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| ■ダン族とは |
| ダンDanは、西アフリカのコートディヴォワール共和国西部からリベリア共和国東部にかけての内陸森林地域にくらす民族です。これまでダンの人々は、コメを主作物とする樹木休閑・草休閑タイプの輪換焼き畑耕作を生業としてきました。 ダンという民族呼称は、ダン語による彼らの自称《Dan wo p |
| ■ダン語口頭伝承の世界 |
| 口頭伝承の収集それ自体は、かならずしも私の当初の調査目的ではありませんでしたが、フィールドワークをつうじてフランス語の物語=レシr 第二に、私はしばしばインタヴュー協力者に個人のライフヒストリーを語っていただきましたが、とくに年輩層のライフヒストリーには独自の神話化作用がはたらいていました。神話化の刻印を一面でささえているのは、個人が就寝中に経験する夢見のあらましに特別な価値がおかれるというダン社会の特徴です。神話なり伝承なりというものが、総じて社会の匿名的な財産であることは疑いえないとしても、個人の内的な経験を語るダンの人々のライフヒストリーは、それが新たな神話や伝承として社会に定着していくに足るほどの《民話的想像力》に満ちていました。ある個人は睡眠中に神の神話的イマージュを目の当たりにし(後記資料1を参照ください)、ある者は、私たちならば白昼夢と呼ぶはずの状態のもとで、精霊のイマージュに魂の息吹きをさずけていきます(後記資料2を参照ください)。人間の唇のあわいから物語が発生していく瞬間とは、まさしくこの《ライフヒストリー》と《伝承》の境界線があいまいとなる瞬間、あるいは個と社会の創造力それぞれが拮抗する瞬間であるようにも思われてきます。 |
| ■収録テクストについて |
| 以下で日本語に訳した伝承テクストの構成は、7つのパートに分かれています。1は、創世や人間の創造をめぐる神話テクストです。2と3は、ダンの神話−歴史的な移住伝承群です。ここには移住、離散、対立などのプロットにも関わる、異民族との盟約伝承もふくまれています。4では、禁忌(タブー)や特別な山や沼にまつわる雑多な説話群をまとめて訳しました。そのなかには、トーテミスムを思わせる食物禁忌の起源譚から、忌み言葉にあたる言語規範の起源譚、聖性をおびた山や沼の説話、また人身供犠のモティーフをともなう市場の起源譚などがふくまれています。5以下では、ダンの男子結社組織《ゴ》にまつわる伝承群をあげました。フランスによる今世紀初頭の植民地化にいたるまで、ダンの村落社会はゴ結社のつよい影響力のもとにあったと推定されます。とりわけゴは、伝統的な村落世界における司法もしくは紛争調停の権力として機能していました。アフリカ美術のすぐれた作例として知られるダンの木彫面も、ゴのゆるやかな組織下で特定リニージの男子が継承する仮面着用師の所有物とされてきました。 このうち5では、ゴの起源伝承、とりわけゴの結社制度がいかなるプロセスを経てダナネ各地の地縁集団に伝播していったかを語る伝承群を中心にあげました。ある地縁集団がゴの制度を自らに導入するには、《ゴの荷物を買う》、つまり歴代結社長の聖遺物を他の集団から購入することが不可欠でした。5では、こうした荷物のとりひきをめぐる伝承のほかに、ゴの制度を寓話的に説きあかした説話や、結社長の継承をめぐるトラブルの伝承もあげました。 6では、仮面にまつわる種々の伝承をとりあげました。仮面のかつての司法権力を雄弁にものがたる伝承や、個々の仮面の起源譚、仮面の呪力にまつわる伝承、面の紛失・強奪譚、仮面の呼び名の起源譚などです。ちなみに私たちがふつう《仮面》と呼ぶものは、正確なダン語では《精霊gl 7では、フランス植民地期初頭の歴史伝承群をあげました。いずことも知れぬ異界から忽然とやってきた《肌の白い人間》について、ダンの人々−およびゴの結社組織−がそこにいかなるイマージュのかたどりを与え、未曾有の状況にいかに対処していたかがうかがえる伝承群です。《植民地心性》の社会史にもつらなるこれらの問題系は、私が最近いちばん注目している領域のひとつで、実際に収集された伝承の種類も多様です。ただし、この種の伝承テクストの読解には植民地史のクロニックとの詳細なつけあわせがどうしても欠かせないため、本アトリエでは、クロノロジックな前提がなくても比較的受け入れやすいフランス植民地化の最初期、すなわち仏領象牙海岸植民地の《平定作戦》期(1908-1915年)に属する若干の伝承群を訳出するにとどめました。植民地の記憶に関するテクストの詳細については、アトリエIIIをご覧下さい。またダン居住域の都市部に流通する、いわゆる都市伝承についても、本アトリエでは後記資料3で一例をあげるにとどめ、おもな訳出の対象外としました。 |
| ■付記事項 |
| 本アトリエのテクスト群は、1988年3月〜1990年5月、および1994年10月〜12月のフィールドワークで収集されたダナネ地方南部の事例です。ここでいうダナネ地方南部とは、コートディヴォワール共和国ダナネ県Danan テクストの理解にとり最小限必要となる語句については、各テクスト末尾の【語句】欄でごく簡潔に説明しました。これらの語句説明は、原則として各語句の初出テクストに付されており、複数のテクストにまたがる注記の反復は避けました。また、フィールドワーク中の私の滞在地、地縁集団ロードゥL ダン語転写テクストについては、本アトリエ伝承群のうち、音声表記による録音資料の転写化が比較的完全なものをしめしました。ダン語発音表記については国立コートディヴォワール大学・応用言語学研究所によるブロッセ方言の表記法におおむね準じましたが、音調表記については煩瑣をさけ略しました。なお、本アトリエ所収の伝承群は、1997年発表の拙稿「ダナネ地方南部・ダン族の神話−歴史伝承群:45の事例」『物語の発生学 I 』(小田淳一 編)東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所, pp.119 - 237をもとにしたものです。 |
| ■テクスト |
| *ダン語転写テクストについては こちら をご覧ください。 |
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| 1. 創世・人間起源神話 | ||
| 01. 七つの世界と市場 | 02. 男とヤシ酒 | |
2. 移住・盟約伝承(民族レベル) |
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| 03. グロ族との誓い | 04. グロ族との別れ | |
3. 移住・盟約伝承(小集団レベル) |
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| 05. ロードゥI/長老の川越え 08. ロードゥIV/水場の争い 11. ゲレ族との誓い |
06. ロードゥII/不吉な割礼 09. ゴをめぐる戦争 |
07. ロードゥIII/聖なるグウの木 10. アワレあそびの口論 |
4. 禁忌伝承/山と沼の伝承 |
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| 12. ヤシネズミの川越え 15. 夢にやってきた野生ヤムイモ 18. 動物出産譚II 21. 聖なる山I 24. ヴル沼の呪い |
13. カタツムリの行列 16. ゴの荷物とクモ 19. ヤシ酒と疥癬病みの男 22. 聖なる山II 25. 娘の生き埋めI/市場を建てる |
14. 手をつないだサル 17. 動物出産譚I 20. 体毛にからまったアリ 23. 沼の魚と女 26. 娘の生き埋めII/村を建てる |
5. ゴ結社の起源・導入伝承 |
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| 27. 支配者マーヴァ 30. 三人の男の寓話 |
28. ゴの荷物を買う 31. 見えない結社長 |
29. ゴの荷物と奴隷 |
6. 仮面伝承 |
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| 32. 仮面の裁判I 35. 女の夢に生まれた仮面II 38. 森をさまよった父 41. 仮面の名のいわれII |
33. 仮面の裁判II 36. 消え失せた仮面 39. 新月の晩に仮面を出す |
34. 女の夢に生まれた仮面I 37. 盗まれた仮面と逃亡者 40. 仮面の名のいわれI |
7. 植民地伝承 |
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| 42. 首長を任命するI | 43. 首長を任命するII | |
【資料】 |
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| 01. 夢に見た神 | 02. 力士とサル | 03. 深夜のガソリンスタンド |
| 玄関 | アトリエI | アトリエII | アトリエIII | アトリエIV | アトリエV | アトリエVI | 書斎 | 金庫 | |