讀下:8-1563a

文書構造

讀み下し文

添付書類(上行文書)

書出

二十八年(219)七月戊戌朔癸卯(06)、尉守の竊、敢えて之れを言う。

本文

状況説明

洞庭尉、巫の貸(か)るるに居する[i]の公卒[ii]、安成の徐を遣わして遷陵に署せしむ。

用件

徐、壬寅(05)を以て事(つか)うれば[iii]、謁うらくは、倉に令して食を貸(か)し[iv]、尉に移して以て約日[v]を展(の)べしめよ。

書止

敢えて之れを言う。

附記

送達記錄

癸卯(06)朐忍(しゅんじゅん)宜利の錡(ぎ)[vi]、以て來る。敞半(ひら)く。

作成記錄

齮(ぎ)手す。

文書本體

書出

七月癸卯(06)、遷陵守丞の膻之(たんし)、倉主告ぐ。

用件

律令を以て從事せよ。

附記

送達記錄

ちに徐に令して、自ら書を入れしむ[vii]

作成記錄

逐手

[i] 居貸、初出(居貲(貲の弁済のために居作すること)との類似性で語義を説明するが、出土資料に他の用例が検出できないほか、語義は「居責」と重なることから、居貲もしくは居責の誤字の可能性も指摘すべし。誤字の場合は、二行の「貸食」の影響を受けて誤ったのであろう。)

[ii] 「貸」字の下に二つの墨點が見えており、重文記號の可能性も排除できない。その場合には、釋文は「居貸公﹦(公公)卒」、讀み下し文は、「巫の公より貸(か)るるに居するの公卒」に改めなければならないが、本簡では、字閒に大きなばらつきがみられるほか、あちらこちらに簡文と無關係な墨跡が觀察される。從って、本簡が再利用簡牘に係り、「貸」字の下の點も削り殘りに過ぎない可能性が高い。

なお、公より貸(か)るとは、官府より金錢や種子などを借りる意に捉えることができる。『左傳』文公十四年には、

盡其家,貸於公、有司以繼之。

其の家を盡くせば、公・有司より貸(か)り、以て之れに繼ぐ。

といい、杜預は

家財盡,從公及國之有司富者貸。

家財盡くれば、公及び國の有司の富める者より貸(か)る。

と注釋する。『爲獄等狀四種』の「學爲僞書案」では、被告の學は、將軍馮毋擇の子の癸に假託して、胡陽縣から金錢などを借り受けて逃亡しようと企てたが、被告は供述の中では

226 (前略)卽獨撟(矯)自以爲五大夫馮毋擇子,以名爲僞私書,問矰,欲貣(貸)錢

227 胡陽少内。

卽ち獨り矯(いつわ)りて自ら以て五大夫の馮毋擇(ぶえき)が子と爲し、名を以て僞私書を爲(つく)り、矰に問うて、錢を胡陽少内より貸りんと欲せり。

と稱し、將軍馮毋擇の名義で僞造した胡陽縣長官宛の書信では、

216 (前略)臣老,癸與人出田,不齎錢、 (種)。𩕾(願)丞主叚(假)錢二萬貣(貸)、

217 食支卒歲。稼孰(熟)倍賞(償)。

臣老うれば、癸、人と與(とも)に出でて田す。錢・種を齎さず。願くは、丞主、錢二萬の貸(か)し・食の卒歲を支うるを假せ。稼熟せば、倍償せん。

という。

[iii] 事(つかえる)、初出。(注では「視事」の「視」字が脱落している可能性にも言及すべし!)

[iv] 貸食、初出。

[v] 約日、約は……(簡8-0144+8-0136注?参照)、日は服役日数、約日は、約定の服役日数もしくは期間。初出。

[vi] 『廣韻』には、「渠羈切(キ)」(支韻:「釜屬」)・「渠綺切(ギ)」(紙韻:「釜也」)・「魚倚切(ギ)」(紙韻:「三足釜也。一曰蘭錡兵蔵。又姓。武王文殷人六族,有錡氏。後漢有錡嵩」)の三つの字音があるが、段注に従って、「魚倚切」で読んだ。

[vii] 入書、初出(書を入れる、つまり文書を受信者に渡す意か。五一廣場東漢簡牘CWJ1③:314(『選釋』029)にも「入書」の用例あり。)

本文書は、機能的には、食糧配給切符と捉えることができる。縣尉の申請を受けて、その管轄に服する居貸卒の徐のために、倉に食糧の支給を命ずる内容となっているが、受給者の徐が自ら倉に持參することから、本書と引き換えに指示通りの食糧が受給者に交付されると推測される。なお、配給は無償ではなく、消費貸借の形で行なわれ、受給者は居作を通じてその對價を返還する。そのために、郡尉に、「約日を展ばす」ように、つまり食糧支給に應じた服役期閒の延長が申請される。