II. ダン語口頭伝承の世界


資料01. 夢に見た神

  わたしが夢で神を見たというのは、わたしは夢のなかでゴ結社の聖なる荷物をあずかる役目の者だった。わたしはゴの仲間から、身内の一人をさし出すように言われて、いやだと答えていた。われわれは妖術をしている仲間だったのだ。

 それからわれわれは天に昇り、ラフィアヤシの酒を飲んでいる場面になった。近くには川が流れていた。夢のなかの話をしているのだぞ。わたしがラフィアヤシに上ると、さっきまでわたしに身内をさし出せと言っていた男が、木の根元に火を付けようとしていた。そのとき神が現れたのだ。神はわたしを火から救ってくれた。

 わたしは身内の者たちといっしょに森の出作り小屋で眠っていて、こうした夢を摘んだのだ。神はたしかにいるということだ。神の体に生えている毛は、ウマのような毛だった。背中に毛が生えていたのだ。そして肌は真っ赤だった。頭はといえば、大きなアリ塚のようだったのだ。

(Tieyaagenma/妖術対抗師/1990.01.19/Tieukpopleu 村)



資料02. 力士とサル

 かったころのわたしは、ある日、夢を摘んだ。サルが夢の道にやってきて「わたしは、おまえが相撲をとるようにやってきた。もしわたしを取りたければ、日が明けて、あそこの森のこれこれの場所に行けば、アブラヤシの木の上にわたしがいるだろう」と言ってくれた。

 日が明けると、わたしは母の小屋の屋根裏にのぼって、そこから袋を一つ取りだした。袋を持って、夢で言われたとおりの場所に行ってみたのだ。場所に着くと、アブラヤシの木の上に、ほんとうにサルが一匹いて、そこでダンスをしていた。わたしは木に近づいて、袋の口を開けた。そして袋の口を木の方に向けたのだ。わたしには、このときサルが袋の中に飛びこんできたように見えた。だが、袋の中をのぞいてみると、そこにはサルの頭の骨が入っているだけだったのだ。わたしはその骨を村に持ち帰った。

 やがてわたしは、相撲に出かけた。相撲に出かけて、相撲をとる前のダンスをしているとき、わたしは骨の入っている袋を、まだ割礼を受けていない子どもの頭の上に乗せた。そうしてその子の肩を後ろから抱えて、ダンスをしたものだ。

 わたしには、サルの姿がその後も見えなかったけれど、何かがミューッ、ミューッと言いながら目の前を飛んでいるようなことは、よくあった。相撲をとっているとき、わたしは休みをとっては茂みに行って「サルよ、サルよ」とサルを呼び、サルといっしょに相撲をつづけたものだ。そうすればかならず相手を転ばしたのだ。

 ところが、よその村の男と相撲をとったときのことだ。その男は、相撲の日の前に、夢のなかで「あいつの精霊はサルだ」と言う声を聞いていた。そして相撲がはじまった。わたしがいつものように茂みでサルを呼んで試合をつづけようとしたとき、男は「おまえの精霊はサルだ」と言って、わたしの秘密を暴いてしまったのだ。わたしはかんたんに転ばされた。もう、わたしは二度と相撲をしなくなった。

(Tiogbodhe/ゴの裁判役職者/1989.01/Gouakatouo村/無録音)



資料03. 深夜のガソリンスタンド

 ダナネ市とトゥレプルー市をつなぐ舗装道路をつくっていたイスラエル人の工事屋の話だ。ある晩、一人のイスラエル人の男が、ズアン=ウニアンからダナネ市に帰る道を車で走っていた。もう真夜中に近かったそうだ。

  男がハンドルを握りながら、なにげなくガソリンメーターをのぞくと、メーターの針が、いつのまにかほとんどゼロになっている。男は、ダナネの街に入るまでガソリンがもつかどうか、気が気ではなくなった。

 するとそのとき、道路の前方に、とつぜん目もくらむほど大きな街あかりが広がったんだそうだ。助かった。ダナネの街に入ったぜ。ほら見ろよ、あそこにちゃんとガソリンスタンドがあるじゃないか。イスラエル人はスタンドに車を止めた。

 ところがスタンドには、老人が一人きりでゴザの上に横たわっているほかは、まるで人影がない。男は、その老人にガソリンを入れさせて、金を払おうとした。だが、たまたま小銭が切れていたので、男はしかたなく、老人に一万CFAの札を渡した。すると老人の方も「あいにく今は、釣り銭がみつからないから、明日、わたしのところへ釣り銭を取りに来てくれないか」と言ったそうだ。

 翌日、男が車にエンジンをかけて、街あかりが急に広がったはずの夕べの場所に戻ってみると、いくら目をこらしてみても、そこに街は見あたらない。そこには、チウヴォプルーという村の標識しか立っていなかったそうだ。

  胸騒ぎをおぼえた男は、車を降りて村のなかに入ってみた。するとそこには、昨晩会った老人とそっくりの長老が、小屋の前にゴザを広げて横たわっているではないか。男が試しに釣り銭のことを話してみると、長老は何も言わずに小屋の中へ入っていった。そしてすぐに小屋から出てきて、男にきちんと釣り銭を払ったそうだ。前にゴザを広げて横たわっているではないか。男が試しに釣り銭のことを話してみると、長老は何も言わずに小屋の中へ入っていった。そしてすぐに小屋から出てきて、男にきちんと釣り銭を払ったそうだ。

  男はすっかり驚いて、その場で村の写真を一枚、おそるおそるカメラにおさめ、じきにイスラエルへ帰ってしまったそうだ。

(1994年末のダナネ市内で流布していた怪談)


line
Index | アトリエII トップページ | 前のテクスト | 次のテクスト |