番外編:ほろよいのマルタ編



 そもそも、マルタを「番外編」としたのは妥当だったのだろうか。アフリカ大陸ではないにしても、アフリカ大陸からずいぶん近いし、言語はアラビア語の方言(ただし、某英文ガイドブックには「アラビア語の大きな影響を受けたセム語の一種」とあった。ちょいと不正確な記述だと思う。)だし。
 ともあれ、マルタのワインはおいしかった。



Eddie's Cafe Regina にて

 マルタ7000年の歴史だかを音と映像で見せていただけると言う企画があり、さらにその入場券をEddie's Cafe Regina に持っていくと、マルタ・ワインのハーフボトルを無料サービスという、素晴らしい話だった。早速、地図を見て広場に急ぐ。マルタの首都ヴァレッタの通りは、京都のようにまっすぐで方向音痴の私にもわかりやすい。おめあてのカフェはすぐに見つかった。

 入場券をウェイターさんに見せて、白ワインがいい というと、ほいほいと引っ込んでしまった。辛口か甘口かも聞いてくれない。何だこりゃ といぶかる私。すぐにウェイターさんが大きなワイングラスを持って現れ「これを飲み終わったら、もう一杯持ってきて上げます」と言う。この大グラス2杯  でハーフボトル一本分ということらしい。 しかし、ワインの銘柄の説明も何もなしであった。何だこりゃ。ま、おいしいワインだし、いいか。

 翌日、今度はその入場券無しなので、お代を払って飲むことになる。メニューを見て、白の甘口 Sweet Reserve というのを注文する。町をほっつき歩いたあとだったので、ちょっと手が汚れているような感じで気持ち悪かった。そこで、手を洗いに洗面所に立った。席に戻ると、白ワインのボトルとグラス  とがテーブルにのっていた。私は、そのグラスにワインをなみなみと注いで、  最初の一口を舌に乗せた。。。と、ぴりっと来たんだな。ん?これは甘口じゃない!

 ボトルのラベルで名前を見ようとしたが、ぼろぼろで判読できない。しかしそれでも、どうしたってスウィート・リザーブには読めなかった。 何だこりゃ。 しかめ面でメニューとラベルとを見比べている私に、ウェイターさんが近づいてきた。

「私、これを頼んだんですけど」
「同じ」 とウェイターさんは断言する。

「これ、スウィート・リザーブですか」
「同じ」
「これ、甘口ですか」
「同じ」
「このワインは何ですか」

ついにウェイターさんはメニューの中から中辛の白ワインを指した。

「私、甘口のスウィート・リザーブを頼んだんです」
「同じ」
「でも、これは甘口じゃないです。私、甘口が良い」

 強硬に甘口を要求する私に、ウェイターさんは
「しかし、それは very sweet だぞ」
と警告する。
「いいです。スウィート・リザーブください」

すると、ウェイターさんは、私が一口飲んだだけのグラスと、半分ちょっと中身の残ったボトルとを、あっさり下げてくれて、改めて新品のスウィート・リザーブを持ってきてくれた。

 私は、昨日感じた疑問が今解けたように思った。

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