チベット語辞典編纂室日誌

1999年

 

◆1999.02.23

もう二月も終わろうとしている。先日、現代チベット語辞典校正用第二版が完成した。 三部作成。二部はケニアに持っていってもらい、一部は研究室に置き、校正作業を進め ている。不要な単語をだいぶ削って 1,138 ページにした。ずいぶんスリムになった。  日誌を書かなかった間にいろいろなことが進行した。まず、動詞の意味をまとめる作業が はじまった。単語の収集の際にコロケーションを重視したことが功を奏し、手持ちの 辞書データベースをうまく使うことによって、ある動詞がどのような名詞と結びつきうるか ということを一覧して意味記述をおこなうことが簡単にできるようになった。これまでに 誰も出していないようないい辞書になりそうだ。  また、新規に辞書に追加する単語もどんどん増えてきた。全体としては見出し語だけで 15,000語くらいの規模の辞書になるのではないか。今日はこのくらいで。

◆1999.03.03

iMacが来た。いちごと命名。G3は兄貴。

◆1999.03.04

iMacが使えるようになった。

◆1999.03.05

日本語-チベット語索引作成(全161ページ)。一つの日本語に対し、複数のチベット語があるものについてチェックを入れる。 ケニアからEメールでキーワードのリスト(100語余り)が送られてきた。  →いちごノート/辞書関連/キーワード/KeyWordアイディア

◆1999.03.08

音節頻度表作成(見出し語中の全音節、第一音節、第二音節での頻度それぞれ作成) 見出し語は2890種類の音節から構成されていることがわかった。そのうち519種類のよく使われる音節については、当該音節が用いられている見出し語のリストを作成した。これはキーシラブルのリストアップ作業となる。全部で1000個くらいの音節をキーシラブルとし、これに意味と同根語情報を付すようにしたい。 519種類のキーシラブルの同根語情報(リストアップされた同根の見出し語)を見て、辞書にどのように盛り込むか、試しに書いてみた。   →いちごノート/辞書関連/Brainstorming/同根語の書き方について 日本語-チベット語索引を用いた「一つの日本語に対し、複数のチベット語」チェックが終了した。 一音節からなる意志動詞、無意志動詞のリスト作成。これを用いて、辞書の動詞の項に記載する予定の、「対応する意志動詞(あるいは無意志動詞)」のリストアップを行う。

◆1999.03.09

同音異綴・同音異義単語リスト作成。これは発音が同じで異なる綴り、異なる意味を持つ単語をリストアップしたものである。青いファイル(大)に閉じてある。これのもとになっているデータベースがある。  →千葉/辞書DB/DBリンク 日本語-チベット語索引を用い、キーワードのリストアップ作業を進めている。1ページあたり10〜15個の目安でリストアップ。全体で1500〜2000語をリストアップしたい。 音節頻度表を用い、新たなキーシラブルのリストアップをおこなった。前回のものと足して全部で777個になった。

◆1999.03.10

同音異綴・同音異義単語のチェックをはじめた。このリストはいろいろに使える。 まず、校正。綴りの間違いが一目瞭然なので、直すのが楽である。直すには、もとになっているデータベース「DBリンク」は「TibetanDB/」とリレーショナルになっているので、それを利用して修正していく。修正済みのデータに関しては、ハードコピーの方にその旨書き込んでおく。 同根語情報のチェックをはじめた。126までチェック済み。鉛筆で意味を書き込み、分類が必要な場合は番号をふって分けている。すべてをキーシラブルとして取り込む必要はないかもしれない。 昨日リストアップした新たなキーシラブルについて、同根語情報の作成が完了した。全部で242個のキーシラブルを追加したことになる。前回の521個と合わせて、計763個をリストアップしたことになる。ナンバリングについては、前回のものが001〜、今回のものが1001〜となっている。青いファイル(大)に閉じてある。 新規追加単語リストの入力(上巻)は、千葉さんにお願いすることにした。nyaの途中から。

◆1999.03.11

次にするべき仕事を考えなければ! 辞書DBをおもに修正していくのは今のところ私の役割なので、修正用TibetanDB/はいちごのおへやの中に入れておくことにする。  辞書DB->兄/TibetanDB/ ぼたんを作成してもらったので、それを押せば、更新されたデータをおにいちゃんのほうに送ることができる。辞書のぼたん、いちごノートのぼたん。 同音異綴・同音異義単語のチェック、ひととおり終了間近。83/104まで見た。綴りの間違いをかなり修正した。また、同音異綴・同音異義単語と認定できるものについては、音素表記を四角くかこんである。DBリンクとTibetanDB/を用いての修正作業はかなり慣れてきた。 iMacにメモリ増設した。 千葉さんに新規入力単語リストの作成をお願いした。今日 nya の入力が終了した。いちごのおへや/今日の仕事の中に入れてあるので、私が日本語の入力ができそうな箇所については入力し、修正が必要な箇所は修正してケニアに送付する原稿を作成する。

◆1999.03.12

今日は国研の研究会で来たのは夜七時半近くなってから。 一つ思いついたのは、『チベット語語彙集』1995の単語が、辞書と照合させたらどれだけヒットするか、ということをやったらどうだろう、ということ。

◆1999.03.13

今日新しく思いついたこと。かねてから記載する必要があると考えていた動詞に関する構文情報(どの項がどのような助詞を要求するのかなど)を、作成してもらうことにした。パソコンを使えばかなり早くできるようだ。一人で考えていたときにはそういうことは思いつかなかった。 先日作成してもらった意志動詞と無意志動詞の対照表を用いて、見出し語に埋め込む予定なっている「対応関係にある意志動詞と無意志動詞」のリストを作成した。思いのほか数は少なく、57組しかなかった。今回は形の上での対応のみを抽出したが、意味の上での対応も見たほうがいいと思う。たとえば、「見る」と「見える」、「聞く」と「聞こえる」など。 同根語リストのチェックが進行中である。200番まで。 同音異綴・同音異義単語のチェック終了。合わせて校正もおこない、データベースをかなり変更した。「帯」を表す単語はskye rags が主となっていたが、skyed rags が主になるように直した。子供も skyed rags につけた。同根語リストを見ているので、ついそういう意識が働いてしまう。これでよかったのだろうか。 終了したところで、同音異綴・同音異義単語という情報は、どこに記載するべき情報なのか、どのように記載したらよいのか、考えなければならない。

◆1999.03.14

日曜日なので、ケニアより電話あり。郵便物到着したとのこと。私のアイディア(辞書の構造3/4)に賛成する旨のお返事をいただいた。コロケーションに関しては時間的に大丈夫なのか心配だそうだ。まあ見ていてください。 新規入力単語リスト、sha の大半について入力が終わった。明日までにはなんとかしたいものだ。 同根語リスト336番までチェックした。

◆1999.03.15

電話帳の元原稿をいちごにもらってきた。  いちごノート/辞書関連/電話帳 電話帳の中にその1とその2がある。その2は分厚くないもの。 いよいよ原稿書きが始まるというわけだ。 電話帳の原稿を書き始めたがdkar po に辿り着いたところで重要なことに気づいた。 !注意!電話帳に関しては、以下のような一貫したルールで原稿を作成すること。 1)同綴異義語(肩に番号を付けて区別するタイプ)には、アラビア数字を付す。 2)同じ意味の単語で下位分類をしたい場合は、アルファベットの小文字を付す。 表記の統一 終る→終わる、というふうにしたいが、数が多いので、まだやっていない。 また、以下のような表記の不統一が見られる。 生じる−生ずる/演じる−演ずる/講じる−講ずる/感じる−感ずる/念じる−念ずる 興じる−興ずる/献じる−献ずる 「〜ずる」は古いんじゃないか。私としては、口語の辞書でもあるわけだし、「〜じる」に統一したい。 昨日新しく思いついたこと。ケニアでの父の仕事を増やすことになるが、父の担当になっている、敬語と普通形の対応表作成をもらさずにおこなうために、見出し語の敬語、謙譲語のリストを作成して送付したらどうか。品詞別にリストアップするといいと思う。昨日調べたところでは、「名敬」となっている見出し語は575個、「修敬」の見出し語は19個、「意敬」は23個、「無意敬」は22個であった。以外と少ない。名詞をクリアすれば、ほとんど終わったも同然である。これを千葉さんにお願いした。すぐにできるそうだ。今週、あるいは来週にも送付することにしたい。 カタカナ表記について、統一を考えなければならない。高い声調の破裂音は、濁音でなく、清音でカタカナ表記したほうが好ましいと思うのだが。日本人の普通の耳に、どのように聞こえるか、実験をしてみたらどうだろうか。今度の新入生を対象にするとか。 表記の統一 カタカナ表記について si→スィ、dzi→ズィとすることにした。 トムスィカン、スィリベーコー、スィンディラ、デースィー、ズィンブ ただし、人口に膾炙している「テンジン」などはどうするか、問題が残る。 ツァンバかツァンパか、という問題はまだ残っている。二音節目で破裂音がどう聞こえるかが二通りあるように思えるのだが。

◆1999.03.16

電話帳は本日よりコロケーション台帳と呼ぶことにする(ファイル名も変更した)。コロケーション台帳の原稿を0024の途中まで書き進めた。難しいけれども、わしわしと仕事を進めないと、終わらないので、勢い込んでやっている。以前カードを作成したときには、かなり分類を細かくしたけれども、あまり細かくしても収拾がつかなくなりそうなので、ここは頭を冷やし、細かくしすぎないように気を回すことにした。 同綴異義語かどうか、認定が難しいものもあった。たとえば、dkrol @演奏するA彫り物をする、という場合、@とAはどういう関係にあるのか、同綴異義語のようにも見えるが、断定できないようなところもある。 表記の統一 課す−科す、掛ける−かける、載せる−のせる−乗せる、取る−採る−とる

◆1999.03.17

動詞が取りうる助詞(la, gis, nas, las など)の総ざらえをした。だいたいデータベースを使って選び出し、-r, -s など、助詞でない後置字と間違えそうなものについては、まとめてもらって選別をおこなった。 コロケーション台帳の原稿は0052まで執筆し終わった。昨日までのやりかたではまぎらわしいので、「原稿」というフォルダを作成し、そこに20項目ずつまとめて執筆し終わったものをためていくことにした。  いちごノート/辞書関連/コロケーション台帳/原稿

◆1999.03.18

コロケーション台帳は0067の途中までできた。まだ「コロケーション」の中に残っているので、それを片づけるように! 助詞+動詞リストができた。青いファイルに挟んである。これはコロケーション台帳の原稿作成に有効に利用しよう。書き方の統一を図る必要がある。 思いつき! 日本語の基本動詞、基本形容詞について、どういうチベット語が当てられるかというリストを作りたい。これは基本語の関連語コラムとしても使えるし、巻末の日本語索引にも使える。しかし、どうやって基本動詞と基本形容詞を選んだらいいのか? TibetanDB/のカードで、「分類」をポップアップメニューにしてもらった。色の様々な表現をコラムにしたらどうかという千葉さんからの提案。まだ思案中であるが、いつでも対処できるように、色で一括してマーキングしてある。本日中に処理した。 品詞、本動詞の分類、それをどこまで表示するかについて検討しはじめた。本動詞については、見出し語になっているものにのみ、意志動詞か無意志動詞の別を表示したらよいのではないか、と考えている。現在コロケーション台帳を用いて、見出し語の本動詞の原稿執筆が進行中であるが、そこに本動詞の意味と意志・無意志の別を精密に書いておけば、辞書を使う人が、例えば複合動詞(名詞+本動詞など)を頭の名詞から引いたときに、そこに意志・無意志の別が記載されていなくても、その複合動詞を構成している本動詞を辞書で引けば、複合動詞全体で意志動詞として用いられるのか無意志動詞としてしか用いられないのかが分かるようになっていれば、それで十分なのではないか。 表記の統一 家畜による脱穀→~bcag or ~xchag? すいとん−水団(ひらがなのほうがわかりやすいのでは?) 昨日急いで終わりにしたつもりだった、動詞が取りうる助詞の総ざらえ、今朝もう一度見直した。昨日見落としたものをチェックし、これで一応完成。 コロケーション台帳の原稿を書いていると、チベット語、日本語両方の表記の不統一が目に付く。私の判断で直せるものは直し、判断保留のものについては、TibetanDB/のNoteの欄にその旨書き込むようにした。

◆1999.03.19

コロケーション台帳0080まで執筆終了。執筆要領 2) を以下のように変更した。 2)同じ意味の単語で下位分類をしたい場合は、英数半角で -) を付す。 「アルファベットの小文字」ではなく、-) という記号を付すことにしたものである。これは、順序の変更が簡単に利くように、レベルを統一するためである。 本動詞の敬語形と普通形の対照表の作成をお願いした。これは、子供に過剰な敬語を掲載しないためのリストラ作戦の一環である。例えば rgyag を skyon に置き換えれば敬語形が作れるようなものは、rgyag しか記載しない、などの工夫をするということである。これを判断するために、rgyag と skyon がどれだけ対応しているのか、まず調べる必要がある。 転居者選定がほぼ終了した。転居者選定をおこなったのは、V+mkhyen, V+gzhag ~bzhag, V+mgyogs po, V+nyes である。V+gnang もおこなう予定であったが、これは保留とした。千葉さんに選んでもらったチェックリストに名詞+gnang が数多く含まれていたため。相談したところ、V+gnang のリストが作れそうだということなので改めて新しいチェックリストを作ってもらうことにした。 表記の統一 以下のものは平仮名に統一したほうがいいと思う。 できる−出来る て(で)おく−て(で)置く→修正済み て(で)いく−て(で)行く て(で)くる−て(で)来る データベース縮小のため、新たな転居者を選定して転居させることにした。これはデータベースで「必要」というチェックボックスを作ってもらい、それに直接入力するという形で選定する。この作業が終了した後、本動詞完了形で非完了形と同形のものを削除するという作業をおこなう。その際、V+ yong については、本動詞非完了形の子供にする。番号の変更もあわせておこなう。 →この件については、検討したところ、後でまったく新しいデータベースを作るということを考えて、今の段階では削除しないことにする。削除見込み、ということでマーキングするにとどめる。これはまだおこなわない。 敬語と普通形の対応表が完成した。これを見て検討したところ、ケニアに送るよりも、こちらの研究室でデータベースを使って作業したほうが確実に網羅できていいだろうということになった。まずは千葉さんに初めの作業をお願いして、次に私がチェックを入れ、それでできあがった原稿をケニアに送って最終チェックをしてもらう、という段取りで進めることにした。 この日誌、ケニアに毎日、あるいは週一回くらいの割合で、発信してはどうだろうか。あまり長く話せない電話では埒があかないし。 昨日できあがった助詞+動詞リストを使うと、助詞(la, gis, nas, las)の意味を記述するのにも使える。これに早速取りかかってみよう。助詞の意味の記述は後回しにしていたのであった。 思いつき! 辞書に記載されているすべての単語の第一音節の音節文字のみを抽出して、その音節文字をチベット文字ソートにかけたものを一覧表にしてほしい。データベースで。で、同じ発音になるものをグルーピングする。これは何に使うかというと、日本人が耳で聞いてひけるようなとっかかりをつける音引き索引を作るのに使える。

◆1999.03.20

コロケーション台帳0085まで執筆完了。これでkaの部が執筆終了と相成った。ただし、まだ単語を振り分けただけで、選定作業はこれから。選定が終了したら、これをケニアに送付する。選定作業は印刷してハードコピー上でおこなう。kaの部のハードコピーを本日作成した。在処は次の通り。  コロケーション台帳/原稿p/kaの部

◆1999.03.22

コロケーション台帳0120まで執筆終了。 表記の統一 中味−中身 私のうっかりミスで、dgax ngoms chog shes の親子および xgran zla chog が転居してしまった。これはもどさなくてはなりません。 思いつき! 本動詞の分類(特に、動作動詞・状態動詞という分類の必要性)について考えるにつけ、どんな助動詞と結びついたときにどんな意味になるとか、これらの本動詞はこのような助動詞とは結びつかないとか、このようなことについて検討する必要がある。そこで、利用できるのは「TibetanDB/転居者」をおいて他にない。ある助動詞がどのような本動詞と結びついているか、そしてそれが何らかの傾向を持つものなのか、また動作動詞・状態動詞という分類が必要と見なされるような傾向になっているのか、こういったことについて検討したい。そこで、あればいいなと思うものは、特定の助動詞と、それに結びつきうる本動詞(チベット語、意志・無意志の別、訳の三者が必要)の一覧である。助動詞のリストは私が作り、それをもとに千葉さんに本動詞の一覧を作ってもらえればいいな。初めは電子的にやって、チェックボックスつきのものができれば、ある程度整理がつくのではないかと。 一昨日の夜、ケニアに電話し、コロケーション台帳の原稿 ka の部を送ることにした。新規追加単語の執筆は、あまり進んでいないらしい。気が萎えることもあるようだ。コロケーション台帳の原稿を見れば、気分も盛り返すでしょう。物語の単語に着手しようかなと言うので、ぜひそうするように言った。最近の経験で、同時にいろいろなことを並行してやるというのが、意外と仕事の能率を上げるということが分かった、などと話した。がんばりましょう。 大槻文彦の伝記、『言葉の海へ』(高田宏著。岩波同時代ライブラリー)読了。胸に迫る感動の書だ。われわれも奮起して辞書を完成させなければ。

◆1999.03.23

辞書の構造を本格的に考えることにした。そしてそれをもとに新しいデータベースを作成することに。このデータベースは一つの見出し語につきカードは一枚、という原則で作成するので、この点、今のデータベースとは全く性質を異にする。現在千葉さんが作ってくれている。私が考えるのは、何をどういう階層にして盛り込むのか、というところだ。編纂作業はほとんどデータベースでおこない、ワープロは使わないという方針でいくことを確認した(以前からそういうことに決めていたようだが、私はすっかり忘れてしまっていた)。このため、コロケーション台帳の原稿執筆はいったん中断し、どのような項目を盛り込むか、時間をかけて検討することにした。 検討するために、研究社から出ている『ライトハウス英和の活用法』『ライトハウス英和を10倍楽しむ法』という二冊を購入。たいへん参考になる。やはり先人には学ばなければという思いを強くした。 転居者を本宅にまとめて呼び戻すために、転居者DBの訳のフィールドに「  チミ」と書くことにした。これは「る」でショートカットを作ってある。
*********************辞書の構造について****************
<現行>  
見出し語 1)「品詞a」 2)「品詞a」 3)「品詞a」 4)「品詞b」 5)「品詞b」 6)「品詞c」

<ライトハウス英和辞典>  
見出し語 「品詞a」    1) 2) 3)  ---「品詞b」    1) 2)  ---「品詞c」    1) *******************************************************
どこ引く実験というのをやってみようと思う。四音節以上の単語を見て、どの部分をまず初めに引きたくなるか、というテストである。この在処は次の通り。  いちごノート/辞書関連/アイディア集/どこ引く実験 khra khra ba khra, khra khra sir sir いずれも親と認定した。 思いつき! yar と mar と動詞の関係について調べる。この動詞については yar が使えるとか使えないとか、そういった情報を収集する。現在のデータベースで、入っているものについては全部表に出してみる。これは意味がある。なぜなら日本人には教えられなければわからないというところがあるからだ。 khor yug を xkhor yug の異綴りと認定した。

◆1999.03.24

辞書の構造について考えるとき、すべての項目を盛り込んだ状態でのレイアウトをしてみる。すべてについて書いてみる。rgyag , gtang , byed などについては他の動詞とは別の構成が必要になるかも。語義の展開については、なるべく早くリストアップして、意味地図を書いてみることが必要だ。 辞書の構造について考えた。品詞別に作成してみた。  いちごノート/辞書関連/辞書の構造/辞書の構造3/24b よく研究して、盛り込むべき事項の洗い出しと整理に全力を注ごう。英和辞典の編纂者、主幹の人に会って話がきこう。できるだけ英和辞典については勉強する必要がある。 動詞 普通形/敬語形 用例が完成した。青いファイルの中に入っている。これをもとに、リストラを考えていきましょう。 思いつき! どこ引く実験のために、単語を集める。どうやって集めるかというと、四音節以上の単語を抜き出して、それを振り分けてテスト用紙を作成する。テスト用紙を作成したら、チベット語学習者にアンケートをとる。この作業は何と関係があるかというと、用例をどこに記載するのが効果的なのかということを判断する材料にするために使うのである。これから新しいデータベースを作るに当たって、すべての用例を二カ所に記載することは不可能と考えて、改めて選択しなければならない。

◆1999.03.25

思いつき! チベット語会話練習帳を電子化する。巻末に、会話表現を載せるために使える。梶田さんに電子化をお願いしよう。(3/26 梶田さんには依頼済み。入力方法の詳細については検討が必要。)

◆1999.03.26

国研で研究打ち合わせ。チベット語おもしろいとみんなに言われて元気百倍。 中国語の辞書編纂に携わっている木村英樹さんに、品詞表示について質問した。自動詞か他動詞かという表記までは載せないという。問題点のある箇所もあるし、第一、そこまで親切にしなくても、例文で分かるようにするほうが効果的だという考えだそうだ。私もそう思う。意志動詞、無意志動詞の表示についてはまだまだ検討が必要である。対応する意志動詞・無意志動詞のある動詞でも、意味を@〜Iと分類して書いていると、「対応する」というところが実はいくつかのパターンがありそうだ。さらなる観察が必要だ。例の75ペアの動詞群について、まず語義を書いてみようと思う。語義の展開も含めて。辞書関連フォルダの中のアイディア集フォルダに、意志と無意志の問題点というファイルがある。これを膨らましていきたい。また、主語がgis を取るもの、la を取るもの、助詞不要のもの、など特記事項のある動詞についても、早々に検討する必要があるので、書き始めることにした。いまはメモ程度。いずれにしても、すべての動詞に意志動詞か無意志動詞かという表示を記載するのは行き過ぎになってしまうだろう。何を基準にするか、考えていかなければ。三月末までに辞書の構造をひとつはっきりさせたい。 Interlexから集中講義に出席するのかしないのか、返事をせよというメールが届いた。どうしよう。飛行機混んでる。

◆1999.03.27

新しいデータベースのモデルがほぼ完成した。見せてもらったところ、非常に使いやすそうだ。結局、一万なんぼという数のある親に、新しく子供をつけかえていく、という作業になっていくようだ。このデータベースでは、述語動詞の記述は他のものと別になる。助詞のモデルも書き始めなければ。 修飾詞というタームは見直したい。昨日書いた、意志・無意志と同じで、意味を@〜Eのように分類して書いていくと、修飾詞の中に、形容詞としての用法が大半を占めて、一部副詞的に用いられることがある、というふうになっているようなのだ。ということは、@〜Dは形容詞として、最後のEに[副詞的用法として]○○○、という記述のほうがわかりやすくていいのではないかと思う。意味の分類をしているうちにそう思うようになった。

◆1999.03.31

ちょっと日誌をさぼってしまった。今日は辞典編纂第二期の最終日である。 明日から四月だ。第三期だ! トム・マッカーサー著『辞書の世界史』 (三省堂 1986年 残念ながら絶版)を読んでいる。たいへんすばらしい本だ。 イギリスのエクセター大学で開催される国際辞書学コースに参加することにしたのだが、 この本の著者から直接講義を受けることができるかと思うととても嬉しい。 新しいデータベースが完成しつつある。千葉さんが辞書の構造を作ってくれた。 盛り込むべき情報と、その階層構造をきちんと整理してもらった。
次のように三段階になっている。  
1)基本情報(見出し語、発音、動詞変化形など)  
2)展開(意味、コロケーション、イディオム、例文など)  
3)発展(関連語、待遇表現、反意語・同意語など) 関連語の中には、 広義の関連語と狭義の関連語が含まれる。広義の関連語とは、 関連する意味の単語という意味で、歯ときたら歯磨き、歯垢、歯茎、 などと関連していくものである。狭義の関連語とは、同義語(あるいは類義語?) の類である。
思いつき! 同根語リストの新たなる活用法について。同じ語根で複数の意味を持つようなものは多いのか?多ければ、 二音節語を引くときに、まずその初等音節の意味を選択して選べる ようにするとか....無理か。あまり意味がないような気がしてきた。中国語の親字扱いにするということですね。しかし、so なんて、歯、偵察、 各という意味があって、その他に農業とか唐辛子とか、意味のなさそうなものまでいろいろあるではないか。そういうのはどうする。
中国語の親字とは違う問題が起こりそうですね。そういうのに関しては、関連語を積極的に載せるというふうに解決してはどうでしょうか。 so1「歯」のところに歯の関連語を載せ、さらso2 「偵察」のところに偵察の 関連語を集め、なおかつコロケーションなどの詳しい情報は綴り字順に 並んでいる箇所に載せる。これで解決だね→多義の語根は関連語を積極的に載せる。 第一音節に頻出する語根をチェックするために、 辞書関連フォルダ内の音節頻度表(ファイルメーカー)で、第一音節を高頻度順に並べ、 印刷してみた(第一音節の高頻度リスト)。これを利用することによって、 多義の語根の目当てを付けることが容易になるだろうし、高頻度なら、 覚えるべき音節として、星印を付けることもできる。このリストを使って 検討をはじめたいと思う。科学的な方法ですな。同根語リストと併用して、 多義かどうか調べるように。見出し語の第一音節の出現頻度は次のようになっていた。 30回以上出現する音節文字 約50種類 20回以上30回未満出現する 音節文字 約50種類 15回以上20回未満出現する音節文字 約75種類 10回以上15回未満出現する音節文字 約170種類   /全2890種類中 ケニアの父上には、民話集のテキストで辞書に載っていない単語を抜き出すという作業をしてもらうことにした。 思いつき! 異綴り問題が最近顕在化してきた。新しいデータベースを作る上でよくよく考えなければならないことの一つ。で、こんなことを思いついたんですが。 蔵漢では○○という綴りで出ている。ラサ口語では△△という綴りで出ているという情報はあってもいいのではないか。 また、異綴りには何らかのパターンが存在するのではないか。これを解明できたらすばらしいのではないか。今こそ同音/異綴りリストを活用せよ!!以前は同音異義語という観点から整理していたが、今回は、異綴りのパターン化という観点から整理して眺め直してみよう。

◆1999.04.01

いよいよ第三期がスタート。花見もしたし。気分は盛り上がりますね。 さて、本日、本をたくさん購入しました。辞書学関係のもの。

◆1999.04.02

アイディア集の中の同義語と関連語というフォルダの中で、同義語と関連語の検討をおこなっている。同義語については、これを選び出し、可能な限り意味の差異を記述できるように、フォーマットを整える。どんなふうにしたらいいか、千葉さんに相談すること。同義語についてというファイルを参照。 第一音節の高頻度リストを使って、その語根で始まる見出し語を一覧し、その音節文字が多義なのか一義的に意味が決まるものなのかについて検討している。

◆1999.04.05.Mon.

昨日一昨日と家にいて、比較的のんびりと過ごした。土曜日は体調が急に悪くなり、半分は寝ていた。おかげで身体の調子は戻ってきた。おいしいものをたくさんつくって食べたのだ。休めという指令が出ていたのかもしれない。 さて、昨日いろいろと考えているうちに、ニューヨークの子供たちがつくった三カ国語の辞書「トリクショナリ」のことが気になりはじめ、子供たちのブレインストーミングのことを思い浮かべているうちに、関連語のネットワーキングを始めようと思い立った。要すればシソーラスですが。同義語チェックが一通り済んだところだし、関連語のチェックも一通り見た。名詞に限りますけど。で、関連語のヘッドになりそうなものを一覧にして(全部で304項目あった)、これをカードサイズに印刷し、切り離し、テーブルの上で神経衰弱のようにカードを広げ、分類したのだ。似たものを分類して、ホチキスで留め、これをもとにネットワークをぐちゃぐちゃ書いているうちに、15枚くらいの大きいカードができた。このカードにさっきのホチキスで留めたカードの束をさらに大きいカードの上にホチキスで留めた。こういう仕事は楽しいな。遊んでいるみたいだ。で、今日は父上の作ってくれたキーワードリストを同じようにカードにしてみて、どんな感じになるかやってみたい。やはり上位を決めてしまってから下位の単語を集めたほうがいいような気がする。「トリクショナリ」つくった子供たちみたいにね。 関連語のネットワーキングといって意気込んだはいいけれど、ある程度やってみると、なかなか大変であることが分かった。

◆1999.04.06.Tue.

同義語の記録シートを作ってほしいと千葉さんに依頼。いろいろ検討している。同義語にはいくつかのタイプがあるということについてはアイディア集フォルダの中の同義語についてを参照のこと。同義語の記録シートを作ってもらうためには、同義語の選定を終了させることが前提。 昨日考えたことだが、子供のリストラの件で、 同根語と同義語の両方について言えることだと思うが、 子供がほとんど重なっていたり、一方にあって一方にないという状態になっていたり、

◆1999.04.07.Wed.

新しいデータベースが完成に近づいている。今週中にはできあがるとのこと。 データベース完成後の千葉さんの仕事は、完了形・命令形の整理、敬語形・普通形・謙譲語形の整理、同義語の記録シート作成、以上である。これらが完成した後のことを考えておかなければ。 辞書学の本、三冊借りてきた。 同義語のことだが、今「同義語のみ/名詞」ファイルの中に整理してはいるが、同義語は他にも可能性があるということを忘れないように。訳の真ん中あたりにある部分が同義語のヘッドとなる可能性もあるのだから。

◆1999.04.08.Thu.

昨日言われたこと。 CAIの人とお金を使えというお達し。何ができるか検討しておくこと。 民話のテキストをWeb検索できるようにしろとこれは町田さんにいわれた。 今年の課題である。そのためには、民話のテキストの校正を早いところ終わらせておかなければならない。誰かに頼もうか? 新しいデータベースがほぼ完成した。ちょっと大変そうだ。不安。でもどんどんやるしかないね。がんばろう。関連語のことを考えるといらいらするのはなぜ?しばらくほうっておくのがいいかもしれない。とにかく、動詞を中心にがんがんやっていこう。 新しい仕事を考え出さなければ。 現在、『辞書学のすべて』(シドニー・ランドウ著)を読んでいる。トム・マッカーサーのよりは五年ほど古い本だが、とてもおもしろい。この人はアメリカ人だ。この人によれば、アメリカの辞書は1970年代以降に、イギリスの学習者用辞書にすっかり追い抜かれてしまったのだそうだ。トム・マッカーサーの本に比べて、辞書作りの内幕のいろいろを告白しているという性格が強く、とても参考になる。

◆1999.04.09.Fri.◆

いよいよ新しいデータベースを使って入力が始まった。見出し語数を日数で割ると、一日当たり100個近くの見出し語を片付けていかなければならないことになる。昨日も言ったように、まずは一番大変だけれどもおもしろい動詞から片付けていくことにしよう。動詞の執筆においては、意味の分類を第一にやることとし、動詞関連の修飾語は後回しにすることにした。

◆1999.04.26.Mon.

久しぶりです。イギリスから帰ってまいりました。 今日は澤田さんと一緒に坂本先生の講義を受けた。メインフレームの歴史についてのインタビューもした。今日教わったのは、単語切りのやり方である。今日習ったことは記録しておかないといけない。メインフレーム物語を書き残そう、と考えた。坂本先生へのインタビューを続け、記録に残そう。 イギリスでは、ノートパソコンが使えなかった。液晶の画面がおかしくなって、半分以上見えなくなっていたのである。

◆1999.06.08.Tue.

何ヶ月もご無沙汰しております。日誌は実は、3月、4月の間はオフラインで書いて いたのです。実験的試みと秘密事項が多かったものですから。でも5月はさぼって しまいました。反省。さぼったのは日誌で、仕事は進んでいます。するべき作業が明確に なってくるにつれ

 
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