文書構造 |
讀み下し文 |
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文書本體 |
書出 |
【某年某月某日朔某日、遷陵某職某人、敢えて之れを言う。】 |
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本文 |
状況説明 |
【……】 |
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【……】奏[i]を爲(つく)り、以て之れを論ずる所の律令を傅(つ)けて[ii]、言え。簿の留まりし日を展(の)ばせ[iii]。 |
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●令【……】 |
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【……。】 |
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用件 |
【●今/之れを問うに】 |
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【……。】 |
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書止 |
【敢えて之れを言う。】 |
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附記 |
集配記録 |
【(某月)某日某時,某人(某處に)行る。】 |
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作成記録 |
【某手す。】 |
[i]奏、進言すること、轉じて、進言に際して上級機關に上呈される文字資料。『說文』夲部には、
奏,奏進也。
奏は、奏進する也。
といい、睡虎地秦簡『語書』簡13には、
其畫(最)多者,當居曹奏令、丞。
其の畫最も多き者、當居の曹、令・丞に奏せよ。
と、進言するという意味の動詞の用例が見える。8-0755-0756では、
(前略)洞庭守禮謂遷陵丞﹦(丞:丞)言徒隸不田,奏曰:司空厭等當坐,皆有它罪,耐爲司寇。有書﹦(書,書)壬手。(後略)
洞庭守の禮、遷陵丞に謂う。丞言わく、徒隸、田せず、と。奏に曰わく、司空の厭等、當に坐すべく、皆な它罪有り、耐して司寇と爲すべし。書有り、書は壬手す。
というように、遷陵丞の進言を「言」、文書全體を「書」と、添付の文字資料を「奏」と稱している。『奏讞書』には、
227 六年八月丙子朔壬辰,咸陽丞㝅禮敢言之。令曰:獄史能得微難獄,上。今獄史擧 得微
228 □難獄,爲奏廿二牒。擧 毋害,謙(廉)絜(潔)敦(慤)。守吏也,平端。謁以補卒史,勸它吏。敢言之。
六年八月丙子朔壬辰、咸陽丞の㝅禮、敢えて之れを言う。令に曰わく、獄史能く微難獄を得ば、上せ、と。今、獄史の擧 、微難獄を得れば、奏二十二牒を爲(つく)る。擧 毋害にして,廉潔敦慤なり。吏を守するや、平端なり。謁うらくは、以て卒史に補し、它吏を勸(はげ)ましめよ。敢えて之れを言う。
と、本簡と同樣に、添付資料の作成を「爲奏」と稱している。
[ii] 傅、初出。(簡8-0758「傅奏」の用例と睡虎地秦簡等から知られる傅籍にも留意すべし)
[iii]下記の注は間違っている。展は「のばす」、日数・期日を延ばす・延長する意味(嶽麓秦簡(肆)律例簡牘の用例を見れば一層はっきり「のばす」義が読み取れる。→書き直すべし(また、伊強〈里耶秦簡“展......日”的釋讀〉(《簡帛研究二〇一六(秋冬卷)》,2017年)を参照!)
展、よくみる、照合すること。『周禮』春官·肆師には、
大祭祀,展犧牲。
大祭祀、犧牲を展(み)る。
といい、鄭玄注では、
展,省閲也。
展、省閲する也。
と注釋する。鄭玄は、『周禮』夏官・祭僕の「凡祭祀致福者、展而受之」と『儀禮』聘禮の「史讀書展幣」に對し、「展」をそれぞれ「錄視」と「校錄」と説明するが、それも「記錄」ではなく、「省察」、つまり詳しく調べる意にほかならない。
「留日」のほか、「約(日)」を展(み)る場合がある。8-1563正には、
今徐以壬寅事,謁令倉貣(貸)食。移尉以展約日。
今、徐、壬寅を以て事うれば、謁うらくは、倉に令して食を貸さしめよ。尉に移して以て約日を展(み)しめよ。
と、8-0498+8-2037正には、
■吏貣(貸)當展約。
■吏の貸して當(まさ)に約を展るべき(もの)。
という。なお、『封診式』簡02-03に、
002 訊獄 凡訊獄,必先盡聽其言而書之,各展其辭,雖智(知)其詑,勿庸輒詰。其辭已盡書而
003 毋(無)解,乃以詰者詰之。
凡そ獄を訊(しら)ぶるに、必ず先に盡(ことごと)くその言を聽きてこれを書く。各々その辭を展るべし。その詑(あざむ)くを知ると雖も、輒ち詰(なじ)るなかれ。その辭已(や)み、盡く書きて解するなくんば、乃ち詰(つ)まる者を以てこれを詰れ。
という用例が見えるが、整理小組の「陳述」という解釋よりも、供述の矛盾や、他の證言・證據との整合性などについて照合すると理解した方が文意が通じるように思われる。