II. ダン語口頭伝承の世界


伝承09. ゴをめぐる戦争

 ニアプルー村 Niaaplooのゴの結社長は、代々“ボバゴア Bhobhagoa”と呼ばれてきた。“ゴとともに生まれた”という意味だ。ニアプルー村とクエプルー村 Kueplooは、むかしゴのことがらで争った。それでニアプルーが勝ち、今はニアプルーにゴがある。クエプルーの者たちも「われわれはわれわれでゴを持とう」と話し合った。それでクエプルー村もクロジアレ村 Kroziedhoも、ゴの荷物を買ったのだ。

 ダン族の大祖先マーヴァがゴの結社長だった遠いむかし、マーヴァは、ヴァ山 Vaにくらしていたわれわれの祖先にも、ゴのことがらをもたらしていた。われわれはそのころから、白シカ veの肉を食べないことにしていたのだ。

 ヴァ山の頂きには、今のクエプルー村、メアントゥオ村 Meantuo、クロジアレ村、ビアントゥオ村 Biantuoの祖先がおちついていた。これに対して、今のニアプルー村、ビエトゥオ村 Biotuo、ウヤトゥオ村 Wietuoの祖先たちは、ヴァ山にくらしていなかった。彼らはドローントゥオ村 Droontuoやボアドゥ村 Gboadhoにくらしていた。この二つは、今はない村だ。

 このうちボアドゥ村に、むかしトゥウヨコウネーカ Teuyokowuneekaという、ほら吹き男がいた。ほら吹きトゥウは、あるときヴァ山の頂きに出かけて、今のクロジアレ村の祖先トアブルー Toableeに「あー、あなたはぼうっと座っているものだから、もうゴではなくなってしまいました。ゴの結社長はドローントゥオ村にいますからね」とほらを吹いた。ほら吹きトゥウは、それからビアントゥオ村の祖先チウギバオン Tiegigbaon、クエプルー村の祖先スープレ Seeple、メアントゥオ村の祖先で戦士のフリージアンシウ Fliiziansioや、トログルー村 Trooglooの祖先のところにも立ち寄った。そして「ああ、あなたがぼうっと座っているものだから。どうして座っているのでしょう、あなたはもうゴではなくなったというのにね。ゴはドローントゥオ村にありますからねえ」とふれまわったのだ。

 そうしてトゥウは、ボアドゥ村にもどってきた。そしてこんどは村の長老ニアブラー Niagblaa に、ゴ結社がヴァ山の上にあることを告げて、悔しがってみせた。村の者たちはこの知らせを聞いて、怒りはじめた。ドローントゥオ村の者たちも怒りはじめた。とうとうボン Bonという男がヴァ山の頂きまで行って、そこにおちついている者たちと戦争を始めてしまったのだ。この戦いで、ボンは殺された。

 村から村に嘘をふれまわったトゥウのしわざで、戦争がはじまってしまった。白人がまだこの土地にやってこないころのことだ。ヴァ山の戦士たちもドローントゥオ村まで出向くようになって、戦いはひどくなっていった。

 このときドローントゥオ村には、ラフィアヤシの柵で守られた聖なるドーの大木があった。ヴァ山の戦士たちは、戦いのときにこの木がじゃまだから伐り倒すことにした。彼らはヴェイトゥオ村に使いの者をよこして、斧を借りた。彼らは斧をふるった。斧をふるった。しかしドーの木が今にも倒れようとしたちょうどそのとき、一匹のマルグイヤが木を伝って降りてきた。そしてマルグイヤが木をたたくと、木は倒れるのをやめて、もと通りに立ってしまった。

 ドローントゥオ村での戦争には、ロードゥの土地のベープルー村 Bheeplooからチアピーズという戦士がやってきていた。チアピーズはドローントゥオの者たちに「いくさが激しくなったのだから、村を離れた方がよい」と忠告した。彼らが村を立ち去るとき、チアピーズはサルのガオgaoの皮でできた帯を体につけていたのだが、その帯を切ってドローントゥオの者たちと分かち合った。するとちょうどその瞬間、ドーの木はすっかり倒れてしまったのだ。

 ドローントゥオの人々は、たいせつなゴの荷物を持っていたものだから、カヴァリー川の向こうのゲレ族の土地まで逃げていった。長老のニアブラーはゲレの土地に村を建てた。その村は、ゲレのことばでガヤ Gayaとか、ネアオ・ブリ・ガヤ Neao Bli Gayaと呼ばれていた村だ。

 さて、一方のヴァ山の者たちのなかには、グウデー Geudeeという卜占師がいた。彼らにはグウデーがついていたから、ドローントゥオとの戦争にも勝っていたのだ。グウデーは、ミウmieという呼び名のウシを飼っていた。だがミウは、あるときグウデーが村をあけているあいだに、一人の年老いた女を殺してしまった。そこで村の者たちはミウを殺したのだ。グウデーが村に帰ってみると、ウシがいない。彼は村の者たちに「どうして、わたしのかわいいミウを殺したのだ」と問いつめた。村の者たちは「こんな悪いけものをどうして殺さずにいられようか」とこたえた。グウデーは怒った。

 ところで、むかしニワトリは、人の目に見えないものが見える眼をもっていた。ヴァ山の者たちも、こうしたニワトリを飼っていたから、ドローントゥオとのいくさに力をふるっていたのだ。グウデーは怒りにまかせて彼らのニワトリを殺した。そして殺されたミウの肉を持って、カヴァリー川の向こうのニアブラーの村に現れた。「わが父よ、これがあなたのために持ってきたおかずです」と肉をさしだしながら、彼はこう言った。「ヴァの者たちは、わたしがいたからこそ、あなた方を襲うこともできました。なのに、彼らはこのわたしを辱めてしまった。ゴの結社長になるべきは、あなたです。わたしがついているからには、あなたの戦士もこれから無傷で戦うことでしょう」。ドローントゥオの者たちがヴァ山の者たちに勝ったのは、それからのことだった。

 まずドローントゥオの者たちは、長老ニアブラーのもとで“誓い”を食べた。「われらの土地を立ち去って、われらの秘密をヴァ山の者たちに漏らしてしまうような者は、死ぬがよい」と“誓い”を食べたのだ。“誓い”をすませると、彼らは女たちに向かって、コメと干し肉を少しづつ出しあうよう命じた。ヴァの者たちを襲うための技をつかったのだ。

 長老のニアブラーは女たちにこう言った。「おまえたちはこれからヴァ山に行って、一人一人がヴァの男たちの愛人となるのだ。そうして、こう言いふらすのだ。ニアブラーは二度とこの土地にもどれないと言っていた。ゴのことがらで負けてしまったと言っていたとな。そうしてヴァ山で夜を六度すごすのだ。七度めの夜、わたしはおまえたちのところへ行く」。女たちは立ち去った。女たちは言われたとおりのことをヴァ山の者たちに言いふらした。言われたとおりに、ヴァの男たちの愛人になったというわけだ。

 七日めの朝はやく、ニアブラーひきいる戦士たちが、ヴァ山の頂きにやってきた。ニアブラーは女たちに「六日めの晩には、そろそろ帰りますと言って村を離れるのだ。われわれが七日めにおまえたちをまちがって殺さないようにな」と言っていた。七日めの朝はやく、こうして女たちは彼らと落ち合った。彼らは女たちに早く立ち去れと命ずると、やにわに村を襲いはじめたのだ。

 この戦いのために、ヴァの者たちはとうとう山を降りて散らばった。そうして彼らは、今のクエプルー村、メアントゥオ村、トログルー村などをこの土地に建てたというわけなのだ。

(Zoo Nioongbo/ニアフォトゥオ村出身の古老/1989.07.14/Glogleu 村/未転写)



語句

ダンの大祖先マーヴァ:伝承27参照
ヴァ山:伝承22参照
白シカの肉を食べない:ゴに由来するこの土地の食物禁忌。“白シカ”は、マックスウェル・ダイカーの現地名
マルグイヤ margouillat:アガマトカゲ
ガオ:伝承37参照

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