中川裕(1995)『アイヌ語をフィールドワークする』大修館書店


 pp.199-205に「書き言葉としてのアイヌ語」という章があり、大変面白い。「これからアイヌ語を学ぶ人でなく、現在アイヌ語をしゃべれる人たちが使える文字、つまりカナで書き表すことの重要性」「表記法などきちんと決めなくたって、アイヌ語さえわかっていればどんな書き方であっても理解できるのだ」という指摘は極めて重要。著者は仮名書きの葉書を貰って感銘を受けた事をきっかけにこのような考えに至ったようであるが、何を目的として文字を使うのか、を考える必要性や、言語学者と言えども不正確な表記に対して時として寛容・柔軟な態度が求められる事なども分かる。


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