの他にも、オリッサ州のあるサンタル人が、ある時神の啓示を受けて作り出した「Ol Chiki」(オルチキ)文字というのも用いられます.サンタル語は計5種類の文字体系で書かれることになります. .
Ol はサンタル語で「書く」Chiki は「字」に当たり、「書き文字」ということになります.この文字は、発音する時の口の形その他を象徴化したもので、音素文字であるところがインドで一般的な音節文字とは異なっています. 単語は左から右に横書きで、分かち書きされます. 西ベンガル州などでは、この文字を使ってパンフレット、定期雑誌などが出版されています. インドの少数民族の中では、ローマ字書きはキリスト教と結びついているので、嫌われる場合があります.

ビハール州のサンタル人、ムンダ人を中心としたオーストロアジア系のコミュニティーは、「ジャルカンド州」(Jharkhand) を獲得し、サンタル語は州の重要な言語となりました.サンタル語表記にどの文字を用いるかについて、コミュニティー内部で議論した結果、オルチキは民族の一体性の象徴的意味を込めて、デーヴァナーガリーを始めとする各種文字と併記されることになったということです.


Mar 31, 2008