(2) 長期目標
・掲載する文献をさらに増やす。フランス国立図書館所蔵の敦煌出土チベット語文献。
・辞典編纂への応用
プロジェクト責任者 | 星 泉 | 東京外国語大学AA研助手 |
研究協力者 | 今枝由郎 | CNRS主任研究員 |
武内紹人 | 神戸市外国語大学教授 | |
大原良通 | 関西大学非常勤講師 | |
石川巌 | 東方研究会講師 |
パリのコレクションを整理し、目録を編纂したラルー女史は、その作業の間に出くわした難解な語彙を収集した。時としては、解釈の試みがしてあるものもあるが、大半は意味不明であり、前後の文脈の中に該当する語彙が位置付けてあるだけである。しかし、これは非常に貴重な材料であり、影印版の補編として出版することが検討された。しかし諸般の事情により、この計画は断念された。
これに代わって企画されたのが、コンピュータ処理による敦煌文書の音節索引である。その第一巻として主に歴史関係の文書11点(約三万音節)を選んで、そのクリティカル・テキストを作り、全音節を前後数音節とともに検索できるようにした。これはChoix de Documents Tibétains,tome III Corpus syllabique,Bibliothèque nationale,Paris,1990として出版された。
第二巻は、主に非仏教の宗教関係の文書13点(約 音節)を同様に処理した。これはChoix de Documents Tibétains,tome IV Corpus syllabique,Institute for the Languages and Cultures of Asia and Africa, Tokyo University of Foreign Studies,Tokyo,2001として出版された。
今後の計画は、順次新たな文書を加えていくと共に、今までの全文書を累積して全体で一つのデータベースの形でインターネット上に公開することである。これが実現すれば、最も古いチベット語の文献である敦煌文書に対する音節索引となり、チベット研究にとって非常に有意義な研究工具となることであろう。
影印本の出版に関わった今枝由郎氏と、武内紹人氏との間で、Choix de Documents Tibétainsを電子化し、校訂の上、KWIC索引とともに出版するという構想が持ち上がった。
一方、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)では、1978年に大型電子計算機を導入して以来、チベット語データを含む、アジア・アフリカの様々な言語データの集積と分析をおこなってきた。
AA研では大型電子計算機を用いたチベット文字処理の実績があったことから、今枝由郎からAA研に対し、データの入力およびKWIC索引、ソーティングシステムの開発が依頼された。AA研では、AA研の独自コードにしたがって大型電子計算機にデータ入力がおこなわれ、さらに全音節のKWIC索引の構築とチベット語のソーティングシステムためのプログラミング開発が進められた。開発にあたっては情報システム係の今井健二氏と教務補佐の高橋まり代氏に一方ならないご尽力をいただいた。
1990年、AA研で電子化された校訂テキストおよびKWIC索引が、フランス国立図書館から出版された。
1998年には、フランス国立図書館所蔵のチベット語文献のうち、非仏教の宗教文献13点を選び、校訂の上、KWIC索引とともに出版することになった。2001年9月、フランス国立図書館から許可を得て、Choix de Documents Tibétains TomeIVとしてAA研から出版された。
2001年3月の大型電子計算機の廃止にともない、全てのチベット文字データをASCIIデータにコード変換し、パソコンで扱えるようにした。現在は変換したデータの校正中であるが、試験的にChoix de Documents Tibétains TomeIVのデータについてのみ、本ホームページ上に公開している。今後はこれをホームページ上で検索可能な形で提供することを目指している。