II. ダン語口頭伝承の世界


伝承02. 男とヤシ酒

 われわれ生きた人間はみな、神がもたらしたものだ。白人であれ黒人であれ、われわれはみな、一人の男と一人の女のあいだに生まれた子どもだ。

 このチウポプルー村 Tiokpoplooにいる者たちが土葬をするように、神は土を掘った。われわれがちょうど死人を土に埋めるようなしかたで、神は土に穴を掘った。穴を掘ってから、その穴をふたたび土で埋めた。穴をすっかり埋めおわると、神は“ちから”の粉をもってきた。神は粉を手にとり、埋めた穴の上からこんなぐあいに撒いたのだ。われわれ生きた人間が地上に現れたしかたを、おまえに話しているのだぞ。

 埋めた穴の上から、神は“ちから”の粉を四回撒いた。穴の上に粉を撒くとき、神は地面を払子でブッブッと四度たたいた。ところで、女がわれわれ男を産む前というのは、男がわれわれの母である女を産んでいたのだ。だから神が地面を四回たたくと、そこから男が現れた。

 神は男に「おまえの名は?」とたずねた。男はだまって頭を揺らすばかりだった。そこで神はふたたび払子をとり、男を二度たたいた後で「何だって?」とたずねた。男は「自分の名がわかりません」とこたえた。「おまえの名は男というのだ。わかったか?」と言うと、男は「はい」とこたえた。神が「この場所におちつきなさい」と言うと、男は「はい」とこたえた。

 神は男をその場にのこして、天にのぼっていった。七年がたって神がふたたびもどってくると、男はその場におちついていた。男が食べるようなものは地上になかったので、神は立ち去るときに「バーイェスペン gbaayesopenという森のツル草の花をいつも吸って、ここにとどまっていなさい」と言いのこしていたからだ。だから今でも、生まれたばかりの人間の子は、母親の乳をバーイェスペンの花を吸うように吸うというわけだ。

 立ち去ってから七年がすぎると、神はふたたび、男がいるわれわれの土地にやってきた。そしてまた穴を掘った。ちょうど同じことをくりかえしたのだ。掘った穴を、神は土で埋めた。そして“ちから”の粉を撒きながら、地面を払子で三度たたいた。すると、そこから女が立ち上がった。「おまえの名は?」と神がたずねると、女は「わかりません」とこたえた。「おまえの名は女というのだ。ここがおまえのおちつく場所だ」と言うと、女は「はい」とこたえた。女もその場にとどまった。

 それから神は南の方へ飛び去って、泥地のなかにラフィアヤシの木が一本立っているのをみつけた。神はもっていたカナリを手に取った。小刀も手に取った。そしてマシェットを手に取り、木を伐った。それからカナリをヤシ酒の出る場所にとりつけた。このときわれわれ男は、地上に現れてから七年がたっていたのだぞ。

 神はラフィアヤシの木から酒を採る仕事を、男のかわりにすべてしてやった。木の幹を小刀で刺して、そこにカナリをとりつけてやった。神は「この木はおまえのものだ」と言った。「おまえが飲む、おまえの飲み物だ」と言った。われわれ男がヤシの幹から酒を採れるようにしたあとで、神は立ち去った。

 それからというもの、われわれ男たちは夕方になると、ヤシ酒を村に持ち帰ってくるようになったのだ。だからわれわれ男たちは、この場所に今もこうしておちついているのだ。われわれ男のものであるヤシ酒を、今も飲んでいるのだ。

 だが女には、このことが気にさわっていた。ある日、男がヤシ酒を持ち帰ってきたとき、女がやってきた。女は「わたしたちはここにいっしょにいるのに、そしてあなたはいつもそれを飲んでいるのに、わたしの名を呼ばないのは、わたしがそれを飲まないとでもいうの?」とたずねた。そこで男は酒の入っているカナリを手に取り、それを地面に置いた。女はヤシ酒を飲んだ。

 二人は酒を二度飲んだ。二度酒を飲むと二人は酔ってしまった。そうして二人はどちらからとなく、たがいの体を愛しあっていた。神が天を離れて地上にふたたびやってきたときには、女はもう二組の双児を産んでいた。神はもう何も言わずに立ち去った。神が天にいた七年のあいだに、女は二組の双児をもうけていたのだ。

 それから十四年がすぎ、二組の双児は成長した。彼らの子どもたちもどんどん生まれた。今のわれわれが土地に散らばっているというのはそうしたわけなのだ。

(Tieyaagenma/妖術対抗師/1989.12.28/Tieukpopleu 村)



語句

ちから du:創造的・超常的な呪力
払子 chasse-mouche:儀礼的に用いられるハエ払い
カナリ canari:土つぼ/土なべ
マシェット machette:伐採・耕作用の山刀

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