結合文字字形の分類
現行のデーヴァナーガリー文字の結合文字を、 形状をもとに分類すると、以下の4種類になる。
# タイプ 合成プロセス 転写記号
1 横型結合文字 प्य + + pya
2 縦型結合文字 ड्ड + + DDa
3 独立結合文字 क्ष + + k$a
4 virama付き結合文字 ड्‌ड + + DDa
子音 {r} が前後にくる場合の特別な結合文字も縦型結合文字に含めて考えることができる。 下の表の C は任意の子音をあらわす。
タイプ 合成プロセス 転写記号
rC 縦型結合文字 र्प + + rpa
Cr 縦型結合文字 प्र + + pra

デーヴァナーガリー文字の 結合文字のヴァリアントを説明するために、 子音字に含まれている「縦棒」 डंडा (danda) の理解が鍵になる。 この「縦棒」は北インド系文字に程度の差はあれ見られる字形の特徴である。 しかしデーヴァナーガリー文字の場合、 その結果として「縦棒」 (danda) を取り除いた字形(半子音字)が派生し 同時にそれに子音のみをあらわす機能をもたせたことで、 デーヴァナーガリー文字の結合文字の様相が他のインド系文字と大きく変わっていった経緯がある。全インド系文字の歴史的な変遷からいえば、 縦型結合文字が主流であり、独立結合文字はその過程でできた 地方固有の字形であると考えられる。
下の表は、デーヴァナーガリー文字の子音字を、 「縦棒」を含むか [+danda] 含まないか [-danda]、また含むとしたら どの位置かによって分類したものである。 ()内は 半子音字をあらわす。
+/- 位置
+danda 末尾 ख (ख्‍), ग (ग्‍), घ (घ्‍), च (च्‍), ज (ज्‍), झ (झ्‍), ञ (ञ्‍), ण (ण्‍), त (त्‍), थ (थ्‍), ध (ध्‍), न (न्‍), प (प्‍), ब (ब्‍), भ (भ्‍), म (म्‍), य (य्‍), ल (ल्‍), व (व्‍), श (श्‍), ष (ष्‍), स (स्‍) 22
中央 क (क्‍), फ (फ्‍) 2
-danda - ङ, छ, ट, ठ, ड, ढ, द, र, ह 9

この「縦棒」の有無によって分類される子音字が隣あって結合文字を作る場合、 理論的に次の4つの場合がありえる。
following
C[+danda] C[-danda]
preceding C[+danda] 1 2
C[-danda] 3 4
1から4までの組み合わせの例は以下のとおり。
# 組み合わせ 転写記号 規則
1 C[+danda]C[+danda] + + = प्य pya 横型結合文字
(半子音字 प्‍ + 子音字 )
2 C[+danda]C[-danda] + + = ष्ट $Ta 横型結合文字
(半子音字 ष्‍ + 子音字 )
3 C[-danda]C[+danda] + + = द्ग dga 縦型結合文字 (द्ग)
or
virama付き結合文字
(द् )
4 C[-danda]C[-danda] + + = ड्ड DDa 縦型結合文字 (ड्ड)
or
virama付き結合文字
(ड् )

この表から、組み合わせ 1と2、組み合わせ3と4はそれぞれ共通の振る舞いをすること、 つまり先頭の子音字が C[+danda] か C[-danda] かで結合文字の字形タイプが分類できることがわかる。下の表はこれを整理したものである。
C[+danda]C 横型結合文字( 半子音字 + 子音字)
C[-danda]C 縦型結合文字
or
virama( ) 付き結合文字

以下の表は、レベルごとの字形割り当てを示したものである。 便宜上2子音連続の場合のみを扱っている。 ちなみに、ヒンディー語などの現代語にはレベル 2 を、 サンスクリットなどの古典語にはレベル 3 を推奨する。 規則的ではあるが認められない字形を含んでいるレベル 1 は 教育上の目的(教科書など)などに使用するためにあえて開発した。 すべての結合文字が「正しいのだが自然ではない」virama 付きのレベル(仮にレベル 0とする)は、どのレベル(つまりどのフォント)であっても 転写記号入力時に子音と子音の間に + (強制分離記号)を挿入することにより実現できるツールを開発した。
Level 1 Level 2 Level 3
C[+danda]C すべて、横型 原則、横型 原則、横型
e.g.
py
e.g.
+ +
e.g.
प्य
e.g.
प्य
e.g.
प्य
特例 Cr e.g.
+ +
e.g.
*प्र 横型
e.g.
प्र 縦型
e.g.
प्र 縦型
k$ + + *क्ष 横型 क्ष 独立 क्ष 独立
j~ + + *ज्ञ 横型 ज्ञ 独立 ज्ञ 独立
kt + + क्त क्त 独立 क्त 独立
tt + + त्त त्त 独立 त्त 独立
kk + + क्क क्क क्क 縦型
kl + + क्ल क्ल क्ल 縦型
kv + + क्व क्व क्व 縦型
gn + + ग्न ग्न ग्न 縦型
cc + + च्च च्च च्च 縦型
jj + + ज्ज ज्ज ज्ज 縦型
~c + + ञ्च ञ्च ञ्च 縦型
~j + + ञ्ज ञ्ज ञ्ज 縦型
nn + + न्न न्न न्न 縦型
pt + + प्त प्त प्त 縦型
pl + + प्ल प्ल प्ल 縦型
p'l + + फ्ल फ्ल फ्ल 縦型
ll + + ल्ल ल्ल ल्ल 縦型
Sc + + श्च श्च श्च 縦型
Sn + + श्न श्न श्न 縦型
Sl + + श्ल श्ल श्ल 縦型
Sv + + श्व श्व श्व 縦型
$T + + ष्ट ष्ट ष्ट 縦型
$T' + + ष्ठ ष्ठ ष्ठ 縦型
Level 1 Level 2 Level 3
C[-danda]C 原則、virama 付き 原則、縦型 原則、縦型
e.g.
DD
e.g.
+ +
e.g.
ड्‌ड
e.g.
ड्ड
e.g.
ड्ड
特例 Cr e.g.
+ +
e.g.
द्र 縦型
e.g.
द्र 縦型
e.g.
द्र 縦型
Cy e.g.
+ +
e.g.
ड्‌य
e.g.
ड्य 変則横型
e.g.
ड्य 変則横型
dy + + द्‌य द्य 独立 द्य 独立
hy + + ह्‌य ह्य 変則横型 ह्य 変則横型
hm + + ह्‌म ह्म 変則横型 ह्म 変則横型