チベット語 Tabo 写本および Gondhla 写本の調査・研究
ウィーン大学に所蔵されている,西チベット Tabo および Gondhla 将来の写本 Kanjur の調査を行った.Tabo 写本(以下,略号 A)は断片であるのに対し,Gondhla 写本(以下,略号 Go)は完全な状態で残っている.内容を分析した結果,どちらも Mahaavyutpatti に基づく改訂を受けているものと判断される.それにも関わらず,例えば
- bstan pa → bstand pa (da drag po の保持)
- mi → myi (ya btags の保持)
などといった,古い書法を保存している点が特徴的である.
写本の成立年代や系統についての調査はこれからの課題だが,地理的に見てA, Go ともに Stog Palace 写本(以下,略号 S)や Tokyo 写本(以下,略号 T)との親近性は予想されてよい.ただし A, Go ともに,S や T などの「西の系統」ではなく,北京版などの「東の系統」と一致する読みも多く確認されるため,A と Go との関係も含め,継続的な精査が必要である.