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 A-3: Oepatjara Hoo-Soe dan Song-Soe (Pernikahan dan Kamatian) Menoeroet pikiran dari saorang Khong Kauw


 著者:  L.T.Y. Buitenzorg 
 出版:  Tjitjoeroeg: Drukkerij “Moestika” (1939年)
 言語:  ムラユ語
 備考:  孔教(儒教)的観点から相応しい、華人の結婚式(好事)・葬式(喪事)の儀礼の手引書。 
原資料からのスキャン・データ。
表紙カラー、本文モノクロ、全78ページ(表紙含む)、アルファベットOCR処理済み。
資料提供: Harianto Sanusi氏


  No.   ファイル   サイズ   内容 
 1  data (part 1)   36.6 MB   表紙、前言、目次、導入 
 2  data (part 2)  45.5 MB   結婚式の部
 3  data (part 3)  55.4 MB   葬式の部
 4  data (part 4)  28.8 MB   広告、裏表紙 

 


解説

■著者について
 「L.T.Y. Buitenzorg」とのみ記されており、詳細は不明。なお、郭徳懐(Kwee Tek Hoay: 1886-1951年)による前言(ただし、文末に「K.T.H.」と記されてあるのみ)では、著者はバイテンゾルフ(現ボゴール)の孔教會理事であると記されている。


■内容について
 K.T.H.を名乗る人物による前言では、現在中華民族(Bangsa Tionghoa)が、一方では時代の変化にそぐわない因習に囚われ、また一方では民族の風俗・習慣を捨て去って他の民族や宗教――主に西洋のもの――を模倣しているという認識を示す。中華會舘が設立されて以来、元々の華人の慣習からは外れずに、しかし時代にそぐうように結婚・葬式の儀礼に改良を加えようとの試みがなされてきたが、未だ満足のいくものではないとした上で、バイテンゾルフ孔教會理事のL.T.Y.がそれにひとつの指針を示そうとしている、と紹介する。
 次いでL.T.Y.なる人物による導入部では、現在結婚・葬式儀礼がそれぞれの地域や当事者により好きなように行なわれており、儀礼の内容やシンボルの意味について教えることができる人が少なくなっていると指摘されている。また、「西風」の影響で中華民族のナショナル・スピリット(National spirit)が失われゆくことを危惧し、言語・宗教・教育の3つの柱を次世代に受け継いでいくことの重要性を説いている。

 結婚の部では、まず式の手順が10条から成る条文によって示される。孔子(Nabi Khong Hoe Tjoe)の教えに則り、新郎新婦が結婚の意義(男女の責務)について理解することに重点が置かれ、儀式自体は時代に即した簡便なものとするべきであると提起されている。また、まずは「天(THIAN)」や祖先を祀る香炉に対し線香を掲げることが求められている点も注目される。
 条文に続き、結婚式の際に新郎新婦に聞かせるに相応しい演説文(pidato)の例が記されている。ここでも、孔子の教えに則って結婚の意義を理解することが重視されている。最後に、結婚式の際に歌う楽譜(『新婚燕爾』、『文明婚』)が掲載されている。
 なお、この結婚式の手順は、1935年12月4日にバイテンゾルフ中華會舘で行なわれたOey Tjin Ho夫妻の結婚式に際し、実際に大成至聖先師孔夫子の絵の前で執り行なわれたものを踏まえていることが記されている。

 葬式の部では、まず冒頭で、「我々民族」の次世代を担うべき若者の教育をこそ重視すべきであって、死者のための儀礼は礼にかなった適度なものに簡略化すべきである、との主張が展開される。次いで全14条から成る条文が続くが、第1条から第11条にかけては、臨終から埋葬後までの一連の儀式を行なうための手順が時系列に沿って示される。第12条から第14条は、葬家外の者に向けられた条文である。
 儀礼を簡略にすべきとする論拠は、たとえば死者は生者のようにものを食べないのだから供物(肉など)は必要ない、儀式に時間をかけ過ぎ日常の活動が妨げられたり体を壊したりする方が不孝である、通夜の場でおしゃべりに興じたり賭博を行なう慣習は民族の名を汚すからすべきではない、などといった具合に、かなりの部分がいわゆる世俗的合理性によって貫かれており、それを補強するために孔子の教えがしばしば引用されている。ここでの葬式儀礼は、死者(および葬家)に敬意を払うとともに、民族として受け継いできた(時代に相応しい)慣習を受け継ぎ実践する場として、限定的に捉えられているのが特徴である。
 条文に続いて、各場面で読み上げるための弔文の例が並ぶ。最後に、母から子へ、子から母へ向けた永訣の詩が2篇収録されている。


 



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