II. ダン語口頭伝承の世界


伝承29. ゴの荷物と奴隷

 われわれソアンプルー村のゴは、はじめスロードゥの者たちの手にあった。われわれが今では奴隷の子どもたちと呼んでいるイエに、ゴがあったのだ。われわれの村で最も重要なイエとは、むかしスロードゥだったということだ。だが人々はあるとき、「スロードゥには、ろくな男がいない」と話し合った。そうしてスロードゥの者たちは、ほかのイエにゴを手渡すことになった。彼らは「われわれのゴを買って、あなた方のイエに持っていくがよい」と言ったのだ。

 ところで、むかし“誓い”を食べるときに使う木の椀があった。キア kiaという椀だ。それから森には、ビオン bionと呼ばれるけものがいた。ゾウに似ているが、ゾウではないけものだ。ビオンの牙は、村のなかでもいちばん富んだ者たちの持ち物だった。むかしの人々は、ビオンの牙に穴を開けて、それを首にかけていた。ビオンの首飾りを持つ者は、たとえ裸でも、それだけで富んだ者とされていた。むかしわれわれの土地に、パーニュはなかったからだ。

 さて、スロードゥの者たちは、今のゴグンドゥ Gogundhoのイエの者たちに「あなた方がゴを買うと言うからには、ビオンの牙を二つと、キアを二つ、それに人間を二人、われわれに支払うのだ」と言った。ゴグンドゥの者たちには、それをいっぺんに払うだけの用意がなかった。そこでとりあえず、二つづつの品物のうちそれぞれ一つだけを払っておくことにした。スロードゥの者たちは「片方だけでも払われたのだから、われわれは少し待って、あなた方のようすをみることにしよう」と言った。

 このときスロードゥの者たちはこう言った。「あなた方は片方だけでも払ったのだから、われわれのものを渡してもよい。ただし、もう片方の品物をきっぱり払わなければ、われわれスロードゥの者がこれからゴに背くようなことをしても、誰もわれわれに罰金を命ずることはできないだろう」と言ったのだ。

 われわれの村のゴは、このときからゴグンドゥのものとなった。けれども、彼らはとうとうスロードゥの者たちへの支払いを済ますことができなかった。そうしたいわれがあるものだから、今でもゴの集まりで酒がふるまわれるとき、スロードゥの者は自由に酒を飲むことができる。彼らの好き勝手なふるまいを、誰もとがめられない。スロードゥは、今でもゴのイエのようなものなのだ。ゴの集まりで酒を飲んでいるときにスロードゥの者がやってくると、ゴグンドゥの者たちはこう言うだろう。「やつはスロードゥの者なのだから、さわぎ立てるな。ゴを手放してわれわれによこした奴隷の子どもたちなのだから」。スロードゥの者たちを奴隷の子どもと呼ぶのは、彼らの祖先が、むかし戦争でわれわれに捕まったからではない。彼らはむかし、ゴのことがらから手を引いたから、今では奴隷の子どもたちと呼ばれているのだ。

(Yaakemego Nyaawegbo/ゴ結社長の息子/1990.04.22/Soampleu村/未転写)


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