日本人の言語能力発達過程のコーパス化

• このプロジェクトでは，飯高京子元上智大学教授のご協力を得て，健常児（男児）の発声発話活動の約６年間の縦断的発達記録の録音（オープンリールおよびカセットテープ）をデジタル化している。提供された録音データは，1969年誕生の男児の生後６ヶ月から少年期の６歳時に至るまで，毎月一定時間のやりとりを録音したものである。このうち６ヶ月から24ヶ月までは隔週で，それ以降72ヶ月までは毎月の録音である。
• 公開に関しては，関係者から許諾状を取得しているが，プライバシーに配慮し，研究者を対象とした限定的な公開に留める。
• 2010年度にはIRCのプロジェクトとしての支援を受け，音声データの文字起こしを進めている。
• 今後の研究の方向性： 音声資料のデジタル化，文字情報化を進めるとともに，音声・文字両データを一括して分析するためのシステム開発（Multi-Dimensional Annotation System: MDAS, 担当：佐藤大和東外大グローバルCOEプログラム特任教授）を進め，母語の獲得や言語障害の分析を言語学的に行うための機能タグについての研究を進める。

関連研究発表

• 佐藤大和・峰岸真琴 「多次元アノテーションに基づく多言語分析ツールの構築」『情報処理学会研究報告』2011-CH-89, pp.25--40, 2011年1月22日.
• 峰岸真琴 「コミュニケーション障害の言語学的記述と評価」『コミュニケーション障害学』 No.2 (Vol.22), pp.93--99. 2005.8.31.
• 峰岸真琴 「脳科学は「文法」のありかを特定できるか？：一般言語学の立場から」『認知神経科学』Vol.7, No.1, pp.36-44. 2005.3.
• 峰岸真琴 「コミュニケーション障害」記述・評価への言語学からの貢献」月刊『言語』No.12(Vol.33), pp.62--69, 2004.12.
• 峰岸真琴 「言語学の可能性」. 『言語聴覚士に対する言語学・音声学の再教育』活動および調査研究報告書 pp.132-136 , 東京外国語大学言語学・音声学研究室. 2003.3.

以下，サンプルとしてプレインのテキストデータを示す。

☆c015_a.mp3（63分）（C:男児，M：母，F:父，GM:祖母）1972･1･17全日録音 その5（一部），〓は不明瞭で聞き取り不能な部分を示す。

C：僕、もう出た。〓ユウ〓君、僕、日曜日。出たんよ。でも何かリンゴ要らん。＜無言0：46〜2：18＞はい。もう一個。ヘイ・ジュース。ミックスジュース・ミー。ヘイ、ミッキー、ミジュアル。見て、見て。見て、ミッキー。ミッション持って、それも持って。ミッキー。インベー、インミッショナル。
M：僕、何してんの。何してんの。
C：ミッキー、ミジュアル。（笑）。ミクメジ、ミクミルソウ。
M：はっ？
C：ただもう。
GM：これは大きいね。
C：もうイイラルレイ、イブリアル、まだまだ。
M：まだまだ見えない、見えない。
C：まだ見えない。
GM：見えないでしょう。
C：〓イーブイイーブイ、イーヒッン。イーツリカイシュラン、イジイジュシイ（笑）。アクリイ。〓
M：熱い熱い。よし、もうお父さん、来たら。ね。
C：（笑）。うん。で、きょう、ミッキーミッキー。イヤルネ。うん。嫌だ。ミッキー見る（笑）。
GM：ああ、ああ。きょう、あー、負けた。あー、負けた（笑）。
M：ほんとは何回やっても。
GM：そうなんよ。
C：（笑）
M：あらま。あらま。
C：（笑）
M：ばあちゃんの毛糸を猫みたいに。
GM：そうですね。
C：うん。はっ。
M：猫みたいに巻き付けちゃった？
GM：あー。
C：ああ、何でや。
GM：あーあ。
C：ね。
M：うん。
GM：ね。うん（笑）。はいはいはい。ウサギさん。ウサギさん。ウッサギさん。はい。
C：パパにたん。
GM：ウサギさん。ウサギさん。
C：ウタギちゃん。
GM：ウサギさん。
C：ウタギさーん。
M：ウサギさーんじゃない。
C：うん。できない。うん。あー、やった。やーたよ。
GM：やったね。
C：やった。駄目。
GM：やったね。
C：やったね。
GM：やったね。
C：ばあさん、ばあ。
GM：えっ？　ばあちゃん、食べないよ。そんなお豆、生だもんね。煮てからね。あら。
C：ぼーしだね。帽子だね。
GM：はっ？　あー、帽子だね。
C：帽子だね。
GM：帽子だね。
M：帽子だね。
C：これをかぶる。ママにして。
M：いいなんだ。
GM：そう。
C：行く。ママ行く。帽子、外、見る。
GM：きょうはあれですか。次の子もやるんですか。
M：あー、さあ、まあ、まだ、それはまた相談しなきゃあ、ならないんですけど。
GM：あー、そうですか。
M：大変じゃあ。うちの子はいいけども、この〓キンテテマ〓。
GM：うん？
M：〓キンテン〓の量をかきだして、その前に。
GM：あー、と、取るだけじゃないからね。
C：はい。だから。
GM：それは大変。
C：うん。それは大変。ね。
GM：そこの手前でじゃあ、見て。
C：こうね。
M：高校生の子のほうが早いでしょう？　どの子よりまだ。
C：うーんか。
GM：何が？
C：お兄が。
M：ね、上がお兄ちゃんがいれば。
GM：ああ、言葉がね。
M：はい。最初はさ、一人目の子は割と言葉が遅いって聞くけど、この子、早かったんですね。
GM：ねえ、でも、早いっていったら早いんでしょうね。
M：個人差はやっぱりあるんですね。大体、男の子のほうが遅いって聞くけど。
GM：そうですね。
M：〓サド〓の子みたいに２歳ぐらいまで、ほとんどの方は毎度。
GM：そうですか。
M：２歳過ぎてから急にしゃべりだして、まあ、今、うちのあれが、やっぱり、営業部の。
C：クリシブテ。
M：影営業部のおやじが息子だったら、こんなにしゃべるのが一番でしょうか。
C：うん、うれしいよ。
M：ああ、よくしゃべるって感心して。
C：そうなんか。
M：うん。（％以下続く）