ベトナムでドイモイ(刷新)が提起されたのは1986年12月に開催されたベトナム共産党第6回党大会においてであった。それ以来二十数年の間に,以下の写真が示すように,ハノイは色のない,モノトナスな街からカラフルな街へと変貌をとげた。高層ビル群が出現し,人々の交通手段も多様化した。その反面,ハノイの空気は著しく悪化した。私がハノイに留学していた時代(1985年~87年)には,夜になれば満天の星空を眺めることができ,天の川もはっきりと見ることができた。
もうひとつ,以下の写真からわかることは,ドイモイが提起されてから2年を経過した1988年10月の時点においても,色のない光景と人々の主要な交通手段としての自転車の活躍が依然として継続していることである。街がカラフルになり始め,交通手段の多様化が進むのは,市場経済化が本格的に進む1990年代に入ってからのことであると考えられる。
![]() 1986年2月:新築されたキオスク。当時にしてはモダンな建物だった。 |
![]() 2007年3月:21年を経て木が生長し,往事の面影はない。商店になっている。 |
![]() 2007年3月:よく見ると,看板の向こうに往時の屋根があることがわかる。 |
![]() 1988年10月:国営百貨店。ここで1985年12月にショーウィンドーの中にあった電球を買おうとしたところ,「それは陳列品だから売れない」と言われた。在庫品もなかった。 |
![]() 2007年9月:国営百貨店は取り壊され,高級デパート,チャンティエン・プラザへと生まれ変わったが,国営百貨店を思い起こさせるデザインである。 |
![]() 1988年10月:国家銀行本館。正面エントランスの上にホー・チ・ミンの巨大な肖像画が置かれていた。 |
2009年8月:ホーチミンの肖像画は1992年5月~8月の間に撤去された。理由は肖像画が重く,建物に負担を与えるためと当時きいた。肖像画はどこに行ってしまったのだろう。 |