II. ダン語口頭伝承の世界


伝承16. ゴの荷物とクモ

 クエプルー村の“怒りのことば”とは、“クモ daon”だ。それはゴ結社の“怒り”だ。むかしクエプルー村の祖先がこの土地にゴの荷物を運んできたとき、川の水があふれて、川越えができなくなってしまった。するとそのとき、クモが糸を吐きながら、祖先のところへと降りてきたのだ。

 クモは言った。「わたしがあなた方の役にたったならば、あとでわたしに何かしてくれるだろうか」。長老の子どもたちは困ったすえに「もし力になってくれたならば、わたしたちはこれからけっして、あなたの名をじかに呼ばないでしょう」とクモに言った。

 こうして祖先たちは、クモの糸をつたって、ゴのたいせつな荷物を川の向こう岸に渡すことができた。彼らはクモと“誓い”を食べたのだ。それで“クモ”ということばが、クエプルー村の“決まり”となった。クエプルー村のゴの者たちだ。彼らは今でも“クモ”と言う代わりに、かならず“ウム wome”と言う。ウムというのは、クモの身内にあたる生き物のことだ。だがクモの身内といっても、それは村のなかで見かけるような生き物なのだから、クモとはちがう。クモの弟だ。兄についてはゆるされないことでも、弟についてはゆるされるものだからな。クエプルー村で“クモ”ということばを言ってはならないというのは、そうしたわけなのだ。

(Goonzloo Gluduegbo/ゴ結社長の息子/1990.05.01/Yeleu村/未転写)



語句

怒りのことば naa:村落やリニージのレヴェルでみられる忌み言葉
クモ daon:西アフリカ森林地域の口頭伝承で、クモは典型的なトリックスターとして描かれる

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