讀下:9-0483a+9-0462a=9-0482b+9-0462b

遷陵廷、辨・平、具獄するに期有り、期□盡矣。  匄匄

等符治。  貞

遷陵廷:簡5-01から零陽県の属吏と確認される「辨・平」について「遷陵廷の辨・平」という表現が不自然であり、「遷陵廷」の前に一部の文字が消えていると推測される。

期:期は期限の意味であるが、食料受給期限なのか、具獄という職務に関わる期限なのか、文脈情報が不足しているため俄かに判断し難い。職務に関わる期限であるならば、それについて辨・平が直接に零陽県に責任を負うことになるから、遷陵県内の連絡に使われたと推測される本文書にはそぐわない内容となる。一方、食料受給期限については、続食文書では一般に「食尽きる」という表現が用いられる。これに関しても、本簡には一部の墨蹟が消えたため甚だ不完全な簡文になったと考えられる。

「□盡矣」については、原釈文と校釈の釈読に従えば、それぞれ「期限盡きたり」と「期は盡きるに幾(ちか)し」と読み下すことになる。

正面の匄匄および背面の文字については校釈は習字とする。不思議なことに背面と続けて「匄(あた)よ。匄うに、符を等(ま)ちて治めよ。  貞(手す。)」と読めなくもない。ただし、「等」字について「まつ」字義の用例が確認できるのは唐代以降まで下がり、また、匄字を給付する意味で用いる用例も見当たらず、しかも二字重ねて書く場合は通常重文記号を用いることになる。さらに、貞についても、里耶秦簡における人名の用例は目下確認されていない。等字の前に削痕があることから、字が失われている可能性も考えられるから、無理に読み下すことは避けるべきであろう。

  

参考文献

・靑木俊介「里耶秦簡の「續食文書」について」(『明大アジア史論集』第18號、2014年)

・籾山明「簡牘文書學與法制史-以里耶秦簡爲例」(柳立言主編『史料與法史學』、中央研究院歴史語言研究所、2016年)